i-PRO株式会社(IoTプラットフォーム on AWS導入支援)

スマートフォンやパソコンなどで
遠隔地にあるカメラ映像のリモート確認が可能に
セキュリティ映像サービスの用途拡大に貢献

システム構築時の課題

  • Peer to Peer(P2P)でカメラ映像がリモート確認できる新セキュリティ映像サービスを企画
  • 海外も含めたサービス展開に最適なクラウドサービスの採用
  • 短期間で効率よく、低コストでの開発
  • ウォーターフォールからアジャイルへの開発手法の変更

構築システムの効果

  • 充実したクラウドサービスと開発実績、蓄積ノウハウの利用で新サービスを早期に実現
  • グローバルなクラウドサービスの提供で海外展開も早期に進行
  • 新サービスの開発が企画後約10カ月で実現、他サービスと比較し3割程度のコスト低減
  • アジャイル型の採用により、開発効率が2.5倍へ大幅向上




お客様企業概要

センシング技術で安心・安全な社会にグローバルで貢献

i-PRO株式会社は、画像センシング事業をグローバルで展開している企業です。
パナソニックで約60年にわたって培ってきたセキュリティカメラやレコーダー、医療用映像機器などで使用される高度で高品質な映像技術と解析技術を引き継ぎ、2019年に設立。2022年4月に社名をi-PRO株式会社に変更しました。

設立後はオープンなメーカーとして、世界中のソリューションベンダーに高品質で使いやすいカメラ、レコーダー、ソフトウェアの提供を行うべく、活動しています。現在、監視カメラ・レコーダーを中心とするセキュリティプロダクト事業、医療用顕微鏡や硬性内視鏡向けカメラを中心とするメディカルビジョン事業、そして受注生産のカメラを展開するモジュールカメラ事業の3事業を展開しています。

また、設立を機に各事業の強化に向けた意思決定のスピードを加速。監視カメラ、レコーダー・デコーダーのほか、ローカルで記録した監視カメラの映像をクラウド経由で確認できるエッジ記録型クラウドカメラサービスなど、新製品・サービスを次々に開発・提供しています。

研究開発部門が入居する福岡事業所

研究開発部門が入居する福岡事業所

新サービス企画の背景

従来の壁を取り払い、P2Pでカメラ映像がリモート確認できるサービスを

i-PRO株式会社
レコーディングプロダクト
レコーディングプロダクトヘッド
ディレクター
川添 修司 氏

「新生 i-PROとして新たな歩みをスタートさせるにあたり、第一弾のサービスとして企画したのが、2022年6月に“i-PRO Remo.”として国内サービスをスタートさせたエッジ記録型クラウドカメラサービスです」と語るのは、今回のプロジェクトを統括した川添修司氏。同社のレコーディングプロダクト部門の部門責任者を務めています。

従来のセキュリティ映像システムは、セキュリティカメラを設置した拠点内でしか映像を確認できないことが一般的でした。それが社会のネットワーク化が進むとともに、コロナ禍で飲食・小売業のスーパーバイザーが店舗訪問を制限されるといった、システムを取り巻く環境が変化するなか、リモートアクセスのニーズが拡大してきました。

そこで同社は、セキュリティカメラとエッジストレージを、IoTデバイスとして再定義しています。
「従来の制約の壁を取り払い、P2P接続でコストを抑えながら、遠隔地でもカメラ映像をスマートフォンやパソコンで確認・操作できる新しいサービスを企画し、2020年12月に構想設計を開始しました」と、今回の新サービス誕生の経緯を説明するのは、同社のレコーディングプロダクト部門でレコーダー・ソフトウェア商品マネージャーを務める田山哲生氏。このプロジェクトでは、開発全般のマネジメントを担当しました。

新サービス実現に向けての取り組み

提供サービスの実績と3割程度のコスト低減効果からクラウドサービスを決定

i-PRO株式会社
レコーディングプロダクト
レコーダー・ソフトウェア
商品マネージャー
田山 哲生 氏

同社では、セキュリティカメラとレコーダーで構築するソリューションの実現に必要な知見とノウハウはあるものの、P2P接続をクラウド環境で実現するためには、スペシャリティを持つ企業の協力が必要と考えていました。
そこで、複数のクラウドサービス事業者にRFPへの対応を依頼。各社の提案内容を検討することはもとより、提供されているサービスの内容や実績、さらには海外展開を含めた将来ビジネス構想も視野に、最適なクラウドサービスの選定に取り組みました。

そして2021年3月、同社はアマゾン ウェブ サービス(AWS)の採用を決定しました。
高く評価したポイントは、Amazon Kinesis Video Streams with WebRTCの実績です。同社が強力に追求していたP2P接続を行う上で、Amazon Kinesis Video Streamsは標準に準拠した WebRTC 実装をフルマネージドサービスで提供。セキュリティカメラやエッジストレージの映像をモバイルデバイスやWebブラウザへライブ配信するなど、インタラクティブな環境が簡単に構築できるのです。

「既存サービスがそのまま利用できることは、開発期間が短縮できることから、大きな魅力でした」と、田山氏。加えて川添氏は、「コスト効率の面で、最終候補となったもう1社と比較して3割程度の費用を節約できたことも大きな要因となり、AWSの採用を決定しました」と、コスト面の優位性にも言及します。

クラウド、IoT、P2P、運用保守、コストを要件にパートナーを選定

同社ではサービス構築のパートナー選定を、クラウドサービス事業者の検討とほぼ同時期からスタートしていました。要件として重視していたのは、クラウドを使用したWebサービスの構築とIoT、P2Pの開発実績、さらには構築したシステムの運用保守、そしてトータルのコストでした。
「最終候補に残っていたクラウドサービス事業者をはじめ、パナソニックの関連事業部などにもヒアリングを行い、候補にあがった企業にRFPへの対応を依頼しました」と、田山氏。その中に含まれていたのが、同社のカメラとレコーダー製品に組み込むソフトウェア開発を長年担当してきた富士ソフトでした。

RFPに対する富士ソフトの取り組み

フィジビリティからの対応とクラウド&組込み開発の強固な連携を提案

i-PROから相談をいただいたとき、採用するクラウドサービスは、まだ決定していませんでした。そこで富士ソフトが提案したのは、フィジビリティから参加し、一つひとつの要望に対する検証から取り組むことでした。
富士ソフトは独立系として幅広い技術対応力を蓄積しており、フラットな立場から同社の要望を理解して対応する技術を検証することができます。同社と同じ立場から技術検証できることは、大きなメリットを提供できると考えたのです。

そしてもう一つ、強みとして提示したのが、組込み系との連携です。 「富士ソフトは、i-PROのカメラとレコーダーの組込み系開発を、九州支社で長年担当してきました。さらに九州支社内には、AWSをはじめ、様々なクラウド開発に多くの実績を持つチームもあります。同じ拠点にあるこの2チームがタッグを組むことで、より良いご支援ができると考えてご提案させていただきました」と、富士ソフトで今回のプロジェクトを統括した江嶋直樹は話します。

各社からの提案が検討され、最終的に富士ソフトがサービス構築パートナーに選ばれました。そのポイントとして川添氏は、「RFPの要点だった実績とコストを点数化した結果が高く、なかでも採用が決定したAWSにおける開発実績が豊富だったこと」を第一の要因にあげました。さらに、「今回のサービス開発では、セキュリティカメラとエッジストレージとの接続・連携が重要になってくることから、クラウド開発と組込み開発の連携がスムーズに行える富士ソフトにお願いしようと決めました」(川添氏)。

システムの構築プロセス

AWS Well-Architectedにより、着実に構築を推進

新サービスの開発は、 2021年 4 月にスタート。「AWSサービスについては、AWS Well-Architectedの反映により、着実に構築を進めていきました」と語るのは、富士ソフトで今回のプロジェクトマネジメントを担当した大石学です。
映像サービスについてはAmazon Kinesis Video Streamsを中心に、関連するサービスを採用して構築。新サービスを実施する際には強固なセキュリティの確保が必須であることから、AWS IoT Core、Amazon Cognito、AWS WAFに加え、富士ソフトのセキュリティ関連サービスであるRaven for FuzzingとSynackも提供しました。

ウォーターフォールからアジャイルへ変更にも対応

こうした開発と並行して進められた取り組みがありました。ウォーターフォール型からアジャイル型へ、開発手法を変更しようというものです。今回の開発はもとより、これから順次提供していく新しいサービスの開発では、社会状況を反映して変化するお客様の要求をいち早くキャッチし、素早く、的確にシステムへ反映していく必要があります。そこで新たな開発手法にアジャイル型を採用し、2週間のスプリント方式での開発を目指したのです。
富士ソフトは、この取り組みにも対応しました。今回のプロジェクト全体で開発リーダーを務めた富士ソフトの中村泰三は、「今回のアジャイル開発では、製品としての機能を実現させつつ、確かな品質を確保して2週間ごとにアウトプットを出す難しさは、確かにありました。しかしながら、AWSの各サービスは細分化されていることからアジャイル開発との相性がとても良く、AWS FargateやAWS CodeBuild、Amazon Kinesis Video Streamsなどのサービスを利用することで、的確に対応できたと確信しています」と、アジャイルとAWSの関係性について紹介しました。

ECサイトも構築し、新サービス提供に向けたフルサービスを担当

そしてもう一つ、富士ソフトが開発を担当したのがECサイト構築です。同社では独立に伴い、独自の販売ルートを確保するためにECサイトの立ち上げを計画し、この開発も富士ソフトが担当していました。当初、この開発は別プロジェクトとして進められていましたが、このECサイトを通じてi-PRO Remo.を販売することが決定。これにより、富士ソフトは、i-PRO Remo.に関して、技術検証からシステムの設計・開発・運用、さらに販売までのフルサービスを担当することになったのです。

i-PRO Remo.提供ソリューション概要

i-PRO Remo.提供ソリューション概要

システム構成図

システム構成図

構築後の運用状況

「新しいリモートのかたち」として新サービスの提供を開始

こうして2022 年 6 月、i-PRO Remo.は、「その防犯カメラ、スマホで見られていますか?」をアピールポイントとして、次に紹介する3つの特長を「新しいリモートのかたち」として掲げ、日本国内に向けてサービス提供を開始しました。

①ユーザーの体験が変わる「スマホで見れますよ!」

従来のように、セキュリティカメラが設置されている現場へ行かなくても、手もとのスマートフォンやタブレット、パソコンから現場の映像をリモートで確認可能。リーズナブルなセキュリティ映像サービスが利用できます。

②販売する企業の体験も変わる「生産性が上がる!」

i-PRO Remo.のリモート設定は、ネットワーク機器やモバイル端末の設定入力が不要。サービスにログインするだけで完了します。そのため、i-PRO Remo.を販売する企業には、システムの構築と保守が簡略化できるメリットを提供。障害発生時もリモートアクセスツールで迅速な解決を支援し、保守コストの抑制に貢献します。

③そして、最前線のプロフェッショナルの判断をサポート

カメラ映像をAIアプリケーションで解析した結果をスマートフォンに通知。各店舗を指導・監督するスーパーバイザーなどのプロフェッショナルが現地の状況をリモートで確認し、的確な対策を店舗に伝えてスピーディーに実施できます。

サービス提供直後から問い合わせが相次ぎ、次々に採用

サービス提供を発表すると、すぐに流通業、飲食業、イベント会場運営者などの新規顧客から問い合わせが相次ぎ寄せられ、次々に採用が決まっていきました。
「新サービスとして市場に幅広く受け入れられ、着実に成果が上がってきている手応えを実感しました」と、当時を振り返って川添氏は語ります。

また、アジャイル型の導入による新しい開発手法の推進により、従来は四半期に1回だったシステムのバージョンアップが月1回と大幅に短縮された製品も登場しています。
「以前では考えられない開発スピードが実現し、トータルな視点で捉えると、開発効率は2.5倍に大幅向上しています」と、田山氏は新しい開発手法の成果を強調しました。

今後の展望

国内サービスの拡充とともに海外にも展開

こうした市場からの大きな反響を受け、i-PRO Remo.は定期的に機能改善・機能追加を実施しており、国内向けサービスの新たな価値創造とお客様満足度の向上を推進。i-PRO Remo.対応の新型カメラ・レコーダーの開発も着実に進んでいます。

さらに2023年夏には、海外でも同様のリモート監視サービスをリリースする予定です。そのために、海外のAWSリージョンでサービス提供に向けたシステム構築が着々と進行中。「こうした海外展開がスピーディーに実現できることもAWSのメリットであり、AWSの採用は正しかったと確信しています」(田山氏)。

引き続きフルサービスの提供に向け、富士ソフト社内の体制強化を推進

同社では今後も引き続き、新たなサービスの開発と拡充によってビジネスを拡大する計画です。 「i-PROのビジネスの拡大は、これからが本番です。多くのお客様に役立つサービスを実現するため、大いに期待しているのが富士ソフトからのアドバイスです」と、川添氏。「自社で多くのサービスビジネスを展開してきた経験に基づき、一緒に新サービスの開発に取り組んでもらいたいと考えています」(川添氏)。

江嶋は「この期待に応えるため、引き続きフルサービスが提供できるよう、体制の強化に取り組んでいます。富士ソフトでは、新規事業創出のサービスデザインやコンサルティングも実施しています。こうしたご提案とともに、具体的な内容の実現についてご一緒に考えさせていただき、そのまま開発に落とし込み、サービスの実施から運用までご支援させていただきたいと思います」と語りました

導入サービス

今回取材に応じてくださった方

  • i-PRO株式会社
    レコーディングプロダクト
    レコーディングプロダクトヘッド
    ディレクター

    川添 修司 氏(左)
  • レコーディングプロダクト
    レコーダー・ソフトウェア
    商品マネージャー

    田山 哲生 氏(左から2番目)
  • 富士ソフト株式会社
    エリア事業本部 九州支社 第1システム部
    部長
    江嶋 直樹(右から3番目)
  • エリア事業本部 九州支社 第1システム部
    第1技術グループ長

    大石 学(右から2番目)
  • エリア事業本部 九州支社 第1システム部
    第3技術グループ リーダー

    中村 泰三(右)

株式会社ブルボン

i-PRO株式会社

  • 所在地:
    (本社)
    東京都港区港南二丁目15番1号 品川インターシティA棟14F
    (福岡事業所)
    福岡県福岡市東区箱崎七丁目9番66号 i-PROビルディング
  • 代表者:
    代表取締役会長 中尾 真人
    代表取締役社長 尾崎 祥平
  • 事業内容:
    セキュリティ・医療・産業分野向け機器・モジュールの開発、製造、販売
    システムインテグレーション、施工、保守、メンテナンス及びこれらに関するサービスを含む各種ソリューションの提供
  • 従業員数:
    約1,400名(海外関係会社を含む)

    (2022年11月時点)

  • オフィシャルサイト:
    https://i-pro.com/

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