パブリッククラウド活用の課題と解決
2019年12月18日
清水 歩(富士ソフト株式会社)
「クラウドファースト」「クラウドネイティブ」「クラウドジャーニー」。クラウドへの関心は爆発的に高まり、冒頭のような言葉がよく聞かれるようになりました。そんな中、ひときわ注目されているのが“ハイブリッドクラウド”です。
AWS等の事業者が提供するパブリッククラウドと、企業内に構築するプライベートクラウド。この両者を連携させ、良いところ取りをしようという概念がハイブリッドクラウドですが、導入にあたっては多くの課題があり、なかなか普及が進みませんでした。しかし技術の進歩によってこれらの課題が次々に解消され、ハイブリッドクラウドの導入は急速に進み始めています。ここでは、そんなハイブリッドクラウド活用の課題と解決法について紹介します。
高まるハイブリッドクラウドのニーズ
Amazonの「AWS(Amazon Web Services)」やマイクロソフトの「Azure」、Googleの「GCP(Google Cloud Platform)」など、ここ数年でパブリッククラウドサービスは加速度的に増加・進化しています。パブリッククラウドサービスは、システム管理者をハードウェアの管理から解放し、あらゆるリソースを従量課金で利用できる柔軟性が強みで、Webサービスを提供している企業を中心に急速に普及しました。
仮想化ソリューションを用いて企業内にクラウドサービスを構築するプライベートクラウドの需要も、一方では増え続けています。基盤として物理サーバは必要ですが、クローズドながら柔軟性の高いシステムを実現できることがメリットで、機密性の高い業務やデータ管理などで多く利用されています。
パブリッククラウドやプライベートクラウドが普及するにつれて、双方を連携させて利用するハイブリッドクラウドのニーズが生まれました。双方のクラウドをシームレスに利用できれば、さらなる業務の効率化が望めます。しかし、実際に双方のクラウドサービスを連携させるには課題が多く、なかなか導入が進まないまま、次第にハイブリッドクラウドのニーズは下火になっていきました。
ハイブリッドクラウド導入の問題点
ハイブリッドクラウドの実現を妨げた要因とは一体なんだったのでしょうか。これには大きく4つの要因が挙げられます。
第一に、それぞれのクラウドの特性の違いによって、どちらか一方の環境でしか動作しないアプリケーションが数多くあったこと。
第二に、クラウドサービス同士を連携させるための技術が十分でなかったこと。クラウドサービス同士をつなげるコネクタのようなサービスもありましたが、それでも十分に連携しているとは言い難い状態だったように思います。
第三に、共通の管理レイヤーがなかったこと。前述の通り、クラウドサービス間の連携がとれなかったために、パブリックとプライベートをそれぞれ個別に管理しなければならず、運用が繁雑になっていました。
最後に、共通のサポート体制が構築されていなかったこと。プライベートクラウドは大手ベンダーやSIerが構築するのに対し、パブリッククラウドはクラウド事業者などが構築します。購入ルートだけでなく使用される技術も異なるため、サポートも別々のものとなっていました。事業者同士の連携も取られていないことがほとんどで、障害発生時の切り分けや対応に大きな課題がありました。
「VMware Cloud on AWS」で実現するハイブリッドクラウド
そこで有効な解となるのが、VMwareが提供する「VMware Cloud on AWS」です。
「VMware Cloud on AWS」は、VMwareと AWS が共同で研究・開発をした、パブリッククラウドサービスです。AWSが提供する基盤上にvSphere環境を構築するマネージドサービスで、オンプレミスのvSphere環境(プライベートクラウド)で稼動するアプリケーションとの互換性が保障されているほか、サポート窓口も統一されており、スムーズなサポートが受けられます。
通常、プライベートクラウドからパブリッククラウドへの移行には少なからずシステムの停止を伴いますが、「VMware Cloud on AWS」では完全無停止での移行も可能となっており、同製品最大の特徴となっています。
オンプレミスとほぼ同一の管理コンソールを有し、これまでの知見をそのまま活かした運用ができることも、他のハイブリッドクラウド製品にはないメリットです。
同製品はホスト専有型かつ1台1台が高スペックである事から、一定以上の規模でないとオーバースペックになりがちで、導入へのハードルが高く見られがちです。しかしDRサイト向けのリーズナブルな料金体系や、ひとつの VMware Cloud on AWS 環境を複数のユーザでシェアする小~中規模向けのソリューションの提供が目前に迫っており、サービス開始当初と比べ門戸が大きく広がってきています。
その他機能も日々拡充され、進化を続ける VMware Cloud on AWS。
富士ソフトでは、一部無料の検証環境もご用意しております。この機会に是非一度お試しください。
富士ソフトは、VMware Cloud on AWS をはじめとするVMware製品の提供、構築だけでなく、バックアップやセキュリティなど様々なソリューションとの連携にも対応いたします。仮想化製品の導入をお考えの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
富士ソフト株式会社
ソリューション事業本部
インフラ事業部 VMソリューション部 部長清水 歩(vExpert)
VCAP-DTM(VMware Certified Professional Desktop and Mobility)を取得。仮想デスクトップを中心に、数多くの仮想環境のプロジェクトマネージャを務める。現在はプリセールスとしてVMware HorizonとApp Volumes、NSXなどを組み合わせて顧客特性に最適なEUCを提案。