Broadcom社によるVMwareの買収を受けて、VMwareのライセンス体系が無期限型のライセンスからサブスクリプション型のライセンスに移行されることが発表されました。
ライセンス形態の変更に伴い、ライセンス費用が以前より高くなった影響でVMwareからの移行を検討する企業も多いようです。
Gartner社の調査によると、Broadcom社の変更を考慮したVMwareの代替製品を検討している企業の割合は71%にも昇っていることが分かります。
そういった中で、既存のオンプレミスのシステムでVMware vSphere環境を利用しており、今回のライセンス変更に伴う影響を受けて、クラウド化を次のプラットフォームとしてご検討しているお客様向けに、業界シェアNo.1のAWSを利用した場合、どのような移行パスがあるのかご紹介します。
※Broadcom Completes Acquisition of VMware
※VMware Cloud Foundationに関するアップデート
※Are you rethinking your relationship with VMware in light of the changes Broadcom is making?
移行においてお客様が検討できる選択肢
既存システムにおいてVMware製品を利用されているお客様が、今後選択できる方法を3つお伝えします。
1.新しいサブスクリプションモデルを受け入れる(リテイン)
引き続き、新しいモデルのライセンスを受け入れて現状のまま利用します。
2.クラウドへの移行(リロケート/リホスト)
今まで利用していたVMware製品の利用を止めて、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure 、Google Cloud(GC)等のパブリッククラウドに移行します。
3.代替製品への移行(リプラットフォーム)
Hyper-V、Citrix、OpenShift、Nutanix等の他の仮想環境に移行します。
以上が主に考えられる選択です。今回は2番のリロケート/リホストについて解説します。
VMware vSphere環境からの移行
VMwareからパブリッククラウドへ移行する場合はどのような方法があるのでしょうか。
移行方法をまとめたマップは以下の通りです。
次項では、これらの移行パスと移行方式について解説します。
VMware Cloud on AWSに移行する
いわゆるリロケートと呼ばれている移行パスです。
既存のVMware環境となるべく親和性の高い方法での利用を考えている場合や、移行スケジュールがタイトな場合に選択されるケースが多いです。
※2024年4月30日からはAWSから直接VMware Cloud on AWS (VMC)を調達することができなくなりました。
VMware Cloud on AWSへの移行方法としては以下4つがあります。
VMware HCXによる移行
HCX vMotionの機能を利用するとダウンタイムなしのライブマイグレーションでの移行も可能です。
出典:“ハイブリッド クラウド拡張機能 (HCX) を使用してワークロードを VMware Cloud on AWS に移行する”.AWS サイト.2019年5月7日.
AWS Backupを利用した移行
AWS Backupを利用することでオンプレミスのVMwareワークロードをAWSに移行できます。
出典:“AWS Backup と VMware Cloud on AWS を活用した VMware ワークロードのデータ保護シンプル化”.AWS サイト.2023年9月5日.
NetApp SnapMirrorを利用した移行
NetApp ONTAPは仮想マシンのストレージやファイル共有の目的でオンプレミスのVMware環境と組み合わされて利用されることがよくあります。
NetApp SnapMirrorを利用するとオンプレミスの仮想マシン(VM)のデータをAWSにコピーできます。DR(ディザスタリカバリ)サイトとしてのユースケースもあります。
出典:“Amazon FSx for NetApp ONTAP と SnapMirror を活用した VMware Cloud on AWS のディザスタリカバリ”.AWS サイト.2023年3月16日.
OVFテンプレートのエクスポート/インポートを利用した移行
Open Virtualization Format(OVF)と呼ばれる仮想マシンの標準フォーマットを利用して移行します。
このOVFのフォーマットは異なる仮想化システム同士でも相互に移行可能なフォーマットであるため、オンプレミスのVMware vSphere環境からVMware Cloud on AWS環境にスムーズに移行できます。
Amazon EC2に移行する
リホストと呼ばれる移行方式です。
リホストはなるべく既存のアプリケーションやデータベースに変更を加えることなく、AWSのプラットフォームに移行する方式です。
リロケート方式よりもAWSネイティブであるため、アプリケーションやデータベースロジックが変わらないと言いつつも、場合によってはIPアドレスが変わることがあります。比較的移行期間に余裕があり、尚且つ単純にクラウドシフトをするだけでなく、その後のモダナイゼーションを視野に入れた移行を考えられているお客様がこの手法を選ばれます。
リホストによる移行は3つの方式があります。
AWS Application Migration Service(MGN)を用いた移行
AWSが提供するマイグレーションツールを使用して移行する方式です。
この移行方式はVMware Cloud on AWSやオンプレミスのVMware環境のどちらからでも移行できます。
AWS Backupを利用した移行
このソリューションはVMware環境上で稼働する仮想マシンのバックアップをAWS Backupで取得し、Amazon EC2にリストアする方式です。
出典:“AWS Backup で保護した VMware 仮想マシンを Amazon EC2 としてリストアする”.AWS サイト.2024年5月16日.
VM Import/Exportを利用した移行
この機能を利用すると仮想マシンイメージをVMware環境からAmazon EC2にインポートしたり、Amazon EC2からVMware環境にエクスポートしたりできます。
参考:
https://aws.amazon.com/jp/ec2/vm-import/
https://repost.aws/ja/knowledge-center/import-server-ec2-instance
VMware Cloud on AWS Outpostsを利用する
VMware Cloud on AWS Outpostsを利用して移行します。
vSphere基盤によるSDDC(Software-Defined Data Center)のネットワークをAWSリージョンからお客様のエッジロケーションまで延伸することが可能です。
データセンターに専用のラックを導入し、そこにVMware Cloud on AWS をホスティングする形になります。
出典:“VMware Cloud on AWS Outpostsの基礎についての深掘り”.AWS サイト.2022年5月13日.
Nutanix Cloud Cluster on AWS(NC2 on AWS)に移行する
AWSのEC2ベアメタルインスタンス上にNutanixのハイパーバイザー環境を用意し、VMをNutanix Moveによって移行して利用する方式です。
参考:
https://www.nutanix.com/jp/products/nutanix-cloud-clusters/aws
https://portal.nutanix.com/page/documents/solutions/details?targehttps://portal.nutanix.com/page/documents/solutions/details?targetId=TN-2072-AHV-Migration:nutanix-move.htmltId=TN-2072-AHV-Migration:nutanix-move.html
Amazon WorkSpaces Coreを利用してHorizon環境を移行する
Amazon WorkSpaces Coreを利用するオンプレミスのVMware Horizon環境をAWSに拡張できます。
参考:https://techzone.omnissa.com/resource/deploying-vmware-horizon-amazon-ec2-and-amazon-workspaces
出典:“VMware Horizon の Amazon WorkSpaces Core への拡張”.AWS サイト.2023年3月9日.
Amazon Relational Database Service(RDS)に移行する
AWSのDatabase Migration Service(AWS DMS)を利用することでオンプレミスのデータベースをRDSに移行できます。
以下は移行イメージです。
出典:内山 義夫“[AWS Black Belt Online Seminar]AWS Database Migration Serviceサービスカットシリーズ”.P12.2021年2月16日
対応しているデータベースに関しては以下のリンクをご参照下さい。
https://docs.aws.amazon.com/ja_jp/dms/latest/userguide/CHAP_Introduction.Sources.html#CHAP_Introduction.Sources.title
まとめ
今回の記事はVMware社のライセンスの変更に伴い、VMwareから別の製品への移行を考えている方向けにパブリッククラウドシェアNo.1のAWSを利用すると、どのような移行先と移行方式が選択できるのかを解説しました。
お客様がクラウドシフトを選択される理由は様々ですが、利点として私が言えることは、
クラウドシフトによって数年おきに発生するハードウェアの更改の手間を省くことができるという点です。
お客様からは、データセンターの更新作業やハードウェアの調達が面倒といった声をよく頂きます。
クラウドへの入り口としてそういった小さな課題を解決するところから着手されてはいかがでしょうか。
当社は、クラウドネイティブも視野に入れたクラウドジャーニーの旅路をお客様と一緒に伴走することが可能です。
まずは、クラウド化を考えられているお客様に「ITトランスフォーメーションパッケージ for MCP 富士ソフトエディション」のソリューションを展開しています。ぜひご相談下さい。
富士ソフトのAWS関連サービスについて、詳しくはこちら
アマゾンウェブサービス(AWS)