サッポロホールディングス株式会社様(AWS導入支援)
マーケティングの基盤となるシステムを
オンプレミスからAWSへ移行
導入前の課題
- 経営刷新のスピードにシステムが追随できない
- 最新のデジタル技術を導入するのに膨大な費用と時間を要する
導入後の期待
- 従来のシステムに比べてTCOが約40%削減できる見込みに
- グループを挙げてデジタル化を推進する協業体制を構築
インタビュー動画
事業ごとにサイロ化したシステムを全体最適化した基盤に作り替える
取締役常務 IT統括部長
兼 サッポロホールディングス株式会社
IT統括部長
石原 睦 氏
「事業単位で生産性を上げるためのシステムを導入してきた結果、既存のシステムが複雑な構成になっていました。新たなサービスを立ち上げる際にシステムを立ち上げるに長い時間を要するようになってきたのです」
同社は古くからITに対して積極的に投資してきました。裏を返せば、その時々で最適な技術を活用したレガシーシステムが事業単位で数多く稼働していることを意味します。例えば、顧客データはシステム単位で管理しているため、同じ顧客でも統合的に分析することはできません。運用方法もシステムごとにばらばらなので、標準化してコストを削減することが難しくなっていました。
こうした状況から脱却するために、この5~6年は最新のデジタル技術を駆使して、レガシーシステムの刷新に取り組んでいます。この取り組みは第三者からも高く評価されており、経済産業省の「攻めのIT経営銘柄2018」にも選定されています。
IT組織の改革にも着手しています。2014年には、グループ内の事業会社ごとにIT組織を設置していたIT組織をサッポログループマネジメント株式会社(グループコーポレート機能およびサッポログループ共通業務を担う関係会社)に集約しました。現在は、この組織をサッポロホールディングスに移管しています。石原氏は「事業ごとにサイロ化した部分最適のシステムを全体最適化した仕組みに作り替えることを目指しています」と語ります。オンプレミスからAWSへ移行した今回のプロジェクトも、この一環です。
移行の対象となったコーポレートサイトとコミュニケーションサイトのシステムは、2007年から稼働を開始しました。これまではシステムの基本機能には手を加えずに、ビジネス上の要請に合わせて改修を続けてきました。このため、システムが複雑化するとともに、新たな機能を追加するのにも長い時間を要するようになっていました。オンプレミスのプライベートクラウド環境で稼働していたのでOSのバージョンアップや数年単位でのリプレースも必要で、それらを解決するには 大がかりなプロジェクトを必要としていました。
これでは長期経営ビジョンで期待されているスピードを実現することは不可能です。さらに、最新の技術を導入するのも難しい上に、導入できたとしてもオンプレミス環境では膨大なコストがかかることも問題として浮上していました。こうした状況を改善するために、IT統括部ではシステムを全面刷新するプロジェクトを立ち上げることを決断しました。
短時間の移行に対応できる富士ソフトの技術力を評価
IT 統括部 デジタル推進グループ
兼 サッポロビール株式会社
マーケティング開発部 マネージャー
松岡 広子 氏
①経営のスピードを高めることに寄与すること
②最新の技術をいち早く低コストで導入できるようにすること
③ビジネスの変化に対して柔軟に追従できること――の3つです。
プロジェクトで新システムの用件を検討する中で数々の課題が浮上し、これらを解決するため にシステム基盤をオンプレミスからクラウドへ移行することを決断しました。必要なときに必要 なだけのリソースを従量課金で利用できることに加え、最新技術がクラウドサービスとして提供されているからです。「スピード」「技術」「柔軟性」という3つの観点で考えれば、現行のオンプレミス環境を選択する理由はありませんでした。IT統括部で今回のプロジェクトを統括した松岡広子氏は、「むしろ、クラウドに移行しないことがリスクになると考えました」と語ります。
クラウドサービスにはAWSを選定しました。松岡氏は、AWSを選んだ理由を次のように語ります。
「ビジネスを強化するために近い将来、ビッグデータの分析基盤や機械学習などの最新技術の導入を計画しています。選定当時では、こうした最新技術のクラウドサービスが最も豊富だったのがAWSです。基幹系のシステムの稼働実績が世界的に見て豊富だった点も、選定を後押ししました」
ただし、実際にクラウドへ移行するとなると不安材料もありました。この点を松岡氏は次のように説明します。
「クラウドにはオンプレミスとは異なるスキルやノウハウが必要になります。これらが社内に蓄積できていない点が懸念材料でした。独自に蓄積するには1~2年はかかると考えていました」
IT統括部では、こうした懸念材料を払拭するには、移行プロジェクトの支援を受けるパートナー選びが重要だと考えていました。既存システムは複雑化していたので、リニューアルに併せて回収を加えようとすると開発期間が長期にわたるとともに、コストが高額になるので何社から提案を受けました。同社が最終的に選定したのが富士ソフトです。
富士ソフトを選んだ一番の理由は、サッポロホールディングスが求める開発期間に応じてくれるのが他にはなかった ためです。サッポロホールディングスでは、顧客接点を担うシステムであるので需要が最盛となる夏前には移行を完了させたいと考えていました。逆算すると、移行期間はわずか6カ月しかありません。このタイトなスケジュールに応えられるとしたベンダーは富士ソフトしかなかったのです。もちろん、技術力や実績も評価しました。松岡氏は次のように評します。
「クラウド専業のベンチャー企業とは異なって業務知識やレガシーシステムの経験も豊富ですし、インフラやORACLE等データベースのミドルからアプリまでをワンストップで対応できる技術力を持った 富士ソフトさんをパートナーにできたことが、当社としての成果・財産だと思っています」
システム基盤の刷新でITが経営の推進役に
こうした 検討段階を経て、サッポロホールディングスと富士ソフト、そして大手広告代理店の3社の協業体制で2018年12月から移行プロジェクトがスタート。まずアプリケーション側の開発を進めるため開発環境を構築すると同時にアセスメントを実施し、環境移行ではAWS Server Migration Service活用。プライベートクラウドからAmazon RDS for Oracleへリプラットフォームすることで、過剰なリソースを削減しました。翌年4月にはコーポレートサイトのシステムが、6月にはコミュニケーションサイトのシステムがAWS上で稼働を開始しました。これまで遅れていたスマホへの対応や、SNSアカウントとのデータ連携も移行と同時にリリースすることができました。
オンプレミスからクラウドへ移行したことによって、TCO(総所有コスト)を大きく削減することが期待できます。システム基盤の運用保守が不要になることに加えて、過剰なシステムリソースを抱えないで済む ためです。
従来のシステムでは、顧客からのアクセスがピークになる時に備えた高性能のハードウェアを導入していました。これは、ピーク時以外には過剰なリソースを抱えていることを意味します。クラウドの場合は、必要な時に必要な分だけのリソースを用意して、その分の従量課金を負担すればよいので、コストを大きく削減できます。IT統括部の試算では、TCOを年間で約40%削減できると見込んでいます。
今回のプロジェクトでは、既存のアプリケーションにあまり手を加えないでクラウドへ移行しましたが、松岡氏は「今後はクラウドへ最適化したアプリケーションを開発していきたいと考えています」と語ります。機械学習やビッグデータ分析など、クラウドサービスとして提供されている最新技術を取り入れていく計画です。IT統括部を率いる石原氏は、今後の展望を次のように語ります。
「今回のプロジェクトで編成した協業体制によって、グループ全体のデジタルトランスフォーメーションを推進していきたいと考えています。ITが経営の足かせになるのでなく、近い将来には推進役を担うようになるはずです」
導入サービス
今回取材に応じてくださった方
- サッポログループマネジメント株式会社
取締役常務 IT統括部長
兼 サッポロホールディングス株式会社 IT統括部長
石原 睦 氏(一番左)
- サッポロホールディングス株式会社
IT 統括部 デジタル推進グループ
兼 サッポロビール株式会社 マーケティング開発部 マネージャー
松岡 広子 氏(左から二番目)
サッポロホールディングス株式会社
- 所在地:
東京都渋谷区恵比寿4-20-1 - 代表者:
代表取締役社長 尾賀 真城 - 資本金:
538億8700万円 - 従業員数:
7,797人(連結、2018年12月31日現在) - オフィシャルサイト:
https://www.sapporoholdings.jp/