コニカミノルタ株式会社(AWS導入事例)

日本で先駆けとなる遺伝子検査による
未病検診プラットフォームサービスを開始、
セキュアな環境とともに一般利用者のUX向上も実現

導入前の課題

  • 検診受診者を対象とした遺伝学的検査を組み込んだサービスの参考事例が日本にない
  • 医療機関でご導入いただくため3省ガイドライン準拠の必要性
  • 一般の検診受診者が利用しやすい接続環境とインターフェース画面
  • セキュアな接続環境が求められる医療機関への対応

導入後の期待

  • 医療機関の要求に応えるセキュアな接続環境の実現
  • 3省ガイドラインへの準拠
  • 一般利用者も各医療機関も満足できる利用環境の実現
  • 強固なセキュリティを維持運営できる安心安全な運用保守




システム構築の背景

米国で新たな価値を創造した遺伝学的検査の新形態サービスを、いち早く日本へ

コニカミノルタREALM株式会社
ゲノム営業部
マネージャー
大谷 真紀子 氏

-貴社が取り組んでいる事業展開についてお聞かせください

創業以来、当社はカメラと写真事業を中核に据え、イメージング技術を培ってきました。こうした取り組みから、こだわり続けているのが「見える化」です。
このコンセプトに基づき、ビジネスドキュメントを美しく“見たい”というニーズに応える複合機・プリンター事業や、疾病の兆候を早期に“診たい”という想いに応えるヘルスケア事業などを展開してきました。

現在は、この「見える化」と「DX」を融合し、新たな価値を社会に提供する企業像を目標に掲げて、新規事業の確立と推進に取り組んでいます。

今回のプロジェクトに参画している私たちが所属するコニカミノルタのプレシジョンメディシン事業部とグループ企業のコニカミノルタREALMの目標も、デジタル技術を活用したヘルスケアの次世代を担う新規ビジネスの事業化です。
その一環として、「遺伝子の見える化」という新しい価値の創造により、健康で質の高い生活の実現に貢献することを目標の一つに掲げて事業を展開しています。

-今回のシステム構築はどのような経緯から取り組まれたのでしょうか

当社グループは2017年に、遺伝子検査技術で世界をリードしてきた米国Ambry Genetics社をグループに加え、「遺伝子の見える化」に取り組んで参りました。同社は業界初のサービスを数々生み出しており、がん罹患者を対象とした遺伝子検査サービスも業界に先駆けて提供。2019年からは検査対象を非罹患者に拡大した遺伝学的検査サービス「CARE Program™」を米国で開始しました。

CARE Program™では、Webでのデジタル問診を通じて遺伝性のがんリスクを判別し、リスクが高いサービス利用者に受診を勧め、希望者は医療機関で遺伝学的検査を実施。その結果をもとに、受診者一人ひとりに最適化したがん検診プランを提案します。米国において、サービスを本格的に開始した2020年から順調にサービスを拡大しています。

米国での利用者の増加、顧客である医療者からの声を集める中で、日本でも同様のサービスを提供する価値は高いと判断。遺伝性・家族性のがんに関する診療ガイドラインに基づいた日本初の未病プラットフォームとして「Ambry CAREプログラム®」サービスの提供を決定しました。

構築に向けての課題

最先端のサービス提供に向け、クリアすべきポイントをゼロから整理

-サービス開始に向けてどのような体制を組まれたのでしょうか

検診受診者を対象とした遺伝学的検査を組み込んだサービスは日本で前例がなく、参考にできる事例がまったくないことから、ゼロからのスタートでした。提供するサービスの基本はAmbry社のCARE Program™ですが、日本に浸透させていくためには、日本の医療環境に細部まで合わせていくことが必要となります。 そこで、多くの医療機関における遺伝学的検査の浸透度や現場でのフローを理解している営業の大谷がフロントに立ち、協力医療機関にCAREプログラムを紹介するとともに、サービス導入に際しての要望をヒアリングし、要求仕様を定義。川野をはじめとするソフトウェア開発グループのメンバーが、その内容をシステムとして実現する役割を担う形で、プロジェクトをスタートさせました。

-システム構築に向けて課題になったことを教えてください

最大のポイントは、3省ガイドラインへの準拠です。このガイドラインに準拠していなければ医療機関では使用いただけません。

データ管理に関するセキュリティ要求は高く、難しい対応が続くことは予想できました。しかしながら、個人に関するセンシティブなデータを扱うことから、最大限のこだわりを持って取り組むことをプロジェクト全体で確認しました。

もう一つの重要なテーマが、アクセス環境です。セキュアな環境を実現しながら、利用者である一般個人からは、インターネットを利用して気軽にアクセスできることが求められます。その一方で、医療機関からは、必要に応じてアクセスできる接続環境を構築することが必要になります。ここでさらに問題になるのが、医療機関ではネットワーク接続を制限している場合が多いことです。

高いハードルがいくつも待ち構えていると感じましたが、それをすべてクリアした上で、医療機関から寄せられる要望にも応え、安心安全な運用を実現していくことを目指して歩みを進めました。

パートナー選定のポイント

遺伝子検査事業を含め、グループ内でのさまざまな事業における実績を評価

コニカミノルタ株式会社
プレシジョンメディシン事業部システム開発部
ソフトウェア開発グループ
アシスタントマネジャー
川野 達也 氏

-システムの構築先をAWSに決めた理由をお聞かせください

当社グループでは、クラウド技術を活用したシステム展開を推進しており、組織横断でクラウド技術の平準化を目指すCCoE(Cloud Center of Excellence)を組織しています。
こうした活動の推進に伴い、AWSとパートナーシップを組んだ案件が、着実に増加。クラウド人材の育成にもAWSのトレーニングを活用するなど、AWSの利用は全社で進んでいます。

また、プロジェクトメンバーに共通した認識として、これまでのAWS利用経験を通じて、スケーラビリティと運用の柔軟性に魅力を感じていました。初期投資を抑えつつ、事業の拡大に応じて柔軟にシステムを拡張できるAWSの強みは、Ambry CARE プログラム®の事業計画にフィットすると考えたことから、採用を決定しました。

-富士ソフトをパートナーに選ばれた理由を教えてください

一番のポイントは、当社グループのさまざまな事業でシステム開発を手掛けていた実績です。中核事業である複写機の開発でも、富士ソフトは数々の機能を開発した実績があります。ヘルスケア事業に関しても、X線画像診断システムなどの開発を担当してもらっており、高い信頼感を抱いていました。

また、今回のシステムをAWS上に構築することを決定したことから、AWSのパートナーとして最上位のプレミアティアサービスパートナーであることも、信頼を高める裏付けになりました。

構築に向けての取り組み

セキュアな環境と柔軟なユーザビリティを両立

-システム構築はどのように進んだのでしょうか

今回、富士ソフトに開発いただいたのは、米国CARE Program™のローカライズをベースにしたシステムのフロント部分となる「CAREプログラム登録サイト」です。提供するサービスについての情報提供から、チャットボットによるデジタル問診を実施するために必要な利用者情報の登録と保存・管理という役割を担うサイトです。この機能に加え、利用者にとって親しみやすいトップページのデザイン、使いやすいインターフェース画面も開発してもらいました。

富士ソフトの開発提案に対する検討・評価は、プロジェクトメンバーに加え、必要に応じてCCoEメンバーにも参加してもらいました。さまざまな視点から検討を進めましたが、他のテーマで培った知見を積極的に反映するなど、期待通りの対応で、とても高いレベルで要求を満たしてもらえたと感じています。

全体構成図

-データ管理についての特長をお聞かせください

医療機関に対する事前のヒアリングで、AWS上にシステムを構築すると伝えたとき、関心の高かったポイントは、「データをどこに保管し、どのように守るのか」ということでした。「日本国内で対応してほしい」という要望が多かったことから、この実現はクリアすべき重要テーマの一つとして取り組みました。

富士ソフトからの提案に基づいて議論を重ねた結果、東京リージョン内に外部から直接アクセスできない閉域網『Amazon VPC』を構築し、その内部に扱いやすいリレーショナルデータベースの『Amazon Aurora』を配置してデータを保存。さらに、AWSの仕組みを使った暗号化を取り入れ、外部からの攻撃に対する安全性を高めることになりました。
加えて、『マルチAZタイプ』でシステムの可用性を向上させています。

-アクセスに関連したセキュリティ面のポイントを教えてください

堅牢な環境を構築した一方で、利用者が気軽にアクセスできる環境と、当社および医療機関が必要に応じてアクセスできる環境を、どのようにして両立させるか。この環境をセキュアに実現するための協議には、特に多くの時間を費やしました。

その結果、入り口をそれぞれに設けることを決定。当社のアクセスは専用ネットワーク接続のみ、医療機関はVPN接続のみにすることで、セキュアな環境を実現しました。
さらにセキュリティ監査の観点から、『AWS CloudTrail』、『VPC Flow logs』、『Amazon GuardDuty』も導入しました。

-今回の開発に対してどのような印象を持たれているのでしょうか

開発がスタートしたのは、2020年7月。新型コロナウイルス感染症の第2波がピークを迎えたときでした。その後、コロナ禍から抜け出すことができなかったため、完全リモートでの開発という、私たちにとっては初めての経験でした。

この特殊な環境下でも高い開発レベルを維持できるよう、週次でネットミーティングを行い、課題管理という形で情報のやりとりを逐次行い、密なコミュニケーションに努めました。これにより、大きなトラブルもなく、ゴールまでスムーズに走り切ることができたと感じています。

システムの現状と今後の展望

ヘルスケア事業の強化につながる新規サービスの立ち上げ提案にも期待

-システム構築後の状況をご紹介ください

Ambry CAREプログラム®は2021年4月、日本で先駆けとなる遺伝子検査による未病検診プラットフォームサービスとして、国内の協力医療機関で試験的にサービスを開始しました。これはプロジェクト発足時に計画したスケジュール通り。富士ソフトが順調に開発を進めてくれたおかげだと思っています。

サービスを開始した医療機関も、最初にAmbry CARE プログラム®を紹介したときには、クラウドにデータを保存することに懸念を持たれていました。
しかしながら、システム構成をはじめ、3省ガイドラインに準拠したセキュアな環境を実現していることなどを丁寧に説明することで懸念を払拭することができ、理解していただいた上でサービスの実施に取り組んでもらうことができました。
その後の運用に関しても、大きな問題はなく、スムーズに使えているとの評価を得ています。

-今後に向けてどのような検討を進められているのでしょうか

まずは、Ambry CARE プログラム®を利用する医療機関を拡充していくことです。試験的にサービスを提供している医療機関から、使い勝手についてもセキュリティに関しても高く評価されていることを受け、自信を持って他の医療機関にも提案活動を行っていくことができます。
日本で先駆けとなるサービスであることから、多くの医療機関が高い関心を示してくださっています。

システムの観点からは、Ambry CARE プログラム®全体を対象とした効率化の検討を進めていきたいと考えています。 今回の開発はフロント部分に特化したシステムですが、サービス全体のワークフローやユーザージャーニーを対象として分析を進め、ローカライズを基本とした部分とのシステム統合や新規機能の追加など、ITとしてサポートできる部分を明確にして、対応を進めていく予定です。

-富士ソフトに対する評価・期待をお聞かせください

日本で先駆けとなるサービス開始に貢献してもらったことに、とても感謝しています。 システムの運用保守サポートに関しても満足しており、今後も引き続きシステム状況を監視し、安定したサービス提供に努めてもらいたいと考えています。

また、今回の取り組みを通じて私たちが新たな期待を寄せているのは、新しいサービスの創造と展開に向けた取り組みです。

ヘルスケア事業は、今後も強化に取り組んでいきます。その際、セキュアな環境は事業の推進になくてはならないものであるため、今回の経験を存分に活かして対応してもらいたいと思います。
さらに、私たちからの依頼に応えるだけではなく、富士ソフトが社内に蓄積しているさまざまなIT技術を連携させ、新規事業の立ち上げに向けた提案にも積極的に取り組んでもらい、一緒に実現していく新たな関係性の構築も期待しています。

導入サービス

今回取材に応じてくださった方

  • コニカミノルタ株式会社
    プレシジョンメディシン事業部システム開発部
    ソフトウェア開発グループ アシスタントマネジャー

    川野 達也 氏(右)
  • コニカミノルタREALM株式会社
    ゲノム営業部 マネージャー
    大谷 真紀子 氏(右から2番目)
  • 富士ソフト株式会社
    ソリューション事業本部 インダストリービジネス事業部 デバイスシステム部
    リーダー 川村 彩子(左)
※2022年4月1日時点の情報を元に作成したものです。

コニカミノルタ株式会社

コニカミノルタ株式会社

  • 所在地:
    東京都千代田区丸の内2-7-2
    JPタワー
  • 代表者:
    代表執行役社長 兼 CEO
    大幸 利充
  • 事業内容:
    デジタルワークプレイス事業、プロフェッショナルプリント事業、ヘルスケア事業、インダストリー事業

  • 従業員数:
    連結 40,979名

    (2021年3月31日時点)

  • 連結子会社数:
    173社 51カ国

    (2021年3月31日時点)

  • オフィシャルサイト:
    https://www.konicaminolta.com/

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