大和ハウス工業株式会社様(AWS導入支援)

スマートハウスの実証事業(※1)で統合APIを開発し、
通信方法が異なるIoT機器の連携を実現
ビジネス面、技術面での課題も解決

IoT機器やAI機能を連携した情報基盤の実証事業に参加した大和ハウス工業株式会社。利用者の生活パターンや気象センサーのデータなどを活用した設備機器の制御や、音声認識による機器の操作などへの活用が期待されています。機器ごとに異なる通信方式やデータ形式への対応や、システム開発や運用にかかるコストといった課題に対し、富士ソフトの提案により、クラウドを活用することで柔軟な対応を可能に。コスト・価値の両面で効果を発揮しました。

導入の背景

大和ハウス工業が取り組んだスマートハウスの実証事業とは

大和ハウス工業株式会社は1996年からスマートハウス関連の研究を開始。2002年にはスマートハウスの展示場をオープンするなど業界に先駆けて取り組みを続けてきました。

スマートハウスを構成するHEMSには「ECHONET Lite」という通信規格があり、様々なメーカーの製品をコントロールできます。エアコンや照明だけでなく、給湯器や蓄電池など多くの機器が対応しており、大和ハウス工業も注力して取り組んでいます。

これまでも大和ハウス工業では家庭内の複数の機器を操作できるアプリを第三者が開発できるように「住宅API(※2)」を提案し、統一されていない通信規格でも住宅内の機器を統合的に扱うことに取り組んできました。

ただ、一般の人がイメージするのはスマートメーターを確認する程度の機能でした。「家の中の機器を連携しただけでは、分電盤で取得した電力などのエネルギーを見える化するために使うのがスマートハウスだと捉えられてしまい、その魅力が限られていることに気づいた」と吉田氏は話します。 最近は安価で気の利いたIoT機器が多く登場しており、便利に使えそうです。しかし、これらはデバイスとクラウドが1対1につながっており、既存のECHONETとはプロトコルが違うため接続できません。
また、IoT機器にはそれぞれにアプリが付いており、管理するにはスマホがアプリだらけになるという問題もあります。重複した機能も多く、温度や湿度といった数値は様々なセンサーで取得できます。これらには「横の連携ができない」という課題もありました。
このようなIoT機器での横連携を考えたとき、Webサービスを連携して自動化できるツールを使ってECHONETの機能をクラウド連携させる案があります。

ただ、吉田氏は以下のような課題を指摘します。「住宅メーカーとしては家という空間を提供する責任の中で、機器を統合的に制御できるサービスとして提供していく使命があり、これを扱えるIoT活用基盤を提供できることを実証する必要がある。また、HEMSをクラウド化すると、クラウドの運用や接続する部分のお金を誰が出すのか、セキュリティはどうするか、IoT機器をどうやって施工するかという課題もある」
このようなクラウド連携におけるビジネス的、技術的な課題を出し、解決していく、というのが実証事業のコンセプトです。

導入の結果

住宅APIからクラウドへ 統合APIの開発でIoT機器を連携

住宅APIをクラウド化したとき、インターネットがないと家に入れない状況が発生すると困るので、基本的にはローカルで制御できるように構築する必要があります。
今回の実証事業では、図(情報基盤のイメージ)のような連携を行っています。

情報基盤のイメージ

ここで、スマートハウスに対しては、従来の住宅APIを経由してクラウド連携できるように考えました。クラウドからローカルAPIをセキュアに呼び出す仕組みとして、MQTTを使って双方向に通信できるAPIを作りました。この部分は、AWS IoTを使って接続しています。

使われるAPIは基本の構想段階である程度決めていますが、各社に任せている部分もあります。データ項目や通信の書式など、趣旨や過去の事例などを提示し、ベストと思われるものを提案していただいています。様々なAPIが作られても、できあがるにつれて、似ているものが自然と共通化されると考えているため、まずはAPIを作るところから始めています。

「APIで差別化、というよりは作ってみて合わせてもらう。APIは住宅メーカーにとっては競争領域ではなく、標準化され、IoTの機器に搭載されればいい」と吉田氏は話します。

今回のようなAPIの検討は、10年前でも実現できたものです。ただ、APIを用意しても、基盤となるサーバーをゼロから手配して運用するとなるとコストがかかります。住宅メーカーでそうした費用を負担するのは厳しいものがありました。
現在の安価なIoT機器やクラウドサービスを利用することで、ゼロにはできないものの限りなくゼロに近づけられると考えました。

会社選定のポイント

過去の経験を元に要件を把握し、AWSへの不安を解消した信頼感

クラウド環境として吉田氏はAWSを選択したいと考えました。「こんなサービスがあるのかな、と調べてみるとすでに用意されていた。しかも、それが安価に提供されていて、時間で課金される。これならイニシャル、ランニングコストをゼロに近づけられると判断した」と吉田氏は語ります。

AWSはサービスの組み合わせが無限にあって、その組み合わせの中でどう組み上げていくかを検討できます。

スマートホーム構成図

一方で、「AWSを使っている人が、間違えて高額な課金があったという話を聴いて、敷居が高いと感じていた。AWSは割と専門的な感じはしていた」という不安も吉田氏にはありました。

そんな中、富士ソフトはAWSのサーバーレス機能を使って、今回のような統合APIを作る案を提示しました。これによりサーバーの管理を気にしなくて済み、実現したいことに対して適正な環境を実現できます。

ただ、AWSを使うときに感じていた不安は課金だけではありません。どのようなサービスを組み合わせれば効果的なのか、その拡張性やコスト面など複雑な構成があります。

富士ソフトは過去の案件で培った実績を元に適正なサービスを選定してコーディネートし、現実的な金額として具体化したことが実証に取り組む決め手になりました。

今後の課題

データを分析してユースケースを検討。すでにクラウドでの管理は必須

今後の課題として、データの活用が挙げられます。「情報基盤を作り、データを収集できているが、あまり高度に分析していない。このため、収集したデータを組み合わせて付加価値を出すというところができていない」と吉田氏は話します。

例えば、稼働状況をAIで分析して故障を予知し、それをスピーカーで話していく、といった提案ができるかもしれません。これを実現するには、故障予知の情報をどう活用するのか、ユースケースの検討が必要です。AWSには機械学習のサービスも用意されているため、これを利用することも考えられます。

吉田氏は「お客様をサポートするコストをIoTやクラウドを使って減らせればメリットは大きい。普段の日常生活でどう使われたのか、という情報や、家族構成などのデータも含めてプライバシーを確保しつつ、施工会社や設備機器メーカーにとっても活用できるような基盤として運用するところを目指していきたい」と語ります。

さらに、実証事業の成果を一般に普及させていく役割もあります。「現時点では高度なことはしていないが、十分魅力はあると感じている。しかし、これらを提供していくうえで住宅メーカーとして『責任施行』を達成する必要がある。ただ設置するだけでなく、設定するにはお客様のスマホを操作する必要があり、入居する前には実施できないため、設備機器メーカーや施工業者とも会話して解決したい」(吉田氏)

さらに、「クラウドから家の中の機械の設定を変更できるなど、一度体験すると手放せない便利さがある。これを住宅メーカーとして推進したい」と吉田氏は今回の成果を含めて今後について語りました。

※1 IoTを活用したスマートホームクラウド構築及び検証

※2 住宅APIの基本となるプログラムは、大和ハウス工業株式会社が「平成21年度スマートハウス実証プロジェクト」において開発したものです。

導入サービス

今回取材に応じてくださった方

  • 大和ハウス工業株式会社
    総合技術研究所 工業化建築技術センター 建築系技術開発2グループ 主任研究員
    吉田 博之

大和ハウス工業

大和ハウス工業株式会社

  • 所在地:
    大阪府大阪市北区梅田三丁目3番5号
  • 資本金:
    1,616億9,920万1,496円
  • 従業員数:
    15,725名 (平成29年4月1日現在)※有期契約者を除いた人数
  • オフィシャルサイト:
    http://www.daiwahouse.co.jp/

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