地図なし(Mapless)ナビゲーションシステムExploreと物体検出アルゴリズムYOLO、深度センサによる位置特定の技術を組み合わせることにより、事前の地図準備を不要とし、コスト削減に繋がるシステムを検証
倉庫や工場に限らず、さまざまな場面で自律移動ロボットの導入が進んでいます。自律移動ロボットは、自己位置推定、地図生成、経路計画、障害物回避といった機能を備えたナビゲーションシステムにより、自律走行が可能です。現在、標準的な自律走行技術として主流なのはSLAM方式です。SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)は、走行する環境をリアルタイムでマッピングし、その地図を基にロボットを自律的に走行させる技術です。この方法は、長期間同じ空間にロボットを導入する場合に非常に有効です。
一方で、例えば建物内の年1回の点検や、特定の期間のみ警備ロボットを運用したい場合、事前の地図作成や準備が大きなコストとなります。このような課題を解決するために、地図なしナビゲーションシステムが注目されています。地図なしナビゲーションとは、事前に地図を作成することなく(走行しながら地図を作成することは許容)、リアルタイムで周囲の環境を認識しながら移動する方式です。この技術は、数か月や数年に一度しかロボットを走らせない環境や、常に変化する環境、事前に地図を準備できない環境での利用が期待されています。
このような背景を踏まえ、私たちは地図なしナビゲーションシステムの検証を行いました。
まず、地図なしナビゲーションシステムには基盤となるいくつかの手法があります。
①未知空間を地図を作成しながら自動走行する探索型のナビゲーションシステム(Explore)
② GPSやARマーカーなどの別の軸で位置情報を補完し、目的地まで従来通りに自律走行するシステム
③ 前方の物体を追跡する自動追従するシステム
今回、「建物内の設備確認」を想定した検証を行ったため、①探索型のナビゲーションシステム(Explore)を採用しました。
今回の検証では、「建物内の設備確認」を想定し、ROS2を用いたシステム構築を行い、二つのROSノードを開発しました。
・ROSノード1 : 探索型のナビゲーションシステム(Explore)によって、網羅的に空間を探索させる
・ROSノード2 : 点検を行う物体を発見し、物体の位置座標を記録する
ROSノード1は、githubに公開されているExploreパッケージを活用し、ROSノード2は、ノードにYOLOを組み込んで、物体検出を行い、ロボットの深度カメラから得られる物体の距離を、ROSのTFを軸に座標変換して位置座標を把握するという仕組みを1から開発しています。
また、このシステムを構築する上では、いくつかの課題がありましたが、それぞれを技術的に解決しております。
課題
解決方法
検出の精度
YOLOに対して検出物体を発見できるように再学習を行う。
発見物体の座標ずれ
ロボットは継続的に動くため、物体検出と座標把握を別々で動かすと、座標ずれを起きてしまうので、検出に用いる画像データとTFの時刻を同期させる。
同一物体の重複検出
座標による管理を行うことで、YOLOによる重複検出が起きても、同一物体か、別物体かを判断させることができる。
検証環境はシミュレーション環境「Gazebo」に構築し、その中に確認対象として椅子を配置しています。自律移動ロボットはExploreを用いて未知空間を探索しながら、椅子を発見するというタスクを遂行させました。椅子の発見はYOLOを用いて物体検出を行い、また、ロボットのカメラとしてRealsenseカメラを搭載し、カラー画像と深度画像の情報を組み合わせることで位置特定を行っています。
以下動画が、検証内容となります。
※今回構築したナビゲーションシステムでは、確認対象を発見した際に探索を一時停止し、設備確認作業等の別のタスクを挟むことも可能ですが、本検証では椅子を発見するまでのタスクを行っています。
本検証にて、探索型の地図なしナビゲーションとYOLOによる物体検出、深度画像を用いた位置特定の技術を組み合わせた検証を行い、今回構築した地図なしナビゲーションシステムが有用であることがわかりました。このナビゲーションシステムは、事前の地図準備を必要とせず、機能するため、地図作成・準備のコスト削減につながります。また、地図なしナビゲーションシステムには様々な手法があり、周辺環境や状況、目的によって最適な手法は異なります。したがって、私たちは今後も引き続き、様々な地図なしナビゲーション技術の調査研究を行って参ります。
また、富士ソフトでは、今回の調査研究以外にも、自律移動ロボットの様々な手法でのナビゲーションシステム、AIとの組み合わせなどに力を入れております。自律移動ロボットの開発については、ぜひ富士ソフトにご相談ください。
※本動画のすべての権利は富士ソフトに帰属しておりますので、無断複製・転載を禁止させていただきます。
ROSとROS2開発はぜひ、
富士ソフトにご用命ください!