経費管理コラム 第13回
改正旅費法は「紙文化」から抜け出す絶好の機会?
旅費・予算執行業務のデジタル化で自治体DXを加速

2025年4月に国家公務員の旅費規定に関する「旅費法」が改正されます。主な改正点は、現行の「定額支給」から「実費支給」への変更です。この改正によって職員の自己負担を防ぐことができる一方で、出張者や経理担当者の新たな負担になる可能性も指摘されています。この課題を解決するには、旅費・予算執行業務をデジタル化する必要があります。また、デジタル化をきっかけに自治体DXを加速させることも可能になります。本コラムでは、改正によって具体的にどのような課題が生じるのか、そして旅費・予算執行業務のデジタル化によってどのようなメリットが得られるのかを解説します。

改正旅費法をきっかけに
「紙文化」から脱却すべき理由

国家公務員の出張旅費に関する基準を定めた改正旅費法が2025年4月に施行されます。この法改正の背景には、物価の高騰や為替相場の円安進行に伴い、出張時の宿泊費が規定額を超えるケースが多発していたことが挙げられます。これまでも出張する職員が不足分を立て替えて後から請求することもできましたが、申請の複雑さゆえに、手続きを行わず自腹を切ることもありました。

今回の改正で「定額支給」から「実費支給」へと変更され、上限額が設けられることで差額の発生自体を防ぐことができます。また、旅行代理店などへの直接支払いができるようになり、職員の一時的な立て替えを防ぐことも可能です。

ただし、変更によって新たな課題が生じることも懸念されます。これまでの旅費精算の方式から変わることで、出張者自身による書類作成や、経理担当者の確認作業、システムへの入力といった負担が増える可能性が高くなります。

そもそも多くの自治体では、“紙”を使った旅費精算が行われています。今後も紙ベースに申請・承認・決済などの各業務を続けるのは、現場の負担が大きくなるばかりです。すでに多くの民間企業は旅費精算だけでなく、予算執行業務にもシステムを導入し、業務負担を減らすことに成功しています。これに続き、自治体でもDX推進が求められていることから、法改正をきっかけに旅費・予算執行業務をデジタル化し、紙文化からの脱却を目指すべきと言えます。

旅費・予算執行業務をシステムで自動化

旅費・予算執行業務をシステム化するメリットは、主に「業務負担の軽減」「ミスの防止」「見える化(透明性の強化)」の3つです。出張の計画から申請、予約、旅費精算までシステム上でまとめて処理できるためです。

システムを導入した場合、出張が決まったら専用ポータルサイトで航空券やホテルなどの予約することになりますが、ポータルサイトを介すことで支払いデータがシステムに自動連携され、正しく精算できます。サービスによっては予約時に「出張規定」を自動照合し、規定を満たしたプランのみを表示できるため、出張者自身で探す手間がなく、最適なプランを選べます。管理者もすぐに承認することが可能です。

出張先での路上電車やバス、タクシーなどを使った細かな移動にも対応できます。サービスによっては法人カードや交通系IC、QRコード決済といったサービスと連携することが可能です。特に交通系ICに関しては、日付や金額などのデータは改ざんできないよう連携され、通常20件を上限とする使用履歴がサーバー上に保存されるサービスもあるため、実費に基づいて正確に精算できます。

また、スマートフォンで領収書を撮影するだけで、領収書の日付や金額、会社名、地域、通貨などのデータをシステムに自動入力できます。入力する手間が省け、打ち間違いも防げるでしょう。

旅費をはじめ、消耗品や備品購入、毎月の定型的な科目など、身近な予算執行業務からデジタル化の範囲を広げていくことで、現場にも馴染みやすくなります。もちろん、業務負担やヒューマンエラーを減らし、正確で透明性の高い経費処理となって、組織全体のガバナンス強化にもつながります。

職員間で「デジタル化の効果は高い」との認識が広まれば、組織全体の意識改革が図られ、さらに効率のよい、透明性の高い行政運営を推進できるでしょう。

旅費・予算執行業務のシステム化で得られるメリット

自治体DXはソフトウェアを借りる
「SaaS」から進めよう

ここまで旅費・予算執行業務におけるシステム化に触れてきましたが、前述したように「自治体DX」の観点からもシステム化は求められています。

総務省が2024年4月に公表した「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画【第3.0版】」では、自治体DXに取り組む意義として、デジタル技術を用いて住民の利便性を向上させることや、事務処理の効率化で生まれた余力から行政サービスの質を高めることが挙げられました。旅費・予算執行業務をシステム化して効率化することで生まれる余力を、行政サービスの質の向上につなげられるわけです。

また、自治体にとって財務会計の見える化(透明性)は住民からの理解を得るうえで欠かせません。しかし財務会計領域は、自治体の業務の中でもデジタル化が遅れているとされており、中でも予算執行業務は紙の依存度が高いようです。今回の改正旅費法は、紙中心のアナログ業務をデジタルに切り替える絶好のチャンスと言えるでしょう。

ただし、実務に即したシステムを一から自治体が作るのは、技術的なハードルが高く、時間やコストも膨大にかかります。システムは一度導入して終わりではなく、定期的なメンテナンスも必要です。外注先を探すとしても、IT人材が慢性的に不足しており、導入が先延ばしになる可能性があります。

そこで推奨されるのが、「SaaS(Software as a Service:サーズ)」を用いたシステム導入です。SaaSとは、簡単に言えば、完成したソフトウェアを借りるサービスで、ソフトウェアをインターネット経由で利用できます。また、自作システムと違いメンテナンスの必要もありません。

導入にあたっては、旅費・経費システムの導入実績を多く持つ富士ソフトにご相談ください。システム導入を判断するための実証実験も承っており、数多くの既存システムとの連携にも対応しています。

例えば富士ソフトでは、株式会社コンカーとともに宮城県で財務会計システム導入の実証実験を行いました。年間約19万5千件の予算執行業務を対象に「Concur Invoice」というSaaSを導入。これにより、年間約5万4千時間の業務時間、費用換算で約1,700万円の削減を見込んでいます。

このように、紙文化からの脱却を目指し、SaaS導入を加速させている自治体も増えています。2025年4月の改正旅費法をきっかけに、ぜひ旅費・予算執行業務のシステム化をご検討ください。

Concur Expense

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