クラウドソリューション担当の藤崎です。インフラエンジニアとしてAWSアーキテクチャへの移行検討、構築などを行っています。
2024年12月2日(月)からラスベガスで開催されていた「AWS re:Invent 2024」に参加しました。
2024年12月3日のKeynoteにて、AWS CEO Matt Garman氏よりAmazon Q Developerの新機能が発表されました。
その中には生成AIにより移行プロセスを高速化する3つの機能が含まれていました。
- Windows上の.NetアプリケーションからLinux上のシステムへの変換・移行を支援する機能
- メインフレームからAWS環境への変換・移行を支援する機能
- VMware環境からAWS EC2上で直接稼働するシステムへの変換・移行を支援する機能
今回視聴したセッションはその内のひとつであるVMware環境からAWS EC2上で直接稼働するシステムへの変換・移行を生成AIの支援により効率化・高速化する新機能について解説するセッションです。
セッションの情報は以下となります。
タイトル:Accelerate modernization of VMware workloads using Amazon Q Developer(DOP224-NEW)
- 登壇者:Peter Ramensky、Rajesh Rathod、Atul Modi
こちらのセッションは現在YouTubeにてアーカイブ視聴が可能です。
Amazon Q DeveloperによるVMwareからの移行支援機能の概要解説
まず始めにAmazon Q DeveloperによるVMware環境からAWS EC2上で直接稼働するシステムへの変換・移行を支援する機能に関する概要解説がありました。
Amazon Q Developerによる移行支援機能では、移行とモダナイゼーションまでの全工程を一元化・自動化します。
Amazon Q Developerと既存のツール群を組み合わせることで、下記の機能を実現しています。
- AWS Application Discovery ServiceやRVToolsによる既存リソースの検出
- グラフニューラルネットワーク(GNN)活用により正確性を向上したウェーブプランニング
- オンプレミス情報を基にしたVPC、サブネット等のAWSネットワークの自動生成
また、全ての処理をAIが自動実行するのではなく、適切なタイミングで人が介入して選択や判断を行う仕組みがあります。
Amazon Q Developerプレビュー版によるVMware環境からの移行デモの様子
実際の移行時の動作イメージとして、セッション内でAmazon Q Developerプレビュー版(以下Q)にてVMware環境の移行デモが行われました。
デモ内にて解説された機能や移行手順について記載します。
ログイン
プレビュー版は Amazon Q Developer Pro Tier subscriptionへ加入することで、AWS Identity CenterからSSOログインして利用可能です。
ログインすると自動でワークスペースが作成され、ジョブ作成が可能となります。
ジョブの作成
Qとの自然言語による対話形式にて設定を行います。
移行方法に関する質問に対し「VMware Migration」と入力すると、Qがジョブ名を提案します。その後、自然言語によりジョブ名を入力します。
ジョブ名の入力後、Qがジョブ計画を自動生成します。
こちらにはインベントリ検出、ウェーブプランニング、ネットワーク変換、最終的なマイグレーションまでのステップが含まれます。
ジョブが進むにつれ、Qはジョブ計画の更新を自動的に行います。
ジョブの進行中に人による入力が必要となった場合は操作が要求されます。
コラボレーターの追加
ワークスペースへコラボレーターを追加可能です。コラボレーターの権限はロールベースによる管理が可能です。
データ収集
RVToolsファイルやNSX構成ファイルのアップロード、Application Discovery Serviceによりオンプレミス環境のデータ収集を実施します。
収集したデータをQが解析し、サーバ数やデータ品質を提示します。
ウェーブプランニング
データが揃った後、Qにウェーブプランニングを依頼します。
ウェーブプランニングでは、グラフニューラルネットワーク(GNN)を用いてアプリケーション整合性を考慮した移行グループ(ウェーブ)を提案します。
ワークログ
ワークログタブにて、エージェントや人が実行したすべてのアクションを監査ログとして確認できます。こちらはフィルタリングやダウンロードも可能です。プロジェクトの透明性確保に役立ちます。
ネットワーク変換
移行先となるAWSアカウントを指定すると、Qがアップロード済みのデータからVPC、サブネット、セキュリティグループ、トランジットゲートウェイ等を自動生成します。
CloudFormationテンプレートを出力し、レビュー後に自動でAWS環境へデプロイ可能となります。
ウェーブとターゲットインスタンスの詳細を指定するとQが推奨インスタンスタイプを提案します。占有ホストが必要な場合はその設定も可能です。
マイグレーション
最後に、Qはこれまで生成したすべての成果物(ウェーブ、ネットワーク構成、インスタンス推奨事項)を統合してAWS Application Migration Service(MGN)が使用可能なマイグレーションプランを作成します。
ダッシュボード
最終確認後、MGNを実行するとダッシュボードタブで進行度を確認できます。
ダッシュボードでは各ウェーブ、アプリケーション、サーバ、ネットワークのステータスの追跡が可能です。遅延やスタックしている箇所が一目で確認できます。
まとめ
re:Invent 2024のレポートとして、Amazon Q DeveloperのVMwareワークロード移行に関するセッションの内容を紹介しました。
今回のre:InventではAmazon Elastic VMware Solution(EVS)の発表も行われました。今後はオンプレミスのVMware基盤からAWS環境へ移行を検討する場合、EVSとこちらのAmazon Q DeveloperによるVMware移行機能が選択肢として挙げられるでしょう。
ついに生成AIを活用する移行系サービスが現れました。従来人力で実施していた調査や設計構築の工程が自動化されることで、移行コスト削減の可能性が望めます。
しかし、移行における要所の判断は変わらず人が実施する仕組みとなっております。Amazon Q Developerを十全に活用するためにも、VMwareやAWSの移行に関する十分な知見がこれまでと同様必要になることでしょう。
富士ソフトでは移行の専門家を多数抱えています。AWS移行ソリューションについて、詳しくはこちら
富士ソフトのAWS関連サービスについて、詳しくはこちら
アマゾンウェブサービス(AWS)