富士ソフトでは、社員のスキルアップを目的に様々な学ぶ機会を用意しており、その中で特に大規模なイベントが毎年1回開催している「イノベーションカンファレンス」です。社内では「イノカン」の愛称で呼ばれています。社外の有識者を招いた基調講演やパネルディスカッションなどを通して、最新技術や富士ソフトならではの技術力、そしてナレッジを広く共有しています。
本コラムでは、イノカンの当日の様子をご紹介します。
今年の「イノカン」のテーマは3つ、最新技術の共鳴、新たな結束の力、体験から始まるイノベーション
--「生成AI」との向き合い方に大きな注目が集まる
今年はオンライン配信に加え、参加者を汐留オフィスの会場に迎えて対面でのリアル開催を行いました。9Fのメイン会場では、基調講演2件、パネルディスカッション3件、ライトニングトーク11件を展開し、1Fの会場では「FSI Security Challenge」の疑似体験、Microsoft 365 Copilotの活用例紹介デモ、PM(プロジェクトマネージャー)相談会、SP(スペシャリスト)相談会などを開催しました。オンライン配信では、研究開発や各種技術についての個別発表を24件、その中で GitHub Copilotコンテスト応募3件の発表も行いました。
本イベントは、3つのテーマを設定し、社員同士の意見交換や知識共有、そして実践的な体験を通して、イノベーションを創出・活性化することを目的としています。
テーマ①:最新技術の共鳴:知識をつなげ、未来を創る
社内の技術者が持つ最新技術の知識とスキルを共有し、それぞれの知識が共鳴して新たなイノベーションを生み出す場として位置付けています。
テーマ②:新たな結束の力:新たなつながり、革新を生む
リアル会場を設置し、ハイブリッドで開催することで得られる効果と、新たに生まれる結束とコミュニケーションを重視しています。
テーマ③:体験から始まるイノベーション:技術の習得から実践的なアウトプットまでを体感
講演やセッションを通して技術を学ぶだけでなく、最新技術から生み出される質の高いアウトプットまでを“体感”することによって全社的にイノベーションを活性化させます。
講演やセッションは、現在、世界中の多くの組織に多大なインパクトを与えている「生成AI」に関するものが多くありました。生成AIとどのように向き合うべきか、そして生成AIのメリットを引き出すためにはどのようなアプローチを取るべきかなどについて語られました。
最新技術の最前線や企業カルチャーの独自性を解説する講演・セッション
当日、メイン会場に満席の200名が参加。オンラインでは1,000名以上が参加しました。基調講演やパネルディスカッション、ライトニングトークなどを熱心に受講しました。
講演やセッションの概要とポイントをレポートします。
基調講演
「生成AI時代に、付加価値の高いエンジニアになるためには
~自己/企業変革なくして成長なし~」
生成AI部長 河野 恭太郎が登壇し、「生成AI」の利活用における重要性を説きました。
河野は、情報通信白書※のデータを引用し、日本の生成AI活用が個人、企業を問わず後れを取っていることを指摘。特に、利用者数の少なさが大きな問題であり、これが生成AIに対する理解不足につながっていると説明します。企業に所属する個人が生成AIを使わない理由として、主に「使い方がわからない」「自分の生活には必要ない」の2点が挙げられ、この懸念について世界各国のアンケート結果と富士ソフト社内のアンケート結果は類似していると述べました。
しかし、世界各国では加速度的に生成AIの活用が進んでいます。例えば、中国では生成AIを活用したオペレーターがすでに社会実装されており、ライブ配信とECサイトを組み合わせたライブコマースの主役が生成AIになりつつあります。
日本の企業がこの潮流に乗り遅れないようにするためにも、生成AIに対する意識改革を全社的に行う必要があると河野は強調します。さらに、生成AIの活用には「個人のモチベーション」が重要であり、自己変革と企業変革の両方が必要だと河野は指摘します。
富士ソフトの取り組みとして、生成AI関連ツールの提供、社内システムの生成AI適用、ノウハウの蓄積、事業創出などを進め、特にRDPを通じて各部での生成AI活用を推進しているとしました。
続けて、生成AI部の取り組みとして「テスト駆動型コード生成システム」の研究を進めていることを説明。人間がテストコードを書き、AIがそれに基づいて実装コードを生成するというアプローチが、生成AIの特性を生かしつつ人間の役割も重視する方法であることを強く主張しました。そして最後に「自己も企業も変革なくして成長なし」とし、個人と組織の変革の重要性を述べ講演を締めくくりました。
基調講演
「今のGitHubをどの様にGitHubが作り上げたか」
GitHub Japan合同会社 シニアソリューションズエンジニア Daniel Cho(ダニエル・チョ)氏と、同社 エンタープライズアカウントエグゼクティブ 鈴木 翔太氏にご登壇いただき、GitHub社ならではのユニークなカルチャーと理念をご紹介いただきました。
まず鈴木氏が「GitHub社員に伝わるGitHubカルチャー」を解説され、GitHub社ならではのオープンなカルチャーを紹介されました。GitHub社では、企業理念として「開発者のコラボレーションを通して人類の進歩を加速させる」を掲げられ、常に開発者に寄り添い、自社の利益のために行動することが是とされる文化が醸成されているそうです。さらに、「全てのことを書き留める」「If it doesn't have a URL, It didn't happen(URLがなければ、ないのと同じ)」「We Use Emoji(絵文字をどんどん使おう!)」「We are community & We thank each other(お互いに感謝し合おう)」といった文化があるとのことでした。
次にチョ氏が、「今のGitHubをどの様にGitHubが作り上げたか」をタイトルに語りました。チョ氏は、GitHubが創業当時から有してきた「共通の認識」「非同期コミュニケーション」「ChatOps「継続的デリバリー(CD)」の4つの理念が、今のGitHub社を作り上げていると説明されました。
さらに、GitHub社はMicrosoft社による買収後も「独立性を持つこと」と「製品に対する理念を維持する」という2つの大原則を保ちながら、蓄積されてきた技術的負債の解決を目指し、この大原則に「Customer Obsessed(お客さまに執着する)」の理念を加え、サービスを拡大してきたとチョ氏は語りました。
パネルディスカッション
「GitHub Copilotの現状と今後の展望について」
当社の常務執行役員 八木 聡之がモデレーターを務め、パネラーとしてGitHub Japan合同会社 日本・韓国担当シニアディレクター 角田 賢治氏、ダニエル・チョ氏と、当社から河野 恭太郎、技術管理統括部 副統括部長 石本 展啓が参加し、議論が交わされました。
まず八木は、生成AIがグローバルではどのような社会の変化を生んでいるのかという質問を投げかけました。
角田氏は、人員不足やレガシーを背景に新しいモノを導入できないといった課題がAIの導入によって解決されると主張。GitHub Copilotを筆頭に、技術者がAIを使用することで他のオフィスワーカーもAIを使用し始めると予測しました。
河野は、日本ではAIを利用しようとするモチベーションが低いと指摘。日本のエンジニアこそ、AIを使用してレガシーな保守案件の処理時間を短縮し、空いた時間をより創造的な業務に使うことで仕事へのモチベーションを上げていくべきだ、と述べました。
石本は、技術管理統括部でGitHub Copilotを活用しているとし、実際に自身が使ってみたことでAIへの理解が進んだと話しました。富士ソフト内でもAIの利用を進めていき、小さな成功体験を積み重ねることで、社内での活用が加速するのではないかと話しました。
次に八木は、生成AIによるコード生成が著作権やライセンスの侵害にあたるのでは、という日本企業が抱える懸念を議題に挙げ、グローバルにおいてその問題はどうなっているかを尋ねました。
チョ氏は、ソフトウェアの著作権に関しては、Microsoft社及びGitHub社が補償制度を提供しているため、社内法務に確認は必要だが、著作権に囚われず市場で取り残されるリスクを考えた方がよい、とまずは生成AIを活用してみることを強調しました。
最後に八木は、GitHub社の今後の展開について質問。角田氏とチョ氏は「GitHub Copilot Workspace」「GitHub Models」の提供によって、将来的には開発者が開発言語を知らなくても自然言語でプログラムが作れるようになる世界の到来を示唆しました。それを受けて石本は、富士ソフトが今後新入社員の教育にGitHub Copilotを活用していく考えがあることを示し、プロンプトエンジニアリングの育成とともに、GitHub社の各種サービスを活用した開発環境の整備と標準化を進めていくと説明しました。
パネルディスカッション
「セキュリティのアレコレ」
執行役員 技術管理統括部長 渡辺 露文がモデレーターを務め、パネラーとして技術管理統括部 セキュリティマネジメント部長 原 悟史、ソリューション事業本部 インフラ事業部 室長 柴田 秀行、ソリューション事業本部 インフラ事業部 主任 櫻井 秀憲、技術管理統括部 セキュリティマネジメント部 リーダー 平野 雅が参加し、議論が交わされました。
まず柴田から、最新セキュリティ動向について「CTEM(Continuous Threat Exposure Management)」を例に挙げました。CTEMは「継続的な脅威露出(エクスポージャー)管理」とされるもので、継続的に脅威を可視化し合理的な優先順位をつけて対応するフレームワークを指します。2024年に開催されたセキュリティカンファレンスでCTEMについて触れられることが多く、今後はCTEMを活用したセキュリティ対策が重要になると予測しました。
次に渡辺は、社外コミュニティ活動の重要性に触れました。それを受けて櫻井は社外コミュニティの活動について解説。セキュリティに関する社外コミュニティは多数あり、カンファレンスやワークショップ、「温泉」と呼ばれる地方宿泊施設で開催されるシンポジウム、ユーザーグループへの参加などがそれに該当するといいます。富士ソフトが参加している外部セキュリティコミュニティも多く、それらの活動を通じてセキュリティ知識の共有や人脈形成が行われていることを解説しました。渡辺は、セキュリティのスペシャリストとして社外でも活動することが自身の成長の刺激になるとともに、外部への一助になることでやりがいを感じるとまとめました。
続いて平野から、イノカンのイベントとして開催した「FSI Security Challenge」の概要説明がありました。CTF形式のセキュリティ競技イベントで、幅広いジャンルから問題が出題され、セキュリティに関する知識やスキルを駆使して参加者で競い合いながら隠された謎を解いていくイベントです。平野は、イベントの目標として『楽しみながらスキルを向上させること』を説明し、今後はイベントが常設化することで、さらなる参加者を募りたいと述べました。
最後に渡辺から、このセッションに仕込まれたネタが解き明かされて、パネルディスカッションが終わりました。
知識と親交を深める特別ブース
汐留オフィス1Fの食堂には、特別ブースを設けました。
「FSI Security Challenge」の疑似体験ブース
パネルディスカッション②でご紹介した「FSI Security Challenge」の疑似体験ブースを設置しました。社員がひっきりなしに訪れて設問に挑戦していました。
参加者の1人に疑似体験ブースに訪れた理由を聞いたところ、事前に開催された同イベントに参加したものの歯が立たなかったために再チャレンジに訪れたと話していました。今回はリベンジに成功したそうで、自身の成長のために今後も挑戦したいと意気込んでいました。
「Microsoft 365 Copilotの活用例紹介デモ」ブース
Microsoft 365 Copilotの認知を向上させるために、インストラクター担当者の解説を真剣に聞き入る社員の姿がありました。Microsoft 365 Copilotを具体的にどう使うのか、どう活用するのか質問を重ねる様子も見られました。
その他のブース
「PM相談会」「SP相談会」ブースも設置しました。社内でもなかなかコミュニケーションの機会を得るのが難しい当社のプロジェクトマネジメントのスペシャリストたちとリアルに対話できるということで、どちらもアクセスする社員が絶えませんでした。
まとめ
今回のイノベーションカンファレンス 2024は、ハイブリッド開催に大きな意味合いがあったと感じるイベントでした。基調講演やパネルディスカッションでは、オンライン配信で遠方からも多くの社員が参加することでき、リアル会場では登壇者と同じ会場で直接意見交換ができるなど、どちらも有益な時間となりました。リアル会場に設置された特別ブースについては、担当者やスペシャリストと顔を合わせて語り合うことで親交を深める大変貴重な機会となったといえます。後に行った参加者へのアンケート調査では、開催形式への満足度が98%と非常に高く、ハイブリッド開催のフレキシブルな形式が好評だったと感じました。次回の開催にも期待が持てそうです。
富士ソフトは、これまで培ってきた技術と経験を融合させることにより、ICTでお客様をご支援します。
AIソリューションはこちら
Azure OpenAI Service導入支援 powerd by ChatGPTはこちら
Microsoft 365 Copilot 向け導入支援サービスはこちら
Amazon Bedrock導入ソリューションはこちら