DXを一層加速!AWS ジャパン社・富士ソフト、それぞれの担当者が語るクラウドのメリットと導入事例
企業のDXを促進する、サーバーのクラウド化。AWS ジャパン(アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社)と富士ソフトが手を組み、2023年12月に「ITトランスフォーメーションパッケージ for MCP 富士ソフトエディション」の提供を開始しました。
「従来通りのオンプレミスか、クラウドに移行すべきか、はたまたハイブリッド形式をとるべきか」
「クラウドに移行するにはどうすればいいのか」
サーバーなどオンプレミスのIT機器の更新タイミングではそんな悩みを持つ企業は多いでしょう。
本記事では、AWS ジャパン サービス&テクノロジー統括本部/マイグレーション&モダナイゼーションビジネス本部の富松卓郎氏と、富士ソフト ソリューション事業本部 インフラ事業部 クラウドソリューション部の安斎寛之、ソリューション事業本部 営業統括部の吉岡真太朗に話を聞き、両社の考えるクラウド導入のメリットや事例をご紹介します。
AWS ジャパン社と富士ソフトが連携して提供するクラウド移行支援プログラムです。インフラとアプリケーションの両面に強い富士ソフトの技術を活かし、日本企業特有の課題に対応。既存環境の評価から、クラウド移行、運用・保守まで一貫して支援し、スムーズなクラウド移行を実現します。
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富松 卓郎氏アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
サービス & テクノロジー統括本部
マイグレーション & モダナイゼーションビジネス本部 -
安斎 寛之富士ソフト株式会社
ソリューション事業本部 インフラ事業部 クラウドソリューション部 第1技術グループ
主任 / エキスパート -
吉岡 真太朗富士ソフト株式会社
ソリューション事業本部 営業統括部 第1営業部
部長
クラウド移行を検討する企業が抱える課題
──オンプレミスからクラウドへの移行は増えていると聞きます。そういった企業は主にどのようなタイミングで検討を開始し、クラウドのどんな部分に魅力を感じているのでしょうか。
富士ソフト安斎:移行を検討するのはデータセンターや機器の保守契約の更新のタイミングですね。更新を迎える2年前ぐらいから、長い時間をかけて検討をしているケースをよく目にします。クラウドの特徴は、スケールの柔軟性。スケールアップの際に、従来は筐体やサーバーを都度サイジングして購入していましたが、各種クラウドサービスの充実によって、オンライン上のわずか数クリックでサーバーを購入できるようになりました。これによって、サーバー構築業務をかなり圧縮できます。そこが魅力になっているようです。また、DXの第一歩として、各種デジタル化(デジタイゼーション)を進める上でもクラウド活用が重要になっています。
──クラウド移行の増加要因についてはどのようなことが考えられますか。
クラウド移行の増加要因の1つは、大手企業や行政などでもクラウドが活用されるようになり、安心感が増したことがあると考えています。クラウドは長らくセキュリティ面が不安視されていましたが、「クラウドに移行しても大丈夫そうだ」という認識が広がりつつあるようです。親会社がクラウドに移行したことで、関連企業もそれに追従する動きも見られますね。
──最近のクラウド移行の背景には、世界的なシェアを誇るオンプレミスサーバーの仮想化ソフトウェアの価格高騰も大きく関与していると聞いています。
富士ソフト吉岡:ライセンス価格が最大30倍に膨れ上がるという事態が発生しています。この影響を受けたお客様から「どうにかサーバー費用を抑えたい」という相談が多数寄せられている状況です。富士ソフトでは、こうした喫緊の課題をお持ちのお客様に対して「同一のソフトウェアを使い続ける」「他のオンプレミス製品に移行する」「クラウドに移行する」という3つの選択肢を提示しています。最近は、「この機会にクラウドを選択しよう」という傾向が強くなっていることを感じます。
──クラウド移行を検討する企業は、主にどのようなニーズを抱えていますか。
富士ソフト安斎:多くのお客様の要望は、やはり「既存の環境をそのままクラウドに移行したい」というもの。その他にも、総務省のレポート(*)によれば、クラウドが活用されている用途で最も多いのは、ファイル保管やデータ共有なのだそうです。ここから、情報やデータを蓄え活用したいというニーズがあることも読み取れます。
──既存の環境をそのままクラウドに移行するのは容易なのでしょうか。
富士ソフト安斎:移行がスムーズに運ぶものもありますが、ときには断念せざるを得ないものも出てきます。ただ、その可否を見極めること、そのままの移行が困難な場合の代案を考えることが、私たち専門家の仕事でもあります。
──クラウド移行に関する課題や懸念は、セキュリティ以外にはどんなものが考えられますか。
富士ソフト安斎:最大の課題は、パフォーマンスの問題です。オンプレミスサーバーでは職人的な技術による個別のチューニングが行われていて、こうした従来の環境をクラウドで忠実に再現できない可能性があります。この点を懸念する企業は少なくありません。物理的な距離の問題もあります。オンプレミス環境ではサーバーとストレージが物理的に近接しているため、低遅延で通信できます。しかしクラウド環境では物理的な距離が離れている場合があり、これがパフォーマンスに影響を与えることがあります。
富士ソフト吉岡:これらの課題を解決するために、富士ソフトでは綿密なアセスメントを行い、お客様と協力して最適なクラウド移行プランを策定しています。最終的にクラウド移行が難しいと判断した場合には、クラウドとオンプレミスのハイブリッド構成を提案することもあります。一度にすべてを移行するのではなく、段階的に進めることも重要です。まずはノンミッションクリティカルなシステムから移行を始め、徐々に範囲を広げることで、リスクを最小限に抑えつつ効果を最大化できます。
*総務省「令和5年 通信利用動向調査報告書(企業編)」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/pdf/HR202200_002.pdf
「ITトランスフォーメーションパッケージ for MCP 富士ソフトエディション」とは
──富士ソフトとAWS ジャパン社の取り組みである、「ITトランスフォーメーションパッケージ for MCP 富士ソフトエディション」の概要を教えてください。
AWS ジャパン富松:これまでAWS ジャパンでは「Migration Acceleration Program (MAP)」という、グローバルで開発された、マイグレーション支援プログラムを提供してきました。しかし、日本の顧客はMAPではあまり支援できていない課題をお持ちである事がわかりました。それらの課題に対応するため、AWS ジャパン独自の取り組みとして「ITトランスフォーメーションパッケージ」を2021年にリリースしました。海外企業は自社でIT部門を保有しているケースが多いのに対して、国内では外部のSIerに頼る構造が主流です。そこで、国内の顧客が抱える「クラウド移行の計画策定方法がわからない」「SIerから出てくる設計書のレビューができない」「推進役の人材が不足している」などの課題に応えることを目指したサービスになります。
富士ソフト安斎:幾度かのバージョンアップを経て、2023年12月に富士ソフトの技術を融合した特別パッケージ版である「ITトランスフォーメーションパッケージ for MCP 富士ソフトエディション」が誕生しました。クラウド移行のサポートが一層強化され、日本のお客様に最適なソリューションを提供できるようになったのです。
AWS ジャパン富松:2024年6月時点で、AWSのITトランスフォーメーションパッケージ for MCPをリリースしているパートナー企業は国内に8社あります。中でも富士ソフト社は、インフラとアプリの両面に強みをお持ちです。国内の企業がクラウド移行をスムーズに進められるよう、多角的なサポートを提供してくれています。
AWS ジャパン社が評価する、富士ソフトの堅牢な開発力
──AWS ジャパン社では、富士ソフトのどのような点が魅力だと考えていますか。
AWS ジャパン富松:富士ソフト社の魅力は、前述の通り、インフラとアプリの双方に高い対応力を持っている点です。多くのパートナー企業はどちらか一方に特化していることが多いのですが、富士ソフト社は両方に対応できる数少ないパートナーだと感じています。これにより、評価、移行中、移行完了後の運用・保守まで、ワンストップでサービスを提供することができます。
当社が顧客にアセスメントを実施して具体的なオポチュニティが見えてきた段階で、富士ソフト社に顧客を紹介して、一緒に構築を進めることがあります。反対に、富士ソフト社が顧客との信頼関係をすでに築いている場合、顧客の生の声を確認しながら当社と技術的に連携して進めていくケースも多いですね。
──富士ソフトの強みは、どこにあるのでしょうか。
富士ソフト安斎:当社が自負している強みは、3つに分類できます。まずは「運用・保守に対するサポート力」。当社では「OpsPower RUKIA(オプスパワールキア)」という24時間365日対応のクラウド保守サービスを展開しています。とりわけクラウドの保守には独自のアラートに対応するための高度な知見が必要で、初めて使用するお客様にとっては障壁となることが多いのです。競合他社には存在しないメニューで、お客様からご好評をいただいています。
次に「セキュリティ対策」。当社では、2024年6月に「FujiFastener(フジファスナー)」というセキュリティサービスを提供開始しました。このサービスは、セキュリティ対象の特定・防御・検知・対応・復旧の一連のフローをカバーします。AIを活用していますので、新しいウイルスにも対応できるよう学習可能で、既存のウイルスリストに存在しないアラートに対しても予防策を講じられるというメリットがあります。
最後は「内製化支援」。多くの企業がベンダーロックインに悩んでおり、自分たちのリソースを正しく把握できていないケースが散見されます。当社ではクラウド移行をきっかけに内製化支援を行い、CCoE(クラウドセンターオブエクセレンス)の立ち上げ・ガイドラインの作成・教育などを包括的に支援しています。実際にベンダーロックインの状況を解消するために、既存ベンダーとの交渉を当社が代理で実施することもあります。サーバー一覧の取得や実機の確認など、地道な作業が求められますが、これを通じてシステム全体の透明性を確保し、移行の提案を行います。また、データセンターに足を運んで確認することもあります。
──クラウド移行の実績について教えてください。
富士ソフト安斎:製造業のお客様では、従来オンプレミスが主流でした。とくに保守的な傾向が強い企業では、クラウドに対する抵抗感があるように見えました。ところが最近ではクラウド移行の動きが加速しています。
製造業以外にも、以下のような事例があります。
- 導入背景:多数のシステムが複雑に連携し、保守・運用が大きな負担に
- 導入成果:運用負荷業務が大幅に低減し、システムの改善に注力できるように
- 導入背景:事業ごとにサイロ化したシステムを全体最適化した基盤に作り替える
- 導入成果:従来のシステムに比べてTCO(総保有コスト)が約40%削減できる見込みに
AWSクラウドへの移行によって見える未来
──AWSクラウドに関心がある企業にメッセージをお願いします。
富士ソフト安斎:「AWSクラウドに関心はあるが、コストがかかるだろう」と危惧する企業が多いですが、AWS社が独自に用意している試算ツールを活用すれば人件費を含むすべての経費を正確に算出することができます。CO2削減量の試算レポートも作成することもできるので、企業の経営層に対して「企業イメージの向上に直結する」といった視点から提案する際にも、具体的な数値を用いながらプレゼンのお手伝いができます。
AWS ジャパン富松:企業におけるクラウド化への継続的な取り組みを表現する言葉として、AWSが提唱している「クラウドジャーニー」というものがあります。これは、オンプレミスを中心とした既存のシステムを単純にクラウドに置き換えるばかりでなく、その後も綿密な計画と段階的なアプローチによって継続してクラウド化を整備し続ける必要があることを示すものです。一概に「クラウド=価格が高い」というイメージを持つのは早計で、長い目で見ればコストを大きく削減することができますので、ぜひ積極的にご検討ください。
──今後、お互いに期待することはありますか。
AWS ジャパン富松:オンプレミスからクラウドへの転換そのものは、「クラウドジャーニー」のロードマップでいうところの最初の通過点でしかありません。富士ソフト社は、そんな旅の真っ只中にある顧客を一緒にサポートし、ニーズを拾い上げていくための大切なパートナーです。
事実、富士ソフト社は昨今、生成AI開発のPoCを提案する取り組みも実践しています。多彩なサービスを通して顧客にマネージドサービスを使用した際の成功体験を提供し続けてもらうと、クラウドのネイティブ化にも障壁がなくなるのではないかと期待しています。
富士ソフト安斎:新しい提案ができるという意味では、毎月のように最新鋭のマネージドサービスをリリースしてくれるAWSに感謝しています。機能改善の必要がある際に当社よりフィードバックを行っても、常に誠実に対応してもらえるので助かっています。今後も相互の連携を深めながら、お客様が真に求めるクラウド環境を実現していきましょう。