Gen AI Leader合格への道#5:生成AIを活用する
本記事は、2025年5月14日(米国時間)に一般提供が開始されたGoogle CloudのGenerative AI Leader認定資格を取得するために必要となる知識を紹介するシリーズです。本連載は以下の内容に分かれています。本連載の目的や試験概要については「Gen AI Leader合格への道#1:試験概要と学習ロードマップ」を参照してください。
- 1. はじめに:生成AIを日常の業務へ
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2. あなたの強力なパートナー、Geminiとは
・Geminiアプリ:個人的な生産性を高めるためのチャットボット
・Google Workspace向けGemini:よく使うアプリでのAI統合
・Google Cloud向けGemini:Google CloudでのAIアシスタント -
3. 研究アシスタント、NotebookLMを活用しよう
・NotebookLMとは
・NotebookLMの始め方
・NotebookLMの機能
・NotebookLM活用のメリット - 4. 生成AIを使いこなすためのテクニック
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5. AI応答の精度を高める技術
・グラウンディング:AIの出力を検証可能な情報源に接続する
・RAG(Retrieval-Augmented Generation)とは - 6. まとめ:生成AIで切り拓く、新たな働き方と可能性
1. はじめに:生成AIを日常の業務へ
生成AIの進化は目覚ましく、私たちの働き方を根本から変えようとしています。日々のルーチンワークから創造的なプロジェクト、データ分析、そしてコード開発といった専門的なタスクまで、AIの活用範囲は広がり続けています
本記事では、Googleが提供する最先端の生成AIツール、特にGeminiとその関連サービス(Google Workspace向けGemini、Google Cloud向けGemini、NotebookLMなど)に焦点を当てます。これらのツールを使いこなすことで、「生成AIを日常の業務にどう統合できるか?」「プロンプトを改善するためのテクニックは?」「開発の専門知識なしで使えるGoogleの生成AI製品は?」といった疑問に答えながら、みなさまの業務効率を飛躍的に向上させ、新しい働き方を実現する方法を具体的にご紹介します。生成AIの力を最大限に引き出し、業務の可能性を広げましょう
2. あなたの強力なパートナー、Geminiとは

生成AIは、私たちの仕事のやり方を根本から変える可能性を秘めています。Googleが提供するGeminiとその関連ツールは、まさに強力なパートナーとなり得ます。これらのツールを日々のワークフローに統合することで、業務効率を飛躍的に向上させ、新しい働き方を実現できます。ここでは、Geminiの主要なツールをご紹介します
・Geminiアプリ:個人的な生産性を高めるためのチャットボット
個人の生産性を高めるためのGoogleの生成AIチャットボットです。ライティング、プランニング、学習など、多岐にわたるタスクをサポートしてくれます。
・Google Workspace向けGemini:よく使うアプリでのAI統合
Gmailやドキュメントなど、日頃お使いのGoogle Workspaceアプリに生成AIが統合されています。これにより、AIを日々のワークフローにスムーズに組み込み、その多様な活用法を実践的に理解できます。具体的には、以下のようなことが可能になります。
- ・Gmailでのメール作成・修正を効率化
- ・Google スライドでプレゼンテーションを強化する画像の生成
- ・Google Meetでのリアルタイム文字起こしや翻訳、会議の要約やアクションアイテムの抽出自動化
・Google Cloud向けGemini:Google CloudでのAIアシスタント
Google Cloudを利用する際のAIアシスタントです。これは、クラウド体験を向上させるために設計されたAI搭載ツールのスイートとして、開発者の生産性向上からデータ分析の簡素化などを支援してくれます。
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・コードの記述・デバッグ
コードの記述やデバッグを支援し、開発者の生産性を向上させます。Gemini Code AssistはAIペアプログラマーとして機能し、コードの提案や生成を行います -
・クラウドアプリケーションの管理・最適化
クラウドアプリケーションの設計、管理、最適化を支援します。Gemini Cloud AssistはAIエキスパートのような存在としてパーソナライズされたガイダンスを提供します -
・BigQueryでのデータ分析
BigQueryでのデータ分析をより簡単でアクセスしやすいものにし、SQL経験に関わらずコードの記述、データの理解、洞察の自動生成などを支援します -
・セキュリティ強化
セキュリティチームが脅威を検出し、封じ込め、拡散を阻止するのに役立ち、セキュリティ体制の強化に貢献します
これらのツールは、みなさまの業務効率を向上させ、新しい働き方を実現するための強力な手段となります。
3. 研究アシスタント、NotebookLMを活用しよう
情報過多の現代社会において、必要な情報を見つけ出し、理解し、活用することは容易ではありません。レポート、プレゼンテーション、研究論文、議事録など、貴重な知識は様々なドキュメントに散らばりがちです。ここで役立つのが、GoogleのAIを活用したリサーチアシスタント、NotebookLMです。
・NotebookLMとは
NotebookLMは、独自のドキュメントに基づいたAIファーストのノートブックとして設計されており、より迅速に洞察を得ることを支援します。あなたの仮想リサーチアシスタントとして機能し、情報の学習と理解を深めるのに貢献します。
・NotebookLMの始め方
NotebookLMを使い始めるのは簡単です。まず、ノートブックを作成し、学習させたい関連ソース資料をアップロードします。アップロードできる資料は多岐にわたり、ドキュメント、プレゼンテーション、さらにはオーディオファイルやビデオファイルなど、様々な形式に対応しています。

NotebookLMでソースを追加する画面
・NotebookLMの機能
アップロードした資料を基に、NotebookLMは以下のような強力な機能を発揮します
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・主要ポイントの要約
膨大な資料から主要な発見を要約したり、重要なポイントを整理したノートとして保存したりできます。箇条書きやQ&A形式、あるいはクリエイティブな物語など、さまざまな種類の要約を作成することで、資料全体を読み込む時間を大幅に節約できます -
・質問への回答
アップロードした資料について、具体的な質問をすることができます。NotebookLMは提供されたソース資料を読み込んだパーソナルAIリサーチパートナーとして、どんな質問にも答える準備ができています。複雑なSQLクエリの知識がなくても、自然言語でBigQueryデータベースを探索し、必要な情報を得ることも可能です -
・アイデア生成
NotebookLMは、アップロードされた資料を分析し、データに基づいた洞察を提供することで、アイデアの生成を支援します。異なる視点間の関連性や潜在的なリスク、矛盾などを特定する手助けも可能です -
・ソース資料に基づいた応答:Grounding
NotebookLMの最も重要な特徴の一つは、「グラウンディング (Grounding)」と呼ばれる機能です。これは、AIモデルがその出力を特定の、検証可能な情報源に結びつける能力を指します。NotebookLMは、アップロードした情報源からの情報のみを使用して応答します。これにより、提供される情報が正確で、関連性があり、元の資料に遡って確認できることが保証されます。資料に記載されていない質問には、回答できないことを正直に伝え、情報を捏造したり推測したりすることはありません。これは、AIシステムにおける信頼と信頼性を構築するための重要な側面です
・NotebookLM活用のメリット
NotebookLMは、広範な知識ベースから情報を引き出す一般的なAIツールとは異なり、前述のとおり提供されたソースのみに焦点を当てます。これにより、複雑な情報の中から深い理解を得ることができ、学習や研究のプロセスを劇的に効率化できます。また、プロジェクト関連の情報を共有ノートブックで一元化することで、チーム全体の連携と情報共有を保ち、共同学習と知識共有の文化を育むことも可能です。
データ内に隠された知識を解き放ち、AI駆動型調査の力でワークフローを変革するために、ぜひNotebookLMの可能性を探求してみてください。
4. 生成AIを使いこなすためのテクニック
生成AIの可能性を最大限に引き出し、日々の業務で効果的に活用するためには、いくつかの重要なテクニックとツールの理解が不可欠です。ここでは、生成AIとの対話方法を改善し、その応答の精度(accuracy)を高めるための具体的な方法をご紹介します。
・プロンプトの効率化
生成AIツールを使い続けると、プロンプトが極めて重要な役割を果たすことにすぐに気づくと思います。同じプロンプトを繰り返し入力する手間を省き、より複雑なワークフローに統合するために、コードを書くことなく生成AIの体験をカスタマイズ・自動化する方法があります。
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・プロンプトの再利用:テンプレートとして保存
日々の業務で、同じプロンプトやその一部を繰り返し使うことになるかもしれません。手始めに、これらのプロンプトをGoogleドキュメントやGoogleスプレッドシートのようなドキュメントにテンプレートとして保存しておきましょう。これは、マーケティングマネージャー、コンテンツライター、カスタマーサポート、ソフトウェア開発者など、様々な役割で活用できます。一見地味ですが、簡単に効率化できます -
・プロンプトチェーン:同じチャットボットで会話を続ける(コンテキスト維持)
プロンプトチェーンは、Geminiのような大規模言語モデルからより複雑でニュアンスのある結果を得るための強力なテクニックです。これはAIと会話するようなもので、各応答が前の応答に基づいて構築され、より洗練された結果につながります。同じチャットボットで会話を継続できるため、新しいプロンプトを入力する前にチャットボットが履歴を把握しています。同じ履歴を繰り返し入力したくない場合は、同じ会話スレッドを使用し、そこで作業を続けることができます。Geminiでは、チャットに名前を付けたり、簡単にアクセスできるようにピン留めしたりすることもできます。プロンプトチェーンは、マーケティングキャンペーンの計画など、複数のステップが必要な複雑なタスクで特に役立ちます
・Geminiで情報を活用する
Geminiを使用する際には、プロンプトの効率化に加え、特定の情報をAIに活用させるための機能があります
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・Saved Infoを使う:特定の情報を保存し、一貫性(consistency)を持たせる
プロンプトチェーンで同じ会話を続けることが常に最適なわけではありません。会話履歴全体ではなく、生成AIツールに特定の文脈だけを覚えておいてほしい場合があります。このような場合、Geminiに常に使用する情報を「保存された情報(Saved Info)」として保存しておくことができます。これは設定から行えます。
例えば、自分が営業担当者であることを事前に知らせておくことで、すべてのプロンプト会話でこれを繰り返し述べる必要がなくなります。また、チームの販売目標、KPI、好みのレポート形式などを保存しておけば、レポート作成時にGeminiが毎回再入力することなく常に正しい情報を使用することが保証されます。保存された情報は、役割や会社の詳細などの特定の情報が、すべてのGeminiのやり取りで一貫して適用されることを保証します。ただし、これはすべてのGeminiチャットに適用されるため、特定のタスクや会話には常に機能するとは限りませんSaved Infoの登録画面
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・Gems:パーソナライズされたAIアシスタント
「保存された情報」がすべてのチャットに適用されるのに対し、特定のタスクや会話には固有の文脈が必要な場合があります。ここでGems(ジェムズ)の出番です。Gemsは、Gemini内にあるあなたのパーソナルAIアシスタントだと考えてください。エージェントのように、これらのAIアシスタントは、選択したタスクのコンテキスト内で情報を処理し、複雑なアイデアについて推論することができます-
♢ 特定の指示や特定のプロジェクトやタスクの固有のコンテキストに合わせた応答
Gemsは、特定の指示や情報に合わせてカスタマイズすることができます。これにより、特定のユースケースにおいて、あなたのニーズや好みにより関連性の高い応答を提供することが可能になります -
♢ テンプレート、プロンプト、ガイド付きインタラクションによるワークフロー効率化
Gemsは、テンプレートやガイド付きのインタラクションを提供し、反復タスクを効率化します。背景情報や具体的な指示を設定したGemと複数のチャットを開始すれば、それぞれが目的に合わせて調整された会話が可能です。これにより、クリエイティブライティング、コーディング、マーケティングなど、特定の目的に特化したGemを簡単に作成・活用できます
Gemの作成画面
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♢ 特定の指示や特定のプロジェクトやタスクの固有のコンテキストに合わせた応答
・効果的なプロンプトの作り方
生成AIツールを使いこなす上で重要なのは、プロンプトを経験し、磨き上げていくことです。始めるのは簡単ですが、最良の結果を得るためには、様々なテクニックを実装することができます。
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・Zero-shot:例なしでタスク実行(no prior examples)
基盤モデルに事前の例を一切与えず、その既存の知識のみに頼ってタスクを完了させるよう依頼します。例えば、顧客が返品ポリシーについて尋ねた際に、モデルがその膨大な知識ベースを活用して回答を提供します -
・One-shot:1つの例で学習(one example to learn from)
基盤モデルにたった1つの例を示し、その知識を学習して類似の状況に適用させる方法です。例えば、配送料に関する質問の例を1つ示してプロンプトを入力すると、出力はこの例に倣います -
・Few-shot:複数の例で学習(multiple examples to learn from)
複数の例で学習。基盤モデルに学習させるために複数の例を提供します。これにより、タスクをよりよく理解し、パフォーマンスを向上させるのに役立ちます。例えば、サポートチケットとその正しいカテゴリを複数提供し、新しいチケットの分類をガイドします -
・Role:モデルに役割を与え、スタイルなどを制御
モデルに特定の役割やペルソナを割り当てることで、その振る舞いを導くテクニックです。ビジネスアナリストやカスタマーサービスエージェントなど、AIに特定の役割を担うよう指示することで、応答のスタイル、トーン、焦点をコントロールできます。例えば、「語学学習のチューター」というロールを与えれば、AIは生徒の学習意欲を高める建設的なフィードバックを生成してくれます
これらのプロンプト技術をシンプルに考える方法として、「ゼロショット:何をしたいか、ただ伝えるだけ」「フューショット:言うな、見せろ」「ロール:舞台を設定し、AIに演じさせろ」があります。ニーズに合わせてプロンプト技術を組み合わせることもできます。
5. AI応答の精度を高める技術
生成AIが生成する応答の信頼性と精度を高めるための技術も重要です
・グラウンディング:AIの出力を検証可能な情報源に接続する
グラウンディングとは、AIモデルの出力が特定の情報源に基づいていることを保証する技術です。これにより、AIが提供する情報が正確かつ関連性が高く、元の資料に遡って確認できるため、信頼性(reliability)と透明性(transparency)が向上します。GeminiやGemのプロンプトにリソースを提供することで実現でき、AIが事実に基づかない情報を生成する「ハルシネーション」を防ぎます
・RAG(Retrieval-Augmented Generation)とは
検索拡張生成(RAG: Retrieval-Augmented Generation)は、強力なグラウンディング技術の一つです。RAGは、AIモデルが単に情報を記憶するだけでなく、外部の知識源に効果的にアクセスし、利用することで、より洞察力があり信頼性の高い出力を生成する能力を強化します。
これには以下の要素が含まれます
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・ステップ1:関連情報の検索
AIモデルはまず、広大な知識ベース(データベース、文書群、あるいはウェブ全体など)から関連情報を検索します。この検索プロセスは、セマンティック検索やベクトルデータベースといった高度な技術が用いられます。ユーザーがプロンプトを入力すると、最も関連性の高い情報を見つけるためにバックエンドの検索システムにクエリが送信され、その情報がプロンプトの一部として埋め込まれます -
・ステップ2:検索した情報を用いた出力生成
その後、モデルは検索された情報を使用して最終的な出力を生成します。これは、質問への回答からクリエイティブなストーリー作成まで、あらゆるものに対応します。このプロセスにより、モデルは最新の外部知識を含む出力を提供し、ハルシネーション(AIが事実に基づかない情報を生成すること)を起こす可能性がはるかに低くなります
RAGは、関連情報に直接アクセスし利用することで、精度と関連性の向上に貢献します。また、出力生成に使用された具体的な情報源を示すことで、AIシステムの透明性と信頼性を高め、主張の正確性を確認できるようにします。プログラミングやデータベース開発の知識がなくても、RAGシステムを手軽に使い始める方法として、前述のNotebookLMのようなツールを活用できます
これらのテクニックとツールを活用することで、生成AIをより効果的に使いこなすことが肝要です
6. まとめ:生成AIで切り拓く、新たな働き方と可能性
いかがでしたでしょうか。Googleが提供する最先端の生成AIツール、特にGeminiとその関連サービスは、日々の業務効率を飛躍的に向上させ、新しい働き方の可能性を秘めています。
個人の生産性を高めるGeminiアプリから、GmailやドキュメントにAIを統合するGoogle Workspace向けGemini、そして開発やデータ分析を支援するGoogle Cloud向けGeminiまで、その活用方法は多岐にわたります。独自の情報に基づき洞察を深める研究アシスタントNotebookLMも強力な味方になりえます。
また、生成AIを最大限に活かすためには、いくつかのテクニックが不可欠です。プロンプトの効率化はもちろん、Saved InfoやGemsによる情報活用術、そしてZero-shot、Few-shot、Roleといった効果的なプロンプト作成法が重要です。加えて、AI応答の精度と信頼性を高めるグラウンディングやRAG (Retrieval-Augmented Generation) といった技術も重要です
これらのツールとテクニックを習得し、生成AIを強力なパートナーとして活用することで、日々の業務における可能性を最大限に引き出し、より創造的で効率的な働き方へと業務をモダナイズしてみてはいかがでしょうか。
次回は、「Gen AI Leader 合格への道#6:AI エージェントの基本と Google Cloud での開発基盤」として、AI エージェントの構成要素(基盤モデル、ツール、推論ループ)や種類、モデルの効果的な活⽤テクニックであるサンプリングパラメータやプロンプトエンジニアリング、そして信頼性の⾼い応答を実現するRAG、さらにGoogle Cloudでのエージェント開発基盤やツールについて掘り下げていきます。