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2025年2月18日

最新のAIトレンド!RAGが拓く可能性

RAG(Retrieval-AugmentedGeneration、検索拡張生成)は、外部の検索情報と生成AIの組み合わせによって、より高度な回答生成を実現する技術です。この技術により、生成AIは未学習のデータベースや社内文書などからでも適切な回答を生成できるようになります。RAGの一つの大きな特長は、大規模言語モデル(LLM)に外部の情報を取り入れ、情報の正確性と文脈の理解を向上させる点にあります。具体的には、外部の検索情報を通じて得られた結果をユーザーからの質問と組み合わせ、LLMに入力することで生成AIの「ハルシネーション」を抑制し、より正確で信頼性の高い回答を行うことが可能です。本記事では、RAGの仕組みをはじめ、特徴や課題、将来性などを解説していきます。

「RAG」を簡単に説明!
  • 外部から取得した情報を用いて、生成AIモデルの精度と信頼性を向上させる技術
  • 大規模言語モデルによる文章生成に外部情報の検索を組み合わせることで、回答の精度を向上させられることが特長
  • 社内規定や業務マニュアルなどのクローズドな情報も利用できるため、ビジネスシーンでの活用が期待されている
登場社員のプロフィール
  • 三塚 正文
    技術管理統括部先端技術支援部 部長

    1996年新卒で富士ソフトに入社後、業務アプリケーションの開発を手がける。その後オープン系システムの開発や、Microsoftのグループウェアの導入支援を手がけ、2012年から調査研究部隊に配属。現在は技術管理統括部先端技術支援部 部長として技術戦略​である「DX+AIS-CRM+SD+(5)G2」のAI、IoT、Cloud、Robotics、Mobileの調査研究と全社の戦略推進を牽引している。

RAGとは何か

RAGは、外部から取得した情報を用いて、生成AIモデルの精度と信頼性を向上させる技術です。大規模言語モデルによる文章生成に外部情報の検索を組み合わせることで、回答の精度を向上させられることが特長です。

RAGの仕組みと技術的特徴

RAGによる回答のプロセスは、検索フェーズと生成フェーズの2つから成り立っています。まず、検索フェーズではユーザーの質問に関連する情報をデータベースや外部文書から効率的に検索します。このフェーズでは、検索モデルが重要な役割を果たし、的確な情報を抽出します。そして生成フェーズでは、検索フェーズで得られた情報を元に生成AIが回答を生成します。この際、生成モデルが検索結果を適宜解釈し、文脈に応じた適切な文章を構築します。これにより、最新の情報や詳細な知識を反映した応答が可能となります。また、RAGは、社内規定や業務マニュアルなどを取り込むことで、クローズドな情報も利用できるため、ビジネスシーンでの活用が期待されています。

RAG発展の背景

RAGの技術的基盤は情報検索(IR)や自然言語処理(NLP)の進化と共に発展してきました。過去の情報検索システムは、単純なキーワードマッチングに基づくものでしたが、AI技術の進歩により、文脈を考慮した複雑な検索が可能となりました。これがRAGの前身と言える概念です。NVIDIA社やOpenAI社などの企業が主導する形で、RAGは2020年代にかけて技術的に洗練され、実用化が進んでいます。この技術は現在も進化を続けており、生成AIの新たな可能性を拓く技術として注目されています。

RAGのメリット

応答の精度と信頼性向上

RAGを活用することで、生成AIの精度と信頼性は格段に向上します。例えば、特定業界向けにRAGを適用したカスタムモデルを使用することで、専門的なドメイン知識を持った応答が期待できます。特に、検索フェーズで行われる正確な情報のフィルタリングにより、生成される応答に対する根拠が明確になり、生成AIが従来抱えていた誤情報生成(ハルシネーション)の抑制に貢献し、情報の信頼性が飛躍的に向上します。

これは、一般的な生成AIでは容易には実現できない高度な応答品質を提供できるため、多くの企業がRAGの導入を検討するきっかけとなっています。

ビジネスシーンでの活用メリット

RAGは多様なビジネスシーンで活用できます。例えば、社内問い合わせへの対応やカスタマーサポートにおいては、リアルタイムで質問に対し正確な回答を提供できることで、業務効率化が図れます。また、コンテンツ作成やデータ分析においては、情報収集と作成を効率化することが可能になります。企業のナレッジマネジメントを強化する一環として、社内規定や業務マニュアルといったクローズド情報を取得し活用することもできます。

RAGにおける情報セキュリティの懸念

RAGは、企業が持つクローズドなデータや情報を活用できる点で非常に魅力的です。しかし、情報セキュリティの面ではいくつかの懸念があります。特に、社内データへのアクセスを許容するため、データ漏洩のリスクやプライバシー侵害の危険は大きな懸念事項です。また、外部からの不正アクセスやサイバー攻撃に対する防御も重要で、「Microsoft Azure」や「AWS」などのセキュアなインフラが一役買う場面も増えてきており、オンプレミスなどのローカル環境への適用も期待されています。

研究と開発の最前線から見たRAGの未来

研究開発の最前線において、RAGの進化は生成AI の活用範囲を広げる要として位置付けられています。例えば、最新のリサーチによってRAGの検索精度が大幅に向上し、ますます多面的なデータに対応できるようになっています。これにより、RAGは学術研究や政府機関におけるデータ解析にも役立ち、より広範な応用が期待されています。したがって、今後RAGは生成AI技術の中核を担う存在として、情報検索と生成の融合がさらに進むことで、生成AIの可能性を一層引き出す役割を果たすでしょう。

※記載の会社名、製品名は各社の商標または登録商標です。