モダンアプリケーション実現のためのVMware Tanzu
データセンター領域を中心に、仮想化市場をひた走るVMware。同社によるコンテナオーケストレーションツールKubernetes関連製品群「VMware Tanzu(以下、Tanzu)」の登場は、Kubernetesが今後のアプリケーションモダナイズにおける主幹になり得ることを印象付けました。
Tanzuは、あらゆる環境で稼働するKubernetesを、統合的に制御・管理してくれます。その構成要素としては、オンプレミスやvSphere環境、パブリッククラウドなど、さまざまな環境にKubernetesを構築できるランタイム「Tanzu Kubernetes Grid」、それぞれの環境に構築されたKubernetesを一元的に管理する「Tanzu Mission Control」、ソフトウェアベンダーたちによるKubernetes関連ソフトウェアパッケージのカタログを提供する「Tanzu Application Catalog」といった、Kubernetesの導入~展開までを包括的にカバーリングしてくれる、優秀なコンポーネントが挙げられます。
各主要コンポーネントの詳細は次回以降のユニットで解説しますが、本ユニットでは「そもそもTanzuでどのようなことが実現されるのか?」を、VMwareのマルチクラウド戦略に絡めながら見ていきましょう。
Tanzuは企業のコンテナに対するハードルを下げてくれる
高まるKubernetesの市場価値
国内でもKubernetesを採用する企業は増え続けています。そもそもコンテナ技術自体の導入率は増大傾向にあり、IDC Japanが実施した調査(※)によると、コンテナを本番環境で使用している国内企業は、2020年時点で14.2%となっています。2019年調査の9.2%から5.0%の伸び幅となっており、導入率はついに2桁に突入しました。
また、コンテナを導入構築/テスト/検証段階にある企業は18.6%になりますが、本番環境でコンテナを利用する企業と合わせて、コンテナ運用管理ソフトウェアの利用率を調査したところ、54.7%がKubernetesを利用していることがわかりました。
※参考:IDC Japan「2020年 国内コンテナ/Kubernetesに関するユーザー導入調査結果を発表」
今後コンテナの需要が高まる中で、Kubernetesの地位も比例して向上していくでしょう。
注視すべきは、新しいテクノロジーを導入するコスト
一方で、新しいテクノロジーを採用する際、企業は当然コストに注視しなければなりません。もちろんKubernetesも例外ではなく、現状の使い慣れた環境とはまったく別の基盤にコンテナ環境を構築していくことは、企業にとってあらゆる面でリスキーです。どれほどメリットがあるといわれようと、アーリーアダプター層とは逆に、足踏みする企業が増える可能性もあります。
今後Kubernetesベースで構築されていくアプリケーション稼働環境においては、いかに「既存」の資産を活用し、そしていかに効率よく管理していくかがポイントとなります。
VMwareのマルチクラウド戦略によって誕生したTanzu
ところで、VMwareはこれまでにマルチクラウド戦略を掘り下げ続けてきました。近年では、従来から持つ強みであるデータセンター領域のサーバ仮想化ソリューションに加えて、VMware Cloud on AWSなど、企業がすでに利用しているvSphere環境をベースとした各パブリッククラウドのマネージドサービスによって、ハイブリッドクラウドおよびマルチクラウドの構成を推進しています。
マルチクラウド戦略によって顧客の選択肢を拡大していく中で、当然新テクノロジーであるコンテナやKubernetesの存在は無視できません。マルチクラウドの観点からも関心が高まるKubernetesの存在こそが、「Tanzu」を誕生させたのです。
Tanzuの優位性
たとえば、「Tanzu Kubernetes Grid」は、vSphere上でKubernetesを動かすことができます。つまり、使い慣れた環境下で、Kubernetes環境を構築できることを意味します。これは、新しい技術に対する学習コストや導入コストの面から見ても、価値の高い側面を持っているといえるでしょう。
前述のとおり、まったく新しい環境をうまく取り入れていくには、既存の資産をいかに土台として利用できるかが重要です。その点、オンプレミス環境の雄としてあり続けるVMwareによるKubernetes活用は、ほかのKubernetes活用ソリューションと比較しても、一線を画す優位性があります。
Tanzuは、単なるKubernetes活用ソリューション群ではありません。VMwareのマルチクラウド戦略を、Kubernetesが存在するレイヤーにまで発展させるためのものです。同時にそれは、Tanzuが企業のコンテナ活用に対するハードルを下げる存在であることも意味します。
Tanzuを具体的に活用するために
さて、たとえばTanzuでは、構成コンポーネント「Tanzu Mission Control」により、AWSなどのパブリッククラウドや他の環境で実行しているクラスタを1つにまとめることが可能です。運用管理の一元化が実現されるため、ぜひ実務レベルでマルチクラウドでのTanzuの有用性を検証してみたいところですが、具体的なTanzu活用をイメージしていただくために、次回以降に各主要コンポーネントの詳細をお伝えしていきます。
- 第1回 コンテナ仮想化とは?モダンアプリケーションへの最適なアプローチ
- 第2回「コンテナ管理自動化」を現実のものにするKubernetes
- 第3回 Kubernetesのネットワーク~クラスタ環境でコンテナネットワークを構築する方法~
- 第4回 VMware Tanzuの成り立ち~年表から見る、No.1エンタープライズKubernetesベンダーへの道~
- 第5回「VMware Tanzu」に内包されるVMwareのマルチクラウド戦略(現在表示)
- 第6回 Tanzu Kubernetes Gridとは? VMwareが提供するコンテナランタイムのメリット
- 第7回 Tanzu Kubernetes Clusterとは?従来のvSphereインフラに構築されるKubernetes環境
- 第8回 Tanzu Mission Controlとは?あらゆる環境のKubernetesを一元管理する
- 第9回 VMworld 2020で明らかになったTanzuの目指すところ
富士ソフト VMware 仮想化ソリューションのご紹介