株式会社蔦屋書店(AWS移行・導入支援)

システムが複雑で運用・保守の負担が大きくなっていた多数のサーバーを​マイクロサービス化しAWS上にリアーキテクト(クラウドシフト)。​
システム標準化とHW保守からの解放により運用業務が大幅に低減し、
システム改善に注力できる環境を実現。

インタビュー動画

導入前の課題

  • 多数のシステムが複雑に連携している点
  • オンプレミスシステムの運用保守の負担大
  • システムの硬直化によるビジネス変革への追従が困難

導入後の期待

  • マイクロサービス化によるシステムの可用性・保守性の向上
  • ハードウェア保守からの解放による管理者の負荷軽減
  • 激しいビジネス変革に対応できるシステム基盤構築を実現
移行の背景

多数のシステムが複雑に連携し、保守・運用が大きな負担に

株式会社蔦屋書店
システム部 部長
奥田 二弘 氏

-蔦屋書店様におけるITシステムの取り組みについてお聞かせください

株式会社蔦屋書店は、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)グループの生活提案企業です。
ライフスタイルを提案する場として、リアル店舗では「TSUTAYA」、「TSUTAYA BOOKSTORE」、「蔦屋書店」などの直営店舗の企画・出店・運営やフランチャイズ展開を行っています。最近では、渋谷スクランブルスクエアなどに「SHARE LOUNGE」をオープンし、企画・運営を行っています。またネットアプリ・オンラインのプラットフォーム として、「TSUTAYAアプリ」、「TSUTAYAオンラインショッピング」、「TSUTAYAオンラインゲーム」などのサービスも展開しています。さらに、店舗レンタルとネット配信を融合した月額定額サービス「TSUTAYAプレミアム」の展開も行っています。

システム部では、これらの事業を支えるシステムの企画、開発、運用を行っています。
最近では、サービス・システムの信頼性、可用性、ビジネススピードが求められている一方で、効率化やTCOの削減も求められている時代と考えています。また、当社のシステムはリアル店舗やネットサービス、さらにはTポイントとして知られる会員サービスを行っていますので、信頼性やセキュリティを担保する重要性はさらに増してきていると思います。

このように複雑化するシステム全体の可用性・信頼性をより高めるために、3年ほど前に専門の部隊であるSRE(Site Reliability Engineering)ユニットを立ち上げました。SREユニットでは、課題解決や新しいシステムの策定を行いながら、インフラのみならず、サービスの信頼性を向上させるための活動を日々行っています。


※Site Reliability Engineering:Google社が提唱するシステムの信頼性向上を目的とした管理・運用の手法論。

変革が激しいビジネス環境に対応するため、クラウドシフトを決定

-AWSへのシステム移行の背景をお聞かせください

先にもお話した通り、当社システムは、店舗、FC本部、分析、商物流、ネット・アプリで、B2C、B2B2Cなど幅広くあり、2018年にスタートした「TSUTAYAプレミアム」はネットとリアルを融合したもので、システムの連携は複雑化してきています。
また、ご存知の通り「2025年の崖問題」は当社にも当てはまり、4年前からクラウドファーストを基本として、システム更改、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の検討を進めています。

事業がリアルの場、会員、ネット含めた顧客接点から新たな業態へシフトしていく中で、システムはアセットを最大限活用しつつ、変革期のリスクを最小化しつつも、一方で、変化へ対応できる環境への移行が必要だと考えています。
そこで、第1フェーズをクラウド化基盤の構築、第2フェーズを全サービスのクラウド化の完了、第3フェーズをマルチクラウド化と位置付けたロードマップを策定し、実行に移しました。

第1フェーズでは、15あるネットサービスから取り組みを進めています。ネットサービスは、他システムよりも環境的に進めやすいということもあり、今後の戦略やビジネススピードの加速に対応していくために、クラウド化を進めながら、見識、技術を修練しておく事が必要だと考えていました。

移行前のシステムは、すべてオンプレミスの仮想環境上に構築されてしました。15のシステムは開発された時期がすべて異なっており、それぞれのシステムが単体で完結する形で作られていました。そして、この状態でシステムの増築・増強を行っていたため、結果的に各システムが複雑に連携し合う状態でした。障害やぜい弱性の温床となったり、属人化が進んでしまったり、似たような機能もそれぞれ個別に作られていたので、ちょっとした改修に高いコストをかける必要があるというところに大きな課題がありました。

蔦屋書店様 サーバ移行の概要​

蔦屋書店様 サーバ移行の概要​

選定の理由

豊富なAWSエコシステムを活用して、システムをリアーキテクト

-AWSに移行するにあたり、どのような工夫をされましたか

株式会社蔦屋書店
システム部 SREユニット ユニット長
島﨑 祐輔 氏

SREユニットのミッションであるシステムの信頼性、可用性を高めるためには、システムを横串で見ることができなければ意味がないと考えました。そこで、単なるクラウド移行ではなく、複雑に絡み合ったシステムを一度紐解き、リアーキテクト(再設計・再構築)することを決断しました。

アプローチとしては、各システムの共通に使える機能と、個別の機能を切り分けました。共通に使える部分は機能をサービス化することで、各システムで共用して使えるようにし、個別で必要な機能は各サービスのAWSアカウントに紐づけて設置するというアーキテクチャを考えました。
また、共通化機能では、従来はライセンスが必要であったソフトウェアの見直しを図り、OSS(Open Source Software)でも十分代替可能と判断したため、大部分をOSSにシフトしてライセンスコストの削減に成功しました。
さらに、Terraform、AnsibleなどのIaC(Infrastructure as Code)ツールを活用しオペレーションのコード化、自動化を図りました。これにより、似たようなサービスが複数できることが多いのですが、このようなときに今までのアセットがそのまま利用できて、いわゆる冪(べき)等性、つまり誰でも作れるという環境ができました。

※Infrastructure as Code:インフラの構成をコード化して管理する考え方。

-AWSを採用した理由をお聞かせください

AWSを採用したのは、他のパブリッククラウドと比較して、圧倒的に多いエコシステムを持っていることです。
AWSを使って完結できればいいのですが、実際にはさまざまなSaaSなどの外部サービスを使ってシステムを構築します。その際に連携プロダクトが圧倒的に多いのがAWSです。また、参考にする事例の圧倒的な多さ、AWSの技術者の多さが決め手でした。

オンプレミス環境は専用品が多く、技術者の数や専門性が問われており、手を出しずらいというところがありました。その点、AWSではサービスが充実しているために、それほど専門的な知識を持っていなくても、気軽にトライ&エラーや学習がしやすい、という点が採用の理由の一つです。サービスを自分で確認できるところがいいところです。

-パートナーとして富士ソフトを選んだ理由をお聞かせください

開発パートナーの選定にあたっては、複数のSIerにRFPを出し、提案をもらいました。
AWSに関しては強みを持っている会社は複数社ありましたが、AWSの周りのシステムに対するノウハウは富士ソフトが圧倒的に持っていました。先ほどもお話したように、今回のシステム再構築にあたり、かなり多くのOSSを使っています。また、他のSaaSとの連携、さらにはセキュリティの観点からオンプレミス環境に残すこととした一部のシステムと、AWSの連携は非常に重要となっています。

したがって、AWSとOSSの連結部分、AWSと他のSaaSとの連結部分、既存オンプレミス環境との連結部分の開発が一番難しいため、この課題に対応できると考えられたのは富士ソフトだけでした。

移行後の効果

運用負荷業務が大幅に低減し、システムの改善に注力できるように

-導入の効果はいかがですか

システムの運用面での負荷が大きく削減できたことは非常に大きな導入の効果でした。
オンプレミス環境では、サーバ、ストレージ、ネットワークなどのさまざまなハードウェアがあり、SREユニットの業務として、これらの障害対応や日々の運用が大きな割合を占めていました。
AWSへの移行を開始して1年が経ちますが、インフラ起因による障害は1件も発生していません。したがって、インフラの保守にかかる時間をほぼなくすことができました。運用に関しても、共通サービス基盤の構築によって、一元管理できるようになったので、オペレーションが非常に少ない時間で済んでいます。
この結果、ハードウェアの管理業務からほぼ手を離すことができ、この生まれた時間を使って、従来後回しにしがちであったシステムの改修・改善に力を注ぐことが可能となりました。今では月に20~30のアーキテクチャの改善をリリースしており、これは非常に大きい導入の成果だと思います。

開発面では、従来のプライベートクラウドよりSaaSなどの外部システムとの連携がしやすくなったことが挙げられます。
例えば、従来であればシステムの監視は有人でやっていましたが、AWSに移行後は完全自動のオートコールの仕組みを導入しました。このような仕組みを導入しやすくなったというのも導入の効果だと感じています。
また、AWSの豊富なサービスを活用することで、内製できるところが増え、開発のリードタイムも大幅に短縮できるようになり、開発コストを抑えることもできるようになりました。このあたりも非常に手ごたえを感じているところです。
コスト面では、現状クラウドへの移行が3割ほどであり、既存のオンプレミス環境の保守・運用も残っています。完全にクラウドへ移行できた際には大きなコストメリットが期待できると考えています。

蔦屋書店様 新基盤のアーキテクチャ

蔦屋書店様 新基盤のアーキテクチャ​

富士ソフトの評価

富士ソフトの協力がなければプロジェクトの成功はなかった

-富士ソフトに対する評価をお聞かせください

株式会社蔦屋書店
システム部 SREユニット
柴田 真 氏

富士ソフトには、今回オンプレミスに残すシステムと、AWSに移行するシステムの切り分けをはじめとして、既存ベンダーとの連携などをサポートしてもらったことを大変感謝しております。スピード感ある開発やOSSの豊富な知見で助けていただいている部分がたくさんあり、現在も引き続き常駐してもらい、運用管理面や、次のフェーズへの作業で日々支えてもらっています。

システムのIaC化に伴い、システムの改修フローが大きく様変わりしました。コロナ禍でお互いリモートワークとなっても、GitやSlackなどさまざまなツールを使って、作業効率がほぼ低下せず、コミュニケーションロスもなく円滑に進められており、かえって通勤時間が無くなって生産性が上がっているぐらいに感じるほど、非常に満足しています。

今後の展望

2025年に向け、フルクラウド化とシステムのモダナイゼーションを目指す

-今後の展開・ご予定をお聞かせください

デジタルサービスについては、5年後までにフルクラウド化していきます。ネットサービス以外のシステムにおいても、今後の(会社の)事業戦略・成長戦略を実現し、ビジネススピードに対応していくために、クラウドファーストを基本としたシステム刷新を進めていきます。
ロードマップでは、現在、店舗システムの更改時期を迎えつつありますので、こちらもクラウドを基本としたシステムに変えていく方向です。その後、FC本部の基幹、商物流の仕掛けもクラウド化を進めていくロードマップを引いています。
クラウドシフトにおいては、最適なテクノロジーを見極めつついかに構造を変えていくか、リスクを最小化するには、マイクロサービス化を見据えながら進めて行くことが必要だと考えています。
システム部としては、成長戦略に少し先回りしながら、事業に貢献していくということをやって行きたいと考えています。

ネット系システムとしては30%移行が完了し、今期は50%、2025年には100%の移行を目指しています。ここからはデータベースの移行と、それを呼び出すアプリケーションの移行を進めていきます。これらの開発においても、シンプルに、標準化していきながら開発を繰り返していきます。
また、ネット系システムに関しても、すでに監視システムなどは移行が可能なので、できるところから順次クラウド化を進めていく予定です。
これからはシステムのモダナイゼーションに着手していきます。サーバーレスのアーキテクトをどのように入れていくべきか、コンテナ化なのか、Amplifyのような形でモダナイゼーションしていくかというところを、検討や検証から一緒に進めていければと思います。

今回のネットサービスのクラウド化は、リアーキテクトしながら進めており、システム数も多く、技術的にも難易度が高いものであったと思います。富士ソフトの幅広い知見と経験によって、我々も無事にプロジェクトを進めることができました。今後もリアルなサービスも含めて、技術のみならず、戦略的にどうシステムを移行していくのかをビジネスパートナーとして、アドバイスや協力をいただきたいと思っています。

今回取材に応じてくださった方

  • 株式会社蔦屋書店
     システム部 部長
     奥田 二弘 氏(左から4番目)
  •  システム部 SREユニット ユニット長
     島﨑 祐輔 氏(右から2番目)
  •  システム部 SREユニット
     柴田 真 氏(左から3番目)
  • アマゾン ウェブ サービス ジャパン
     田辺 博巳 氏(左から2番目)
  • 富士ソフト株式会社
     執行役員 ソリューション事業本部 
     副本部長  山本 祥正(右から3番目)
  •  ソリューション事業本部 インフラ事業部
     クラウドソリューション部 第1技術グループ
     
     次長 田中 基敬(右から1番目)
     リーダー 出堀 琢麻(左から1番目)
※本事例の取材は、新型コロナウイルス感染防止に配慮して実施いたしました。

導入サービス

株式会社蔦屋書店

株式会社蔦屋書店

  • 所在地:
    東京都渋谷区南平台町16番17号渋谷ガーデンタワー
  • 代表者:
    代表取締役社長 兼 CEO (最高経営責任者)
    増田 宗昭
  • 社員数:
    6,602名(アルバイト含む)

    ※2020年4月1日時点

  • オフィシャルサイト:
    http://www.tsutaya-ltd.co.jp/

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