ITトレンドピックアップ
2024年9月6日

AIシステム開発の流れを紐解く。熟練工のノウハウをAI化した活用事例

AIの急速な進化と普及に伴い、多くの企業がその活用に注目しています。しかし、AIの開発だけでは実務への落とし込みが難しいなど、多くの課題が残されています。そこで注目を集めているのが、富士ソフトのAIソリューション。AI開発からシステム開発、運用・保守まで一貫して提供する体制を強みに、AIを「実際に業務で使えるもの」にする道筋を示しています。さらに、スタートアップ企業との共創や、お客様のAI内製化支援など、多角的なアプローチで企業のAI活用を後押しします。本記事では、富士ソフトのAIソリューションの強みと、それがもたらす価値について、技術管理統括部先端技術支援部部長の三塚正文が語ります。

富士ソフトのAIソリューションの特徴

「AI、IoT、セキュリティ、クラウド、ロボット、モバイル・オートモーティブ」での先端的な取り組みを「AIS-CRM(アイスクリーム)」と名付けて注力している富士ソフト。AI・ITコンサルティングからAIシステム開発、AIモデル開発、運用・保守まで一貫して手がけています。強みはAI開発だけでなく、AIにふさわしいシステムもセットで作れること。AI自体の開発だけでは、AIを使ったサービスは実現できません。「この業務にAIを活用したい」とご要望いただいた際に、AIを「実際に業務で使えるもの」にするためのインテグレーションサービスを提供しています。

登場社員のプロフィール
  • 三塚 正文
    技術管理統括部先端技術支援部 部長

    1996年新卒で富士ソフトに入社後、業務アプリケーションの開発を手がける。その後オープン系システムの開発や、Microsoftのグループウェアの導入支援を手がけ、2012年から調査研究部隊に配属。現在は技術管理統括部先端技術支援部 部長として技術戦略​である「DX+AIS-CRM+SD+(5)G2」のAI、IoT、Cloud、Robotics、Mobileの調査研究と全社の戦略推進を牽引している。

AI開発を行う企業でも、システムに落とし込む技術やノウハウがないケースも

今でこそAIは普及していますが、以前は非現実的だと相手にされていませんでした。事実、数十年前からAIという概念や技術は存在していました。何度もブームが訪れ、その度に「そんなものは現実的ではない」と言われ続けてきたのです。最近になって、ようやく技術やインフラが追いつき、言語を扱った学習と推論が可能になりました。2022年に「ChatGPT3」が登場し、無料で誰もがAIを使えるようになったことで民主化されたのです。これまでアプリケーションを作るにしても一定のITスキルが必要でしたが、LLM(大規模言語モデル)の登場で今はテキストで指示を出しさえすればAIにコードを書いてもらうこともできます。実用性が格段に上がったことで、一気に世の中に広まったのは周知の通りです。

技術やインフラが追いついたことに加え、日本ではあらゆる会社で人手不足や後継者不足など、労働力確保が深刻であることもAIの普及を後押ししました。特にメーカーなどではそれが顕著で、AI導入による解決が求められています。実際、当社にも「AIを使いたいけど、何に活用できるかわからない」「この業務にAIを活用したいけど、どうしたらいいのかわからない」といったご相談が年々増えています。また、AIの検証を社内で実施したが実務レベルにAIをシステムにインテグレーションする技術やノウハウがなく、ご相談をいただくケースもあります。

AIを「実際に業務で使えるもの」にするAIインテグレーション

前述した課題に対して当社はどのような支援をしているのか、ここから詳しく解説していきます。下の図表にあるように、当社ではAIをどう活用するのかを企画・提案するコンサルティングからPoC(概念検証)、システム開発、運用まで一貫して対応するソリューションを提供しています。

AIソリューション イメージ図

これらの工程の中で「AIを使いたいけど、何に活用できるかわからない」という企業にはAI・ITコンサルティングによるご支援をしています。また「この業務にAIを活用したいけど、どうしたらいいのかわからない」という企業には、対象とする業務にあったAIを検証するPoCフェーズからご支援をします。PoCを経て効果があることが確認できれば、AIをシステムに実装していくフェーズ、実際に運用していくフェーズと進みます。PoCから運用までの一連の流れが実務レベルに落とし込むためのAIインテグレーションです。

各フェーズの中でも重要と考えているのがシステム開発になります。AIを実際に業務で使えるものにするためにはAI単体をただ作るだけではなく、ふさわしいシステムもセットでインテグレーションすることが不可欠だからです。加えて、ディープラーニングの登場により、独自のAIを開発する実力のあるスタートアップ企業も台頭してきているため、これらの企業との「共創」という観点でもシステム開発フェーズの支援を強化しているのです。

AI開発からシステム開発、保守まで一貫して対応できる体制が富士ソフトの強み

ECモールで買い物をすると「この商品を選んだ人は、こちらの商品も購入されています」とレコメンドが出てきます。レコメンドもAIがユーザーの購入履歴のデータ、顧客属性や商品情報から提案しています。その際に、最新のトレンドや情報を踏まえたレコメンドでないと意味がないので、常に新しい情報を学習させ新鮮なデータに更新しておく必要があるのです。単にAIを作るだけではなく、データを蓄積させ、学習させるノウハウがないとAIを開発してもシステムに落とし込んでうまく活用できません。それを実現できるAI開発からシステム開発、保守まで全工程を一貫して対応できる体制こそ、当社の特徴であり強みだと考えています。

当社には業界の大手企業含め、規模を問わず金融から製造まで多種多様なお客様のアプリケーション開発を手掛けてきた実績があります。運用・保守でも外務省など官公庁をはじめ多くの実績があり、データセンターも自社で保有しています。またクラウドソリューションも提供しているので、データをお預かりしてランサムウェアを防いだり、不審な振る舞い検知をしたりなどセキュリティ面まで幅広くご支援ができます。

加えて、AI導入にあたって教育までの伴走支援ができることも当社の特徴です。内製化が流行っていると前述しましたが、お客様が自社でAIを内製化する際、KPIに則した運用の設計、従業員の育成まで含めてご支援しています。AI活用に向けた教育コンテンツのみを提供するのではなく、システム全体を見渡した上で最適な学習方法を提示できるのは当社の価値だと思います。

さらに、当社にはAIジェネラリスト向け資格「G検定」補修者が357名(2023年8月時点)、AI技術者向け資格「E資格」補修者が56名(2023年8月時点)と国内でも5本の指に入るほどの有資格者が在籍しています。だからこそ、お客様にも最適な提案ができますし、プロジェクトも円滑に進めやすくなるのです。

熟練工のノウハウをAI化し、後継者不足の課題を解決

当社が、お客様の課題をAIソリューションでどのように解決しているのか、豊田自動織機さまの事例でご紹介します。同社は自動車のバンパーを製造する際に、金型に溶けた合成樹脂(プラスチック素材)を流し込み、プレス、冷却して成形する射出成形機を使っています。その成形工程で、不良品がでてしまうのを防ぐために射出成形機の制御パラメーターを毎回職人さんが調整していました。合成樹脂は温度が高すぎると固まりづらくなるので、その際は圧力を少し減らすなど、熟練工による調整が必要である一方で、次世代の担い手が少ないため、この技術を維持していくことが困難な状況にありました。こうした課題をAIで解消したのが、今回の事例です。

具体的には、過去の傾向を分析し「この設定だと不良品が出るのでこの設定にすることをおすすめします」とAIがレコメンドしてくれる仕組みをつくりました。毎回、部品が流れてきたときに設定値とセンサーの状態、射出成形機の温度を見て、最適な設定をAIが教えてくれるので、業務習熟度が低い若手でも不良品を出さない調整ができるようになったのです。

熟練工の技をAI化する際のポイントは、熟練工の方に必ずプロジェクトに入ってもらうこと。「この場合はこの設定にする」といったコツを熟練工の方から直接ヒアリングして、彼らの知識をデジタル化するのです。当社は必ず提案する際に、「AI化する業務に精通した方をプロジェクトにアサインしてください」と依頼するようにしています。富士ソフト側でもコミュニケーションミスを防ぐために、AIはもちろん、現場の業務にも精通した人をアサインしました。当然、運用・保守に入ってからも、継続的に業務やAIに精通したメンバーに任せるようにしています。

現状課題
システム化イメージ

AIと共生する未来を見据え、最適なソリューションを

AIの話題になると「AIに人の仕事が奪われるのでは」と心配される方が多いのですがそんなことはありません。AIは万能ではなく100%の精度を実現することは、現時点ではできません。AIが完璧な仕事をこなせない以上、人とAIが協調しながら仕事を進めていく必要があるのです。AIで業務が効率化されたとしても事業を拡大する以上、新しい仕事は次々と生まれるので、人の手は絶えず必要になります。「AIに仕事を奪われる」と必要以上に恐れる心配はないのです。

今後は間違いなくテキストや数値だけでなく、画像・音声など様々なものがAIのインプットになり、様々なものがアウトプットとして生成されるでしょう。テキスト・画像・音声・動画など複数の種類のデータを一度に処理できるマルチモーダル化が加速した未来では、AIと人間がよきパートナーになる社会が現実となります。そこに向けて私たち富士ソフトは、継続的なAIの調査研究や技術的ノウハウの蓄積を行い、これからも変わらずお客様にとって最適なソリューションを提供できるパートナーであり続けたいと考えています。何かお困りのことがあればぜひご相談ください。