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コラム

COLUMN.2-1【Part 1】SIerが語るローコード・ノーコードツールによる"内製化"の落とし穴とは

SIerが語るローコード・ノーコードツールによる内製化の落とし穴とは

「システム開発の内製化に着手したんだけど、うまくいかなくて…」

ある日富士ソフトに届いた一本のご相談。お客様の声は、疲弊しきっていました。

多くのローコード・ノーコードツールが市民権を獲得しだす昨今。各ツールを利用して、システム開発の内製化に取り組もうとするお客様も少なくありません。一方で、「思っていた内製化と違う…」と、逆に運用が複雑化してしまい、余計な業務が増えてしまったというケースもよく耳にします。

本ブログでは、ローコード・ノーコードツールによるシステム開発の内製化について、隠れた落とし穴とその回避方法を、内製化とはある意味真逆の存在であるSIerの視点から、忖度なく正直にお伝えしていきます。

Writer Profile

山田達哉

富士ソフト株式会社
ソリューション事業本部 情報ソリューション事業部
DXソリューション部 DX共通基盤グループ

2005年 富士ソフト株式会社入社。システム開発業務、エンドユーザ様への業務、システム提案など、多くのintra-martを活用したシステム導入プロジェクトのプロジェクトマネージャーを経験。

 著者 山田達也  

ローコード・ノーコードツールによるシステム開発内製化は失敗しがち?

世の中には多くの優れたローコード・ノーコード製品があり、皆さんの中にも「ローコード・ノーコードツールでシステム開発の内製化を進めよう!」と、社内稟議に熱が入っている人も多いのではないでしょうか。 あるいは、冒頭のお客様のように、すでに内製化に踏み込んだ人もいるかもしれません。

システム開発の内製化に成功すれば、工期を大幅に短縮できたり、コストも大きく削減できたりするメリットがあります。すべて外製の場合、ヒアリングを一から細かく受ける必要があり、また外注費用もかかるため、工数もコストも増大する可能性は否めません。

内製化が進めば、蓄積されたノウハウを共有することで、動作が似たアプリケーションなら簡単に量産できるようにもなります。結果的に事業の幅や効率は飛躍的にアップし、チーム力ひいては、企業力そのものが強化されていくでしょう。

…と、ここまでを聞いて、「よし、さっそくローコード・ノーコードツールを比較しよう!」と思った方は要注意です。そんなメリットばかりに目がいき、ローコードやノーコードツールを導入してシステム開発の内製化を試みたけど、「予想以上にうまくいっていない…」というのは、SIerとして非常によく耳にするお話です。

内製化がうまくいかない理由①そもそも標準部品に不足がある

なぜシステム開発の内製化はうまくいかないことが多いのでしょうか?その理由として、ひとつは『そもそも細かい要望に手が届く部品が実装されていない』ことが挙げられます。

冒頭のお客様も、同様の理由により内製化が進んでいませんでした。皆さんも経験があるかと思いますが、たとえば「稟議内容を別アプリケーションに連携したい」とか、「データベース内のデータを会社独自レイアウトのpdfに出力したい」など、ニッチだけど確実に自社にとって必要な要望、それも”後出し”のような形で出てくるものは少なからず存在します。

それを実現するための“かゆいところに手が届く”部品があるかどうかは、ローコード・ノーコードツールが会社に浸透するかどうかにおいて非常に重要です。しかし、多くのツールでは標準部品が限られているというデメリットがあります。そのため望んだ運用にならず、「思っていた内製化と違う…」となってしまうケースが多々あります。

内製化がうまくいかない理由②技術的な難しさ

「ないものは作ればいい」ということで、欲しい部品を実装しようとしても、高度な技術が要求されるモノに関しては、単純に技術力が足りていない場合もあります。特に、日々状況が移りゆく昨今では、アジャイル開発のような俊敏性も求められます。ひとえに技術力といっても、柔軟性やスピードをもった開発力を持たなくてはなりません。

あるいは、企業が陥りやすいパターンとして、ノウハウの共有方法が確立されておらず深みにハマるケースもあります。似たアプリケーションを作りたい場合に、技術力は足りていても、ノウハウがうまく共有できていないために、結局都度新規で作り直しているというケースは、実は少なくありません。

2つのうまくいかない理由を踏まえて、「やっぱり内製化は厳しそうだ…」と早々に諦めるのは間違いです。すべてアウトソーシングで丸投げするだけでは、当然コストが不用意に膨れてしまいます。内製化には内製化のメリットがあります。重要なのは、内製化と外製化を”使い分ける”ことです。

まずはツールをよく吟味し、必要な部品があるか、ない場合に自社で賄える技術力やノウハウはあるかを確認しましょう。

システムの要素には内製向きと外製向きがある

内製化成功のための技術力やノウハウが備わっていない場合にどうするかを解説する前に、システム開発の内製化自体について、もう少し掘り下げてみましょう。実は、システム構成要素には、内製化向きと外製化向きの2つが存在します。

システムの要素には内製向きと外製向きがある

内製向きの例

ユーザーに影響しやすいものは、内製化に向いているといえます。たとえば
・ユーザーが直接触る画面
・組織改編などにより頻繁に変更が見込まれる、承認経路などのワークフロー設定
などが該当します。

つまり、ユーザーからの要望をすばやく反映させる必要がある部分に関しては、ヒアリングをイチからしてじっくり時間をかけて丁寧に作りこむよりも、トライ&エラーのスタンスでスピーディに実装できる内製化が向いています。

外製向きの例

一方で、ユーザーにすぐには影響しないものは、外製向きです。たとえば
・システムの根幹となるジョブ
・他システムとの連携部品
などが挙げられます。

時間をゆっくりとかけられ、そのうえでセキュリティや障害耐性を強化したい部分、あるいはより高度な技術を要する部分は、外部に依頼するほうがトータルとしてのコストは抑えられる可能性があります。

以上の特性を理解して、頼る部分は頼る、自分たちで実装する部分は実装する、ハイブリッド型の内製化を進めることで、強固かつ俊敏性のあるシステム作りが可能となります。

「今自分たちがやっていることが本当に正しいか」の”判断の目”を外部に依頼する

ローコード・ノーコードツールに必要な部品が備わっていても、全体のレクチャーが必要なケースもあります。お客様からよく耳にするのは「今自分たちがやっていることが本当に正しいのかわからない」というお声です。

日々状況が激変するIT分野において、即決即断を下しながらただしく開発を進めるには、一定の経験値が必要です。内製向きの機能であっても、正しい道への導き手となる”判断の目”がなくてはなりません。

内製化を成功させるには、ハイブリッド型の内製化を進めつつ、ノウハウ=最終的な判断の目をもつパートナーが必要ということです。次回はその点を、もう少し掘り下げていきます。

ローコード・ノーコードの内製・外製の”判断の目”
導入事例集