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導入事例(株式会社ベネッセコーポレーション様)


株式会社ベネッセコーポレーション様との座談会進研ゼミ専用タブレット開発への道のりと将来

小中学生あわせて約100万人が利用する進研ゼミ通信講座専用タブレット「チャレンジパッド」は、株式会社ベネッセコーポレーション(以下、ベネッセ)からのご依頼により、富士ソフトでは、タブレット上でデジタル教材が動作するための初回設定ソフトウエア、およびデジタル教材を表示させるための基本機能を有した基盤ソフトウエアを手掛けました。2014年に初代「チャレンジパッド」、2017年に2代目である「チャレンジパッド2」がリリースされましたが、ここまでの道のりは決して平たんではありませんでした。今回は両社のコアメンバーによる座談会を通して、これまでの仕事ぶりを振り返るとともに、よりよいタブレット開発に向けたお互いの課題や抱負など、本音でとことん語り合いました。

目次

初代チャレンジパッド構想~なぜ進研ゼミでは通信講座専用タブレットにしたのか

開発からリリースまでの道のり

プロジェクト成功のカギは、ビジネスパートナーとしての信頼関係

チャレンジパッド2に向けた新たな挑戦

よりよいタブレット開発に向けた次なる課題と展望

出席者ご紹介

■初代チャレンジパッド構想~なぜ進研ゼミでは通信講座専用タブレットにしたのか

富士ソフト石本「当初は2代目であるチャレンジパッド2の開発話を座談会のテーマにするつもりでしたが、チャレンジパッド開発の苦労があってのチャレンジパッド2ですから、まずはチャレンジパッドについて振り返るところから始めたいと思います。当初はハードウエアを市販のものにするか、専用端末にするか、悩まれていましたよね?」

ベネッセ佐藤氏「子どもがタブレットを使う際に最も気をつけなければならないのは、教材ダウンロード時にベネッセのサイトへアクセスする以外は、外部サイトへつながらない仕様にすることで、有害サイトからお子さまを守ることのできる安心安全な学習環境を実現する点に高いプライオリティがありましたよね。キャリア各社には有害サイトをブロックするフィルタリング機能がありますが、これを破るお子さまがいることが想定されるため、市販のタブレットではなく、オリジナル端末で制御することがベストという結論に至りました。」

ベネッセ橘氏「市販のタブレットは、それなりにIT機器を使える人が対象に設計されていると思うのですが、進研ゼミを受講するお子さまとその保護者は、IT機器の扱いに慣れていない方もいることが想定されます。そのため、お子さまが本能的に使えるような仕様にすることが必要で、それには専用端末であることが望ましいと考えました。」

富士ソフト八木「市販タブレットにするのか、オリジナル端末にするのかというベネッセ様社内での議論が、採用決定までの間に何度も行われたことは後日、お聞きしました。ベネッセ様としては、学習教材は会員様に一度ご購入いただいたら、小学校6年間はご利用いただくことを前提とする、いわば『ランドセル品質』を目指す必要があるとおっしゃっていましたよね。例えば電源ボタンや外部メディアの接続口を壊れにくくするといったことが挙げられました。当社はICT業界で『SIer』と呼ばれる立場ですから、これまでさまざまな組み込みハードウエアを多く手掛けてきた経験から、ハードウエアにおけるメリット・デメリットといったことをアドバイスさせていただきました。」

ベネッセ植田氏「私もこれまでソフトウエアの開発を手掛けてきていて、ハードウエアを作ったのは初めてでしたので、例えば電源コードをさしたまま垂直に立てた状態のテストや落下試験など非常に勉強になりましたよ。」

ベネッセ佐藤氏「進研ゼミのタブレット学習では単に視聴するだけでなく、『書く』という学習も教育プログラムの中にあったため、お子さまにとって使いやすいペンタブレット機能である抵抗膜式にしたいと考えました。当時は静電容量式が主流で、抵抗膜式のものはあまりなかったかと思います。」

ベネッセ橘氏「デジタル教材は動いたり、動画や音声で伝えたりと、バーチャルな体験を提供することが可能で、理科の実験といったものは動画で見る方が、理解は深まります。一方で、鉛筆を持って書くというトレーニングも、子供の発達段階には必要です。でも、漢字などの一覧で見た方がわかりやすいものは壁に貼り出せるポスターであるほうが使いやすいですし、紙とデジタル、それぞれの特性を生かした教材で、それらをうまく組み合わせる必要がありました。」

富士ソフト八木「当社としては、そういった複合的な学習プログラムをいかにしてタブレット上で実現するか、という点に重きをおいて取り組みました。まとめると、高セキュアであり、子どもとその保護者にとっての使いやすさやマシンの堅牢さ、そしてデジタル教材の品質を担保できる高スペックな学習端末をソフトウエアとして実現することがこのプロジェクトに課せられたというわけです。」

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■開発からリリースまでの道のり

ベネッセ植田氏「迅速な開発が必要な中でも、ファーストリリースは早い段階で終了させなければならず、仕様詰めから開発まで実質的には数カ月ほどという厳しい状況下でしたよね。複数の開発会社にまたがり機能を実現することが必要であったため、まるで『遠くにある針の穴に糸を通すような』というほど難易度の高い開発だったと思います。しかし、現場のメンバーはできないとは思っていなかった(笑)。」

もっとも高難度な開発である「スピーディーかつ高品質」を実現した秘策とは?

富士ソフト樋口「高難度な開発であったことはテック編にも記載しておりますが、もうひとつのハードルがありました。迅速に開発を進める中で、子どもが操作して何も問題ないという品質をいかにして担保するか、という点において、いろいろな事象が起こりましたね。開発の序盤でベネッセの会員様にご協力をお願いし、プロトタイプの動作検証をさせていただいたとき、実際にお子さまが操作をすると、タブレット上部にあるホームボタンを連打するといったケースがありました。こういったことも検証項目に加えていき、なんとかクリアしていきました。」

富士ソフト八木「ほかには、事前の調査でお子さまが夢中になって学習をした後に充電をせず、次に使ったとき、大事なところで電源が落ちてしまうといった事例もありましたね。大人であれば就寝中にフル充電しておこうという意識が働きますが、子どもには通用しないという実態にも直面しました。ですから、これまで経験してきた開発では考えてこなかったことを想定して品質担保に臨む必要があると、強く認識しましたね。」

ベネッセ植田氏「子どもの興味や好奇心は大人の想像を超えるものがあり、想定外のことがいろいろと起こりましたね。私がプロジェクトに参加する前、佐藤が先行して仕様設計をしていたのですが、膨大な仕様書を見て『なぜこんなに細かく決めるのか』と尋ねたところ、子ども向けにはここまで決め打ちしておかなければならないということでした。大人であればYes/No で決められることが、子どもには通用しないということです。」

富士ソフト樋口「想定外の行動にどう対応するかを考えて、会員様のモデルケースを立てました。例えば毎日使われるケース、久しぶりに使われたケース、タブレットを放置しっぱなしで電源が切れるケースなど、さまざまなケースを想定し、検証項目は何十万にもおよびましたよね。」

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■プロジェクト成功のカギは、ビジネスパートナーとしての信頼関係

富士ソフト石本「システム開発において当たり前のことではありますが、プロジェクトマネジメントを行う上で、お客様との円滑なコミュニケーションにはとても配慮しました。」

富士ソフト八木「その点で特に挙げておきたいのは、進行中の問題はお客様に包み隠さず、報告を行い、プロジェクトを見える化する施策を打ったことです。仕事は、クライアントの幸せのために行うのであり、ビジネスパートナーとして協業していくからには、小さなことでも意思疎通を図り、情報を共有していかなければならないと思います。このことは常に当社メンバーに意識させ、仕事に対する意識向上に努めました。」

ベネッセ佐藤氏「結果的に正しい対応だったとしても、知らないうちに変わっていると、一瞬戸惑ってしまいますよね。どんなに細かい点であっても情報共有をしていただけることで、安心して進められます。富士ソフト以外のベンダーも関わる中、情報の見える化とメンバーの意識付けを図っていただけたのは、プロジェクトを成功させるための重要なポイントであったと思います。」

富士ソフト八木「大手ベンダーから小規模のソフトハウスまで多数の会社がプロジェクトに関わっていましたから、どうやって結束力を高めていったか、というのも振り返っておきたいですよね。お互いの作業領域があるため、時に会社間で壁を作ってしまう傾向がありました。しかし、それぞれの作業はすべてつながっているのだから、本プロジェクトに参画している者同士は『運命共同体』であり、協業して取り組まなければならないと。互いに非は非として認め、真摯に対応していくよう呼びかけました。」

ベネッセ植田氏「これだけの会社が関わっていると、全員が集まることがまずないので、富士ソフトのオフィスをお借りして関係者を集結させて、同じように指示を出したこともありましたね。」

富士ソフト石本「ベネッセ様の外注先に北海道の会社があり、コミュニケーションを密にするため、私は行ったり来たりしました。同じように植田さんは工場がある地域と東京をよく往復されていましたよね。スピード感のある開発だからこそコミュニケーションをとることが大事で、一致団結して進められたことはとても有意義だったと思います。」

ベネッセ佐藤氏「一丸となって取り組む中、本リリースの直前である3月まで、この場で話しきれないくらい紆余曲折がありましたが、チャレンジパッドはこうして無事にリリースされましたね。」

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■チャレンジパッド2に向けた新たな挑戦

ベネッセ植田氏「チャレンジパッドの開発から2年後にチャレンジパッド2の開発がスタートすることとなりましたが、私はチャレンジパッドリリース後にはこのプロジェクトを抜けて別案件に携わっていたにもかかわらず、チャレンジパッド2では急きょ、参画が決まりました。開発はこちらもスピーディーなものとなりましたね。」

富士ソフト八木「当社でもプロジェクトを解散し、当時のメンバーはこの時の経験を生かして、他の案件に従事していました。そんな折に、チャレンジパッドの開発メンバーを含む特別チームを編成してくれないかという急ぎのお電話をいただき悩ましい限りでしたが。さて、当社では散り散りになったメンバーをどうやって集めるか?という難題が浮上しましたが、石本と私でプロジェクトの正式スタートまでの期間で、初代+新メンバーによるチームを編成するに至りました。社内調整をかけずり回って行い、実現することができましたね。」

ベネッセ橘氏「チャレンジパッドは小学生向けのみでしたが、チャレンジパッド2からは、中学生向けの講座にも適用させることになりました。中学生講座の学習内容は当然のこと、小学生より難易度が高いため、教材の仕様も複雑になります。果たしてリリースに間に合うのかどうか、社内で議論となりましたが、結果として開発スタートとなりました。」

ベネッセ植田氏「開発スタートとなったからには、前回の経験を踏まえ、どうしたらチャレンジパッド2はよりよいものにできるかというのが、私の中のミッションでした。チャレンジパッドはアプリケーションソフトによる教材でしたが、チャレンジパッド2では、小学生向けはアプリのままで、中学生向けはブラウザを介して学習する仕様となり、リリースまでの期間を考えると、さらに難易度が高くなったと感じました。」

富士ソフト八木「ブラウザを介して学習を行うとすると、インターネット速度の点からアプリよりも表現力の点で劣ってしまう恐れがあります。さらに、中学生になれば、ITリテラシーが高い生徒がいることも予想されます。この点で中学生向けは、より高度な学習環境を作ることが求められていると認識しましたよ。」

富士ソフト石本「つまり、小学生向けと中学生向けの違いから、各々のアーキテクチャを別に定義する必要が出てきたというわけですね。中学生向けはブラウザ上で学習する仕様ですが、あたかもアプリケーションで動いているかのような操作性を専用タブレットで実現するのがチャレンジパッド2の条件でした。小学生向けはチャレンジパッドの指針とほぼ同様でしたが、小学生向けの開発に加え、新たにアーキテクチャの異なる中学生向け開発といった高難度の開発を迅速に実現しなければならないという条件のもと、果たしてお客様にご満足いただけるものを提供できるのか?という声が社内で挙がったため、八木とともに社内の説得にあたりました。」

富士ソフト樋口「新たなご要望や条件が積みあがっていく中であっても、中学生向けについては開発期間の半ばごろの段階には、中学準備講座としての教材を新中学1年生(小学6年生)向けに配信するというスケジュールが組まれており、この時点で7割ほどの機能を積んでおかなければなりませんでしたね。作業ボリュームもさらに増していましたよ。」

ベネッセ植田氏「チャレンジパッドの開発以上に、チャレンジパッド2は難しいプロジェクトでしたが、前回と同様に一丸となった取り組みの結果、無事リリースを迎えることができましたね。」


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■よりよいタブレット開発に向けた次なる課題と展望

ベネッセ橘氏「リリース後の反応について、会員様からはご満足いただいているというレポートが上がってましたね。」

富士ソフト石本「プロジェクトに参画したメンバーからは、『親戚や知人に紹介できる』、『これはパパが作ったと子どもに言える』といった声が聞かれました。」

ベネッセ橘氏「きれいごとではなく、みんなが一丸となって取り組んだ結果がこのようになって表れたと思います。このプロジェクトメンバーは私にとっていわば『同志』という思いを持っていますよ。」

富士ソフト石本「会員様にご満足いただくことが、プロジェクトメンバーにとって何よりの喜びであり、同時に自信ややりがいとなって次のモチベーションへつながりますよね。さて、今後もチャレンジパッドは続いていきます。将来の開発に向けた意見交換を話しておきたいと思います。」

ベネッセ橘氏「チャレンジパッドは現在、小中学生合わせて100万人以上に利用されています。それだけに、すべての会員様にご満足いただくためには、どんどんよくしていかなければと思います。」

ベネッセ植田氏「そのためには、関係するベンダーを集いテクニカルなスキルを持って議論をしながら具現化していく、というやり方ができれば、もっとバリューが上がっていくと思います。これまでは積み重ねの結果が商品となってきましたが、これからは頭を使ってスマートに、アイデアや工夫が集結して形になるようなものづくりを目指していきたいですね。」

富士ソフト樋口「今までと同じやり方で続けていくのでは成長がないというのは、現場もよくわかっています。新しく参画する技術者にはこれまでやってきたレベルまで育成するのはもちろんのこと、既存メンバーは今のやり方を見直し、改善していく必要があると考えています。」

ベネッセ佐藤氏「そういう意味では、両社の密なコミュニケーションが大事ですよね。スピード感を持って高品質なものを作っていくことに今後も協力をお願いしたい。時代の変化とともにさまざまなことが変わっていくと思いますが、だからこそ、今後も関係者一丸となって作り上げていきたいと思います。」

富士ソフト樋口「チャレンジパッドの開発を通じて、当社はとても成長させていただけたと思います。現場メンバーもこのプロジェクトは楽しいと申しております。システム開発のプロとして、今後はベネッセ様がやりたいことをICTの可能性から提案させていただけるようになっていきたいです。そうすることが、成長させていただいた恩返しであると思います。」

ベネッセ植田氏「ICTテクノロジーはものすごいスピードで進化していきますが、メタな技術やスキルを身につけていれば、生産性を上げることを知的に考えられるし、より高度な開発ができるようになると思います。そうすれば、仕事は楽しくなるはずです。」

ベネッセ橘氏「楽しくないとよいものは作れないと思います。時に正しくないことをしてしまったり、衝突することがあったりしても、健全に解決できれば楽しいはず。そうすれば、お客様に喜ばれるサービスができていくと信じています。」

富士ソフト八木「昨今の世情からして共働き世帯が増える傾向にあり、保護者が子どもの勉強を見てあげられる時間が減っていく中、学ぶことに対して気軽に、かつ興味を持つきっかけとなるのがタブレット教材ではないかと思います。だからこそ、子どもが学習している途中で止まってしまったり、思い通りにならない状態に陥ったりすると、子どもの集中力や興味がそがれてしまいます。このようにならないよう、安定稼働を担保するとともに、学びたいと思ったとき、いつ、どこでも使用できる仕組みにしていくことがミッションだと考えています。」

富士ソフト石本「今後も当社のミッションとして、お客様のビジネスを成功につなげる仕事に取り組んでいきます。このプロジェクトはゴールが決まっておらず、常に変化する状況の中でお客様のご期待に応えられるよう、向上をしていかなければなりません。今後はいい意味で期待を裏切るような提案をさせていただけるよう、スキルを高めていきたいと思います。」


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出席者ご紹介

株式会社ベネッセコーポレーション
デジタル開発部 アーキテクトユニット 副部長
植田省司様

株式会社ベネッセコーポレーション
中学生商品部 ハイブリット全体戦略・開発支援課 課長
佐藤純司様

株式会社ベネッセコーポレーション
小学生高学年商品部 教具・デジタル開発課 グループリーダー
橘恵理様

富士ソフト株式会社
イノベーション推進部 部長
八木聡之

富士ソフト株式会社
ソリューション事業本部 インフォメーションビジネス事業部
BCプロジェクト プロジェクトマネージャー 石本展啓

富士ソフト株式会社
ソリューション事業本部 インフォメーションビジネス事業部
BCプロジェクト 課長 樋口聡彦

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