あらためてTanzuの立ち位置を探る
史上初、オンラインで開催されたVMworld 2020
2020年9月30日(日本時間)、VMware年次イベント「VMworld 2020」が、史上初オンラインにて開催されました。
「ニューノーマル」という言葉が一般化され、日常やビジネスシーンにおいても「変化」が求められる昨今。しかし、VMware CEOのパット・ゲルシンガー氏による同イベント初日の基調講演で掲げられたのは、「Any App, Any Cloud, Any Device」という、同社の変わらないスタンスでした。
あらゆるアプリケーションを、あらゆるクラウド、あらゆるデバイスに提供するデジタル基盤の構築。デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現する同社の姿勢は、加速度的に、そして具体性をもって進んでいます。
アプリケーション開発分野におけるKubernetesの重要性
アプリケーション開発分野で同社が力を入れているのが、今回の連載の中心としてお伝えしてきた、コンテナオーケストレーションツール「Kubernetes」です。
ゲルシンガー氏は「アプリケーション開発分野には、Javaがもたらしたような普遍性が必要である」と説きます。それを実現するのがKubernetesであり、今後アプリケーション開発分野では、Kubernetesこそが核となる存在であることを述べました。
Tanzuの発展
Kubernetesへの取り組みとして、同社はKubernetes関連製品群として位置づけされた「VMware Tanzu(以下Tanzu)」を展開しています。今年9月には「VMware Tanzu Basic」「VMware Tanzu Standard」「Tanzu Advanced」「Tanzu Enterprise」を発表しました。
現在は「VMware Tanzu Basic」と「VMware Tanzu Standard」が提供されており、今後「Tanzu Advanced」と「Tanzu Enterprise」が随時提供される予定です。
さらに、vSphere7のアップデート版「vSphere 7 update 1」の一部として提供される、サーバ仮想化とコンテナ統合のためのサービス「vSphere with Tanzu」も展開するなど、Kubernetesを中心とした「Tanzu戦略」を繰り広げています。
Kubernetesが、企業のアプリケーション開発における重要性を高めるのに比例して、Tanzuの立ち位置も、より幅広く確立されていくでしょう。
VMware Tanzuが目指すところ
ところで、アプリケーション開発分野において、企業が掲げるべき目標は「Kubernetesを導入すること」でしょうか?あるいは、「Tanzuを利用すること」でしょうか?
思い出してほしいのは、KubernetesやTanzuを利用する目的です。企業が掲げるべきなのは、TanzuやKubernetesを使えるようになること自体ではなく、各サービスを通して「アプリケーションモダナイズを実現すること」であるはずです。そして、Tanzuが目指すところも、まさにそこにあります。
Tanzuは、Kubernetesを介することで、企業にアプリケーションのモダン化を促進させるために存在します。たんにKubernetesを導入したり、Tanzuを利用したりするだけでは、アプリケーションモダナイズは実現されません。Tanzuを正しく活用し、Kubernetesがもつ利用価値を最大限引き延ばすことで、企業は新しい価値を手に入れることができます。
コンテナ技術やアプリケーションモダナイズは、流行的でありつつも、トラディショナルになり得る期待性があります。そのような中で、Tanzuは、Kubernetesへのハードルを下げる、企業とアプリケーションモダナイズの懸け橋となるでしょう。
- 第1回 コンテナ仮想化とは?モダンアプリケーションへの最適なアプローチ
- 第2回「コンテナ管理自動化」を現実のものにするKubernetes
- 第3回 Kubernetesのネットワーク~クラスタ環境でコンテナネットワークを構築する方法~
- 第4回 VMware Tanzuの成り立ち~年表から見る、No.1エンタープライズKubernetesベンダーへの道~
- 第5回「VMware Tanzu」に内包されるVMwareのマルチクラウド戦略
- 第6回 Tanzu Kubernetes Gridとは? VMwareが提供するコンテナランタイムのメリット
- 第7回 Tanzu Kubernetes Clusterとは?従来のvSphereインフラに構築されるKubernetes環境
- 第8回 Tanzu Mission Controlとは?あらゆる環境のKubernetesを一元管理する
- 第9回 VMworld 2020で明らかになったTanzuの目指すところ(現在表示)
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