これまで吉田製作所では情報共有基盤として、文書管理には「Microsoft SharePoint」、グループウエアには「同Exchange」を活用してきました。いずれもオンプレミスの環境に構築したシステムです。
同社のIT化・デジタル化を推進しているシステム管理推進室では、これらのシステムに大きく2つの課題があると考えていました。1つは運用管理の負荷が大きいことです。サーバー機やOSなどのシステム基盤に対する日常的な運用保守に加えて、ソフトウエアのバージョンアップに関する作業が大きな負担となっていました。
システム管理推進室の大塚慎仁氏は「OSやアプリケーションのメジャーバージョンアップの際には、システムをリプレースするのと同じくらいの手間がかかっていました」と語ります。旧バージョンと互換性がないために、システムを改修せざるを得ないケースもありました。例えば、SharePointで管理する文書のフォームを作成するためにXMLオーサリングツールである「Microsoft InfoPath」を活用していましたが、「Office 2016」へのバージョンアップでは、このツールが廃止されてしまいました。旧システムを使っていた約10年の間に、このような経験が2~3回あったといいます。
もう1つは、社外から文書を閲覧する環境を整備することが難しいことです。VPN(仮想閉域網)を活用して社内のサーバーへアクセスすることは可能でしたが、PCを起動してVPN経由でサーバーに接続するという手間がかかる上に、必要な時に即座に文書が閲覧できないからです。システム管理推進室の舘野雅也氏は「全社員が必要な時に、いつでもどこでも簡単に情報を閲覧できるような環境が企業の競争力につながると考えていました」と語ります。
システム管理推進室では、これらの課題を解決するためにシステムを刷新することを決断。2016年から新システムの検討を開始しました。当初はSaaS版のグループウエアシステムを採用することを検討しましたが、要件に見合った製品が見つかりませんでした。というのも、同社では業務の生産性と品質の向上を目的として、国際標準規格である「ISO 9001」に準拠した文書管理を要件に掲げたからです。
さらに、将来はワークフローや経費精算をはじめとして、社内の情報共有・流通基盤としても活用できるように、開発環境を備えていた方がよいと考えていました。ISOに準拠した文書管理のパッケージソフトをベースに独自にシステムを作り込むという選択肢もありましたが、開発コストが膨大になるので早々に候補から外れました。
グループウエアや文書管理にとどまらず、対象となるソリューションの範囲を広げて情報を収集する中で出会ったのがNTTデータ イントラマートが開発している「intra-mart」でした。
intra-martは、BPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)や文書管理、ワークフロー、グループウエアなどの基本機能を統合したシステム基盤です。これらの機能を活用したウェブアプリケーションを開発することが可能なプラットフォームです。ビジネスの即戦力となる業務アプリケーションも各種取りそろえており、その中にはISOに準拠した文書管理も含まれています。スマートフォンやタブレット端末にも対応しているので、クラウド上で稼働させれば、外出先で即座に情報を閲覧することができます。システムを構築するパートナーには、富士ソフトを選定しました。技術力や実績を高く評価したためです。intra-martの認定パートナーであることに加えて、クラウド基盤として採用するアマゾン ウェブ サービス(AWS)の導入実績が豊富である点、サポート体制が充実している点を評価しました。
吉田製作所にとって、業務システムをクラウド上で稼働させるのは初めての経験です。それだけに、AWSに対する経験や実績が選定の大きなポイントになりました。システム管理推進室の富田哲平氏は「富士ソフトならば、システム基盤からアプリケーションまでの全ての面倒をワンストップで見ていただけます。将来のシステム拡張を含めて、安心してお任せできると考えました」と評します。
富士ソフトの支援の下で、2018年4月からシステムの開発プロジェクトがスタート。大きなトラブルもなく、当初の計画通りに同年8月から稼働を開始しました。スマホやタブレット端末で情報を閲覧できる環境を実現することができました。現在は文書管理に加えて、一部のワークフローも稼働し始めています。
新システムは、AWSの仮想サーバーである「AWS EC2」の上でintra-martを稼働させ、データベースにはクラウドサービスの「AWS RDS for Oracle」を活用しています。既存の社内システムで利用している「Active Directory」とアカウントを統合してシングルサインオンを実現するために、富士ソフトのクラウド認証基盤サービス「ADFS on Azure」とも連携させています。
富士ソフトは、システムの運用管理も支援しています。吉田製作所では、従来のシステムに比べて、運用管理の負担が劇的に削減できたと評価しています。これまでは日常的にシステムを監視していましたが、今はシステム基盤の保守にほとんど手間がかからなくなったからです。舘野氏は「仮想マシンやOSの保守を考えなくてよいので、まるでintra-martのマネージドサービスを利用しているような感覚です」と評します。
ワークフローの稼働によって承認のスピードも上がりました。紙の文書のやり取りが電子化されたためです。例えば、地方拠点から本社への承認申請に、紙の郵送などで従来は1週間ほどを要するケースもありましたが、今では1~2日で完了するようになりました。
吉田製作所では、今後もintra-martの機能を活用し、ワークフローの拡張によるペーパーレス化や、基幹系システムと連携したダッシュボードの構築などを計画しています。大塚氏は「富士ソフトとの協業によって、現場から経営層までが必要な時に必要な情報をすぐに見られるような環境を整備したいと考えています」と展望を語ります。
直感的な操作感、様々な体格の人にフィットするチェア、清潔さを保つためにシリコンカバーで覆うなど、細部にこだわり設計。
シンプルな造形と、豊富なカラーバリエーションにより、自分らしさを表現できる空間で、患者さんと心が通じ合うケアを。