株式会社 日経金融工学研究所(Amazon FSx for Windows利用・導入事例)
金融系の知識を活かしてオンプレからAWSへ
そのままの設定でシステム停止もなく移行し
25%以上のコスト削減を実現
導入前の課題
- データセンター利用に伴う多大な作業負担
- 利益向上に向けたTCOの削減
- 取扱データ量の増加に対応するシステム増強
導入後の期待
- クラウドに構築した新インフラ環境で従来通りの操作感を実現
- システム管理業務から解放して作業負担を軽減
- 柔軟な運用でTCOを削減して利益向上に貢献
- 事業成長に柔軟対応できるスケーラビリティの確保
データセンターの契約満了を機に、システム運用の負担とコストを再検討
株式会社 日経金融工学研究所
管理部 副部長 主任研究員
山﨑 雅弘氏
-貴社の特長についてお聞かせください
日本経済新聞社グループの一員として、グループのリソースに付加価値をつけてお客様に喜んでいただけるサービスの提供に取り組んでいます。
これまでの実績としては、信用リスク分野で全国の金融機関に多くのサービスを提供しており、各種金融リスクに関する評価結果や評価手法、評価モデルの提供などで高い評価を得ています。
さらに現在は、これまでに蓄積したスキルとノウハウを応用して、リターンに焦点を当てた新しいサービスの展開も進めています。
-今回の移行はどのような背景から検討されたのでしょうか
発端は2020年6月、データセンターを当社と共に契約してインフラ部分を共有していた関連会社が、AWSへの移行を決定したことです。このデータセンターには、当社の業務基幹システムをはじめ、製品開発用サーバや評価の計算・分析を行う計算基盤、資産管理サーバ、ADサーバ、ファイルサーバなど、当社システムとデータのほとんどを置いていました。事業運営の中核を担っている重要な施設だったことから、今後の方針を慎重に検討して導き出すため、管理部の副部長としてバックオフィス全般を管理していた山﨑がプロジェクトマネージャー、IT関連業務全般の担当者でITチームのリーダーを務めていた角田がプロジェクトリーダーを担い、プロジェクトが発足しました。
データセンターの次の更新タイミングは、2021年6月。それまでに新しい体制を整備し、運用することがプロジェクトのゴールでした。
グループ内での採用実績、安定性と対応力の高さを評価
-どのような視点から移行を検討されたのでしょうか
最初に検討したのは、いまのデータセンターを利用し続けるか、当社もクラウドへ移行するか、ということです。現状のままデータセンターが利用できれば、設定も使い勝手も何も変わらず、使い続けられる安心感がありました。
ただ、それは同時に、業務負担もこれまで通り、ということを意味します。データセンターで障害が発生すると、角田がトラブルシューティングのために出向かねばならず、その結果、予定していた業務が後回しに。物理サーバのリプレイス作業なども定期的に必要になるなど、データセンターの管理・運用は大きな負担になっていました。
また、可用性・スケーラビリティの問題もありました。おかげさまで事業が好調なため、データは加速度的に増加しており、状況に最適な環境を常時実現することに難しさ感じていました。
そして、最大の課題がコストです。これまで当社の関連会社と2社で負担していた額を当社1社で負担することは厳しいことから、クラウド移行がベストな選択だと考えました。
-AWSに決定した経緯をお聞かせください
移行候補として、国内外の複数クラウドサービスを比較・検討しました。そして最終的に残ったのが、AWSともう一つ。この両者は、それぞれに魅力と特長があり、優劣つけ難かったことから経営判断を仰ぎ、AWSへの移行が決定しました。決定に至った最大要因は、グループ内での利用実績が多かったことです。親会社である日本経済新聞の電子版「日経電子版」も、AWS環境で稼働しています。こうした大規模サービスをはじめ、グループ各社のビジネスを確実に支えている実績と安定性は、大きな魅力でした。
また、当社のビジネスはグループ間で頻繁にデータをやり取りするため、同じクラウドを使用している方がメリットを享受できると考えました。さらに、クラウドの新たな活用を検討するときも、AWSの方が相談や連携できる相手が多く、前に進みやすいと思ったのです。
移行してみて、もし満足できなかったら、その時点で再度移行を検討すればいい、との発想も支えとなり、AWSへ移行することになりました。
システム構成図
魅力だった対応実績とAWSジャパンとの密接な関係性
株式会社 日経金融工学研究所
管理部IT アーキテクト/セキュリティエンジニア
角田 和樹氏
-富士ソフトをパートナーに選ばれた理由を教えてください
一番の要因は、当社とデータセンターを共有していた関連会社のAWS移行をサポートした実績です。
今回の最重要項目は、2021年6月からの本番稼働を実現することです。残された時間は約半年という状況だったため、同じ環境からの移行を経験した富士ソフトなら要所をしっかりと押さえ、関連会社とシステムの内容や用途、ニーズが異なっても的確に素早く判断し、短期間で開発してもらえると考えました。
そしてもう一つ魅力だったのが、AWSジャパンとの密接な関係性を築いていたことです。この関係性を活かし,関連会社の移行に際してはAWSのソリューションアーキテクトがプロジェクトに参加し、一緒に課題を解決してもらえたとの話を聞いていました。
当社のプロジェクトでは、関連会社より大量のデータを短期間で移行させ、低コストで安定運用することが重要課題になります。短期間でより多くの課題を解決する必要があるため、プロジェクト発足時からAWSのソリューションアーキテクトも加わってもらえると聞いたことから契約を急ぎ、いち早くプロジェクトをスタートさせました。
-富士ソフトの提案に対する評価をお聞かせください
移行サービス『Cloud Endure Migration』を利用したAWSへのリフト移行提案は、関連会社でも実施していたことから想定していました。既存システムに大きな変更を加えずに移行でき、システム切り替えに伴う停止時間を最小限に抑えられるというメリットは、歓迎するものでした。クラウド環境に対しては、オンプレの環境をできるだけそのまま持っていきたい、ファイルサーバ名は変えたくないなど、数々の要望を伝えました。その要望をすべてEC2インスタンスで実現するとなると膨大なコストがかかってしまうため、AWSのソリューションアーキテクトから紹介されたのが、主要なファイル保存にAmazon FSx for Windowsを採用することでした。
そこで当社でも調べてみると、かなりの要望がクリアでき、コストも抑えられることがわかりました。これは後から知ったことですが、富士ソフトはAmazon FSx for Windowsへの対応実績が日本でトップクラスであり、深い部分まで理解していたことから、当社の要望を100%クリアできない点が気になっていたようです。でも、当社ではこれがベストのソリューションだと判断し、Amazon FSx for Windowsを採用したソリューションの実施を富士ソフトにお願いしました。
各種サービスの活用で膨大なデータ移行を予定通り達成。運用コストも25%以上削減
-移行はどのように進んだのでしょうか
当社の移行では、膨大なデータ量がネックになるのでは、と危惧していました。そこで社内データのうち、業務の推進に必要最小限のものをピックアップして2021年5月末までに移行を完了し、残りのデータは追っての実施を計画。社内の協力を仰いで準備を進めました。
並行して、業務に影響が出ないよう、システムを停止させずにデータを移行させる体制を整備。富士ソフトには、データ移行にかかる時間の見積もりを細かいレベルまで提示してもらったほか、課題になった点や疑問点を伝えて対応してもらい、本当に助かりました。
Cloud Endureは、システムを停止させずにデータを移行するのに、とても有効でした。ただ、移行を進めるなかで課題になったのが、回線です。このままでは間に合わず、スケジュール変更を覚悟したとき、富士ソフトが新たなソリューションを提示してくれました。回線の使用量を常に監視し、課題になるかもしれないと認識して対応策を用意していてくれたのです。
その一つが、移行専用のデータストレージデバイスを使用したサービスの『AWS Snowball Edge』です。オンプレのデータをSnowball Edgeに転送したら陸送でAWS拠点に届け、インポートを行います。
こうした取り組みにより、データ移行が完了。スケジュール通りに本番稼働が実現できました。
-移行後の効果についてお聞かせください
業務に影響するような障害はなく、満足のいくレベルでの安定運用が続いています。 Amazon FSx for Windowsは比較的大きな容量を使用していますが、とても低コストであり、そのことも大きな要因となって、ランニングコストはオンプレ時代と比較して25%以上減少しました。 大きな負担だったデータセンターでの作業は、まったくのゼロです。これにより、トラブルシュートなどに要していた時間を他の業務へ配分できるようになり、コア・コンピタンスの強化につながっていることから、金額以上の効果が出ていると考えています。 また、日経グループ内ではAWS環境を対象としたサービスが増加しており、そのサービスのスムーズな利用も可能となっています。こういった点も、AWS移行のメリットが確実に享受できていると感じています。新しいAWSサービスを採用し、最適なIT環境を構築
-今後に向けて、どのような取り組みを検討されていますか
まだ、移行が完了したばかりなので、具体的な次のステップを検討する段階には至ってはいません。ただ、AWSは新しいサービスが次々に誕生していますので、当社に有用なものを積極的に取り入れ、より最適なIT環境を構築していきたいと考えています。
例えば、コロナ禍でテレワークに取り組むことになったとき、一人ひとりは異なる環境にいながら、なるべく同じ環境で業務できるようにしたいと考え、AWSの仮想デスクトップサービスのAmazon WorkSpacesも含めて検討を実施しました。こうした基盤整備は、今後の重要な施策になると感じています。
-富士ソフトに対する評価・期待をお聞かせください
Amazon FSx for Windowsを採用した環境整備では、これまでの実績をベースに当社の要望を叶えてもらい、とても満足しています。また、金融ビジネスに対する深い知識とノウハウも感じました。例えば、Cloud Endure Migrationでデータ移行する際の秘匿性の確保。さらに、移行に際してインフラを停止させないことや、スケーラビリティの部分、監視の強度や時間感覚などの提案も有益でした。
スケジュール通りに移行が完了し、新しい環境で問題なく業務に取り組めていることには、本当に感謝しています。移行して間もなく、業務の都合で使用しなくなったサーバが発生したときには、インスタンスの停止でコストの抑制に貢献してもらい、ありがたく思いました。
引き続き当社では、新たな課題や要望が発生したら、富士ソフトへ積極的に相談したいと考えています。
一方、今回のプロジェクトを通じて、当社の業務と環境を隅々まで理解してもらったことから、富士ソフトには新サービスによるIT環境の最適化はもちろん、新サービスを活かした新規ビジネスの提案にも期待しています。
導入サービス
今回取材に応じてくださった方
- 株式会社 日経金融工学研究所
管理部 副部長 主任研究員
山﨑 雅弘 氏(左から2番目) - 管理部IT アーキテクト/セキュリティエンジニア
角田 和樹 氏(右から2番目)
- 富士ソフト株式会社
金融事業本部 金融システムインテグレーション部 第3SIグループ
課長 橋本 隆央(左から1番目) - 濱野 勝広(右から1番目)
株式会社 日経金融工学研究所
- 所在地:
東京都千代田区神田錦町3丁目22番地 テラススクエア 10階 - 代表者:
代表取締役社長 大城 直人 - 事業内容:
①企業・団体の財務・信用度等に関する各種数量分析およびコンサルティング業務
②前記事業に関する情報の提供、出版物の刊行及び調査研究の受託 - オフィシャルサイト:https://www.ftri.co.jp/