阿部良平
富士ソフト株式会社
ソリューション事業本部 営業統括部
ソリューション営業部 第4営業グループ
2014年 富士ソフト株式会社入社。お客様付きのアカウント営業として活動したのち、2024年よりintra-martのソリューション営業担当としてお客様へご提案を実施。
基幹システムとは、企業の事業運営に不可欠な中核業務を処理する情報システムの総称です。販売管理、生産管理、在庫管理、会計管理などの基幹業務を統合的に管理し、企業全体の業務プロセスを支える重要な役割を担っています。
基幹システムは企業の根幹となる業務を網羅的にカバーするため、その機能範囲は非常に広範囲にわたります。たとえば、販売管理システムでは受注から売上計上、債権管理までの一連の販売プロセスを管理できます。生産管理システムでは製造計画の立案から原材料調達、生産実績の把握までを一元化し、在庫管理システムでは商品の入出庫管理や在庫最適化を可能にします。
また、会計管理システムは日々の経費管理、月次・年次決算、税務申告など、企業の財務管理に関わるすべてのデータを一元管理する機能を持っています。これにより、経理部門の作業負荷を軽減し、財務報告の精度を向上させることができます。
基幹システムの導入により、企業は業務の標準化と効率化を同時に実現できます。手作業による転記ミスの削減や処理時間の短縮により、従業員はより付加価値の高い業務に集中することが可能になります。また、リアルタイムでの情報共有により、経営判断に必要なデータを迅速に取得できるようになります。
特に重要なのは、基幹システムによるデータ一元管理により、企業全体の業務プロセスが把握しやすくなり、ボトルネックの特定や改善施策の立案が容易になることです。これにより、継続的な業務改善とコスト削減を実現し、競争力の向上につなげることができます。
業務システムとは、特定の業務や部門に特化して開発・導入される情報システムです。基幹システムが企業全体を支える包括的なシステムであるのに対し、業務システムは個別の業務プロセスの効率化や専門性の向上を目的として設計されています。
業務システムは多岐にわたる分野で活用されており、それぞれが特定の業務要件に最適化されています。人事管理システムでは採用管理、勤怠管理、給与計算、人事評価などの人事業務を効率化し、マーケティングシステムでは顧客分析、キャンペーン管理、効果測定など、それぞれの業務に必要な機能に特化して設計されています。
他にも、プロジェクト管理システムでは進捗管理やリソース配分の最適化を目的としており、品質管理システムでは製品品質の維持向上を目指して設計されています。
業務システムの導入によって、各部門の専門的なニーズに対応しながら、従来の業務プロセスを大幅に改善することが可能となります。たとえば、営業部門では顧客情報の一元管理により営業活動の効率が向上し、人事部門では採用から退職までの一連の業務が自動化されることで、負担の軽減と正確性の向上が期待できます。
特に注目すべきは、業務システムが部門固有の業務ノウハウを蓄積し、標準化することで、属人的な業務を組織的な業務へと転換できる点です。これにより、人材の異動や退職による業務継続リスクを軽減し、組織としての業務品質の安定化を図ることができます。
基幹システムと業務システムは、それぞれ異なる目的と特徴を持つため、適切な選択のためには両者の違いを明確に理解することが重要です。ここでは、両システムの主要な相違点について詳しく解説します。
基幹システムは企業全体の業務プロセスを横断的にカバーするのに対し、業務システムは特定の部門や業務領域に焦点を当てています。基幹システムは販売から生産、会計まで企業の中核業務すべてを統合的に管理し、システム停止時には全社業務に甚大な影響を与えます。
一方、業務システムは人事、営業、マーケティングなど個別の部門業務を効率化することが主目的で、システム障害が発生しても他部門への直接的な影響は限定的です。この違いにより、両システムに求められる可用性や信頼性のレベルも大きく異なります。
基幹システムは企業内のマスターデータを一元管理し、各部門システムとの連携においてデータの整合性と統一性を保つ役割を担います。ERPシステムのような統合型基幹システムでは、すべての業務データが一つのデータベースで管理され、リアルタイムでの情報共有が可能です。
業務システムは部門固有のデータを詳細に管理するという点で、基幹システムとは異なっています。
比較項目 | 基幹システム | 業務システム |
---|---|---|
対象範囲 | 企業全体の中核業務 | 特定部門・業務 |
停止時影響 | 全社業務停止リスク | 該当部門のみ影響 |
カスタマイズ性 | 制限的 | 高い柔軟性 |
企業のシステム選定においては、業界特性の理解が重要です。ただし、同じ業界であっても、ビジネスモデルや運用体制は企業ごとに異なるため、目的や要件を整理し自社の状況に応じて柔軟に考えることが大切です。ここでは、代表的な業界別に一般的な傾向を紹介します。
製造業では、生産管理システムが基幹システムの中心的な役割を果たすことが多く、製造計画から品質管理までを一貫して支える体制が重視されます。
業務システムとしては、設備保全管理システムや品質管理システム、研究開発支援システムなどが導入されるケースが多く見られます。また、IoTデバイスとの連携により、リアルタイムでの生産状況把握と予防保全が可能になるため、選定の際にデバイス連携可否も確認しておくとよいでしょう。
小売・流通業では販売管理システムと在庫管理システムが基幹システムの中核となり、多店舗展開や複数チャネルへの対応が求められる傾向にあります。特にオムニチャネル戦略では、店舗とECサイトの在庫統合管理や顧客情報の一元化は、競争優位性の構築に寄与すると考えられています。
業務システムとしては、POSシステム、CRMシステム、マーケティングオートメーションシステムを活用すれば、顧客体験の向上と売上最大化が期待できます。
サービス業では人的リソースの管理と顧客満足度の向上が重要な課題となります。そのため、基幹システムは顧客管理、売上管理、財務管理などの機能が求められるケースが多いといえます。
サービス品質の維持・向上を目的として、予約管理や顧客満足度調査、従業員教育などを支援する業務システムが活用されることも少なくありません。これらのシステムにより、サービスの標準化と個別最適化を両立し、顧客ロイヤルティの向上を図ることができます。
基幹システムや業務システムの選定は、企業の将来性を大きく左右します。適切なシステム選択のためには、技術的な要件だけでなく、経営戦略との整合性や投資対効果を総合的に評価する必要があります。
システム選定の第一歩は、現在の業務プロセスと課題を正確に把握し、将来の事業戦略と照らし合わせて必要な機能要件を明確化することです。単に現状の問題解決だけでなく、5年後、10年後の事業成長を見据えたシステム拡張性の確保が重要となります。
特に急成長を計画している企業では、ユーザー数の増加や業務量の拡大に対応できるスケーラビリティが必要です。また、新規事業展開や海外進出を予定している場合は、多言語対応や多通貨対応、現地の法規制への対応も考慮しなければなりません。
近年のクラウド化動向を踏まえ、オンプレミス、クラウド、ハイブリッド構成のメリット・デメリットを慎重に評価する必要があります。クラウドシステムは初期コストの削減と柔軟なスケーリングが可能ですが、データの保管場所やセキュリティレベルについて十分な検討が必要です。
特に機密性の高い情報を扱う企業では、データの暗号化、アクセス制御、監査ログの取得など、包括的なセキュリティ対策の実装が不可欠です。また、災害時の事業継続性確保のためのバックアップとリカバリ戦略も重要な検討事項となります。
システム投資は企業にとって大きな財務負担となるため、定量的な投資対効果の算定と定性的な効果の評価を組み合わせた総合的な判断が必要です。コスト削減効果、売上向上効果、リスク回避効果を具体的に数値化し、投資回収期間を明確にすることが重要です。
同時に、システム導入に伴うリスクの評価も欠かせません。移行時の業務停止リスク、データ移行エラーのリスク、ユーザー教育不足による生産性低下リスクなどを事前に特定し、適切な対策を講じることが大切です。
基幹システムと業務システムは、それぞれ異なる役割と特徴を持つ重要なシステムです。基幹システムは企業全体の中核業務を統合的に管理し、業務システムは特定部門の専門的なニーズに対応することで、企業の競争力向上に貢献してくれます。
適切なシステム選定のためには、自社の業界特性や事業戦略を踏まえ、統合性と専門性のバランスを慎重に検討することが重要です。また、将来の事業成長を見据えた拡張性の確保や、投資対効果の定量的評価を通じて、持続可能な戦略を構築することが成功の鍵となります。
本記事で解説した選定基準と業界別の考慮点を参考に、自社に最適なシステム構成を検討し、デジタル変革による競争優位性の確立を目指してください。
富士ソフトではお客様の適切なシステム選定をご支援するとともに、NTTデータ イントラマート社が提供する「intra-mart」を用いて、基幹系や業務系だけでなく、情報系のシステムも含めた共通基盤を構築することで、お客様のIT投資の効率化と業務プロセスの最適化・標準化をご支援しております。
NTTデータ イントラマート社の認定パートナーとして、専門技術者50名以上を擁するスペシャリスト集団がお客様の業種・業務に応じた最適な提案を行い、業務効率化・属人化の解消・DX基盤の構築を支援いたします。ぜひご相談ください。