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コラム

COLUMN.8ローコード開発とは?DX推進に不可欠な開発手法のメリット・デメリットを解説

ローコード開発とは?DX推進に不可欠な開発手法のメリット・デメリットを解説

企業のDX推進において、従来のシステム開発の課題である長期間・高コスト・専門知識の必要性を解決する手法として「ローコード開発」が注目を集めています。この手法により、IT専門知識が限られた現場担当者でも迅速かつ効率的にシステム開発が可能となることから、内製開発のニーズも高まっています。
本記事では、ローコード開発の基本概念から具体的なメリット・デメリット、従来型開発やノーコード開発との違い、導入時の注意点まで、DX推進のために知っておくべき重要なポイントを詳しく解説します。

Writer Profile

阿部良平

富士ソフト株式会社
ソリューション事業本部 営業統括部
ソリューション営業部 第4営業グループ

2014年 富士ソフト株式会社入社。お客様付きのアカウント営業として活動したのち、2024年よりintra-martのソリューション営業担当としてお客様へご提案を実施。

ローコード開発の基本概念と仕組み

ローコード開発とは、プログラミングするためのソースコードをほとんど必要とせずにアプリケーションを開発できる手法です。最小限のコード記述と、ドラッグ&ドロップやクリック操作などの視覚的な操作によってシステムの機能を組み立てることができます。
この開発手法の核となるのがローコードプラットフォームです。プラットフォーム上では、あらかじめ用意された機能部品やテンプレートを組み合わせることで、複雑なシステムロジックも容易に構築できます。

従来型開発との根本的な違い

従来のスクラッチ開発では、要件定義から設計、プログラミング、テストまでの全工程を専門技術者が担当する必要がありました。一方、ローコード開発では、業務知識を持つ現場担当者が直接開発に参加できる点が大きな違いです。
従来型開発では数か月から数年かかるシステム構築が、ローコード開発では数週間から数か月で完了できます。また、プログラミング言語の習得がほとんど不要なため、IT部門以外の担当者でもシステム開発に携わることが可能です。
開発プロセスも大幅に簡略化され、要件の変更や修正が発生した場合でも、GUI操作によって迅速に対応できます。

ノーコード開発との比較

ローコード開発と混同されやすいのがノーコード開発です。ノーコード開発は、プログラミング不要で完全にGUI操作のみでアプリケーションを構築する手法です。
ローコード開発では、複雑な処理や独自の機能実装が必要な場合に限定的なコード記述が可能です。一方、ノーコード開発では、プラットフォームが提供する機能の範囲内でのみ開発が行えます。
主な比較ポイントを以下に整理しました。

比較項目 ローコード開発 ノーコード開発
コード記述 最小限のコード記述可能 完全にコード記述不要
カスタマイズ性 中程度 制限あり
学習コスト 低~中程度 最小限
適用範囲 業務アプリケーション全般 定型業務中心

ローコード開発がDX推進に果たす役割

企業のDX推進において、ローコード開発は重要な役割を担っています。

デジタル変革における課題解決

多くの企業がDX推進で直面する課題として、開発コストの高騰、開発期間の長期化、IT人材の不足があります。ローコード開発は、これらの課題を同時に解決する効果的な手法として注目されています。

従来のシステム開発では、要件定義から稼働まで数カ月から数年の期間が必要でしたが、ローコード開発では数週間~数カ月での完了が可能なケースもあります。この短縮により、市場変化への迅速な対応が可能となります。

IT人材不足対策としての有効性

経済産業省によれば、2018年時点で約17万人不足しているIT人材が、2025年には約45万人もの不足へ拡大すると推測されています。この状況下で、ローコード開発は貴重な人材不足対策となります。
まず、ローコード開発により、従来はIT専門部門に集中していた開発業務を現場部門に分散できます。業務知識を持つ現場担当者が直接開発に参加することで、IT部門の負荷軽減と同時に、より実務に適したシステム構築が実現できるのです。
さらに、ローコード開発のスキル習得は比較的容易であるため、既存社員のスキルアップによる内製化推進も期待できます。これにより、外部ベンダーへの依存度を下げ、システム開発における自社のコントロール力を高めることが可能です。

業務効率化への貢献度

ローコード開発は、現場担当者が開発に参加し、実際の業務フローに即したシステム設計を行えるため、業務プロセスの改善と効率化に直接的な効果をもたらします。
従来の開発手法では、業務担当者とIT部門の間でのコミュニケーションギャップが発生しやすく、完成したシステムが実際の業務に適合しない場合がありましたが、ローコード開発では、このギャップを大幅に削減できます。
また、システムの修正や機能追加が容易なため、業務の変化に応じた継続的な改善が可能です。これにより、常に最適化された業務プロセスを維持し、継続的な効率化を実現できます。

ローコード開発のメリット

ローコード開発には、従来のシステム開発手法と比較して多くの利点があります。コスト削減から開発スピードの向上、現場主導のシステム構築まで、企業のIT戦略に大きな変革をもたらす可能性を持っています。

開発コスト削減と短期間開発の実現

ローコード開発の最大のメリットの一つは、大幅なコスト削減効果です。従来のスクラッチ開発と比較して、開発工数を大きく削減できるため、施設費を含む開発コストの削減にもつながります。
また、短期間開発の実現により、圧縮できた時間を改修に当てることができます。これにより、顧客満足度や従業員満足度の向上にもつながります。早期にシステムを稼働させることで、業務効率化による効果を早期に享受でき、投資対効果の向上が期待できます。

現場主導の柔軟なシステム構築

ローコード開発では、実際に業務を担当する現場スタッフが直接開発に参加できるため、真に業務に適したシステムを構築できます。IT部門への要求仕様書作成や長期間の調整プロセスが不要となり、開発効率が飛躍的に向上します。
業務の変更や改善要求が発生した場合も、現場担当者が直接システムを修正できるため、迅速な対応が可能です。従来の開発手法では数週間から数か月を要した機能追加や修正が、数日から数週間で完了できます。

保守・運用負担の軽減効果

ローコードプラットフォームでは、インフラの管理やセキュリティ対策、バックアップなどの基盤機能がプラットフォーム側で提供されます。これにより、自社でのシステム保守・運用負担を大幅に軽減できます。
さらに、標準化された開発手法により、システムの構造が理解しやすくなるため、担当者の変更時の引き継ぎコストも削減できます。これは、長期的なシステム運用において重要な利点となります。

ローコード開発のデメリット

ローコード開発には多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。これらを理解せずに導入すると、期待した効果を得られない場合があるため、事前の検討が重要です。

カスタマイズ性の限界

ローコード開発では、プラットフォームが提供する機能の範囲内での開発となるため、高度にカスタマイズされた機能の実装には限界があります。特に、業界固有の特殊な処理や、複雑なアルゴリズムを必要とする機能の実装は困難な場合があります。
プラットフォームの標準機能では対応できない要件がある場合、従来型の開発手法との併用や、別のソリューション検討が必要になります。これにより、当初想定していた開発効率化の効果が得られない可能性があります。
また、プラットフォーム特有の制約により、既存システムとの連携や、特定の技術要件への対応が困難な場合もあります。導入前には、現在の要件だけでなく、将来的な拡張性も考慮した検討が必要です。

ベンダー依存リスク

ローコード開発では、特定のプラットフォームベンダーに依存することになるため、ベンダーロックインのリスクがあります。プラットフォームの仕様変更やサービス終了、価格改定などにより、システム運用に大きな影響を受ける可能性があります。
また、他のプラットフォームへの移行は技術的に困難な場合が多く、実質的にベンダー変更が不可能になるケースもあります。長期的なシステム運用を考慮すると、ベンダーの事業継続性やプラットフォームの将来性について、十分な検討が必要です。

ローコード開発の導入検討ポイント

ローコード開発の導入を成功させるためには、自社の課題や要件を正確に把握し、適切なプラットフォーム選定と体制構築を行うことが重要です。闇雲に導入するのではなく、戦略的なアプローチが必要となります。

プラットフォーム選定基準

ローコードプラットフォームの選定では、自社の技術環境、セキュリティ要件、コスト制約などを総合的に評価する必要があります。単純に機能の豊富さだけで判断するのではなく、長期的な観点での選定が重要です。
セキュリティ対策については、特に重要な検討項目です。データの暗号化、アクセス制御、監査ログの取得など、自社のセキュリティポリシーに適合する機能が提供されているかを確認する必要があります。金融機関や医療機関など、高度なセキュリティが求められる業界では、プラットフォームの認証取得状況も重要な判断材料となります。
また、既存システムとの連携能力も重要な要素です。API提供状況、データベース接続機能、クラウドサービス連携など、自社のIT環境との親和性を詳細に検証する必要があります。

成功のための体制整備

ローコード開発の導入成功には、適切な体制整備が不可欠です。
現場部門からは業務知識を持つキーパーソンを開発チームに参画させ、IT部門からは技術的なサポートとガバナンスを提供する体制を構築する必要があります。
また、プラットフォームの操作スキル習得のための教育体制も重要です。集合研修、eラーニング、実践的なワークショップなど、多様な学習機会を提供し、組織全体のスキルレベル向上を図る必要があります。継続的なスキルアップ支援により、より高度なシステム開発が可能となり、ローコード開発の効果を最大化できます。

まとめ

ローコード開発は、企業のDX推進において有効な開発手法であり、従来のシステム開発における課題を解決する可能性を持っています。視覚的で直感的な操作により、プログラミング知識が限られた現場担当者でもシステム開発に参加できる点が最大の特徴です。
開発コストの削減、短期間での開発実現、現場主導の柔軟なシステム構築など、多くのメリットがある一方で、カスタマイズ性の限界や大規模システムへの適用課題、ベンダー依存リスクなどのデメリットも存在します。これらの特性を十分に理解した上で、自社の要件に適した適用範囲の見極めが重要となります。
導入前の十分な検討と計画により、ローコード開発の効果を最大限に活用し、企業のデジタル変革を加速させることができるでしょう。

富士ソフトはNTTデータ イントラマート社が提供する「intra-mart」を用いて、ローコード開発導入によるお客様DX推進をご支援しております。
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富士ソフトが提供するintra-martソリューション

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ローコード開発機能を備え、迅速なシステム構築が可能で、業務プロセスのデジタル化・自動化を実現します。

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