未来型テスト自動化:生成AIで実現する品質と効率の両立
ソフトウェア開発において、テスト作業は多くの労力と時間を要するため、担当者にとって大きな負担となりがちです。近年では、その負担を軽減するためにテスト自動化ツールを活用する動きが広がっています。しかし、「期待していたほどQCD(品質・コスト・納期)向上に寄与しない」という声も少なくありません。
そんな中、UiPath社が提供するテスト自動化ツール「UiPath Test Suite」に新たに加わった新機能「UiPath Autopilot for Testers」は、テスト自動化における課題を解消する画期的な機能として注目を集めています。
本記事では、富士ソフトの塩見 潤へのインタビューを通じ、これまでのテスト自動化が直面してきた課題や、「UiPath Autopilot for Testers」がもたらす革新的な効果についてご紹介します。
- 従来のテスト自動化では、QCDのすべてに対して十分な効果を発揮するのは難しかった
- 日本で多く採用されているウォーターフォール型開発との相性の悪さ
- 生成AIを活用した機能により、テスト作業の品質向上・省力化・スピードアップが実現
- テスト作業のあらゆる段階で効率化が可能となり、ウォーターフォール型開発にも適応しやすい
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塩見 潤エリア事業本部 西日本支社 インテグレーション&ソリューション部
ソフトウェア開発のマネージャとして長年の経験を積んだ後、2018年より富士ソフトのRPAサービスにおけるスペシャリストとしてRPA事業を牽引。特に2020年の「UiPath Test Suite」リリース時にはいち早く注目し、全社技術リーダーとしてテスト自動化の社内活用を推進するとともに、お客様の導入支援をコンサルタントとして担当。
UiPath Japan MVPに初代から5年連続で選出され、UiPath Test Suiteの国内第一人者として広く知られている。また、UiPath公式コミュニティ「UiPath Friends」の創設メンバーであり、同コミュニティやその他のカンファレンスで多数登壇。エバンジェリストとしての活動を通じて、RPAやテスト自動化の普及に貢献。
テスト自動化の理想と現実
テスト自動化と聞いて、どんなイメージを抱きますか?多くの人が最初に期待するのは、まるで「魔法の杖」や「銀の弾丸」のような存在でしょう。テストケースやテストコードを自動生成し、不具合を瞬時に検出。品質は飛躍的に向上し、コストは激減、納期も短縮される——そんな理想を思い浮かべるかもしれません。まるで夢のような未来。しかし、現実は少し異なります。
現実のテスト自動化:セオリーと課題
実際にテスト自動化に取り組むと、理想とのギャップに気づくことがあります。
コスト削減が目的では不十分
テストコードの作成やメンテナンスにもコストがかかるため、短期的なコスト削減だけを目的にすると期待通りの効果は得にくいでしょう。
新たなバグの発見は少ない
自動テストで新種のバグを見つけることは稀です。自動テストは、テストコードに書いたことしか検証されず、繰り返してテストしたとて、デグレ以外の新種のバグが発見されにくいということです。まれに想定外のバグが検出されることもありますが、頻度は高くありません。
つまり、テスト実行のみにフォーカスした従来の自動テストでは、どんなツールを使っても、理想の「魔法の杖」とはなりません。
従来のテスト自動化における現実的な活用ポイント
では、テスト自動化をどのように活用すればよいのでしょうか?従来のテスト自動化の鍵は、品質保証のセーフティネットとしての活用で、既存機能が壊されていないかを確認する役割が主流です。特に、アジャイル開発やCI/CDパイプラインでの反復的なテストにおいて、コストとベネフィットのバランスが取れるようになります。自動化を導入してすぐに効果が出るわけではなく、テスト実施を繰り返し、長期的な品質担保とコスト削減が釣り合うポイントを目指すことが重要になります。
近年、ツールの進化により注目度が高まっていますが、基本的な効用や課題は20年以上大きく変わっていません。
日本ではテスト自動化の恩恵を享受しにくい
特に日本では、テスト自動化が思うように浸透しない背景があります。その一因は、開発プロセスや契約形態にあります。日本では、アメリカと比べてソフトウェア開発を外注する企業が多いです。その結果、一括請負契約が主流となり、アジャイルより、ウォーターフォール型開発が依然として多く採用されています。また、発注側と受託側で開発や保守が分かれることも多く、これが自動化コストに見合ったメリットを得る妨げとなっています。
そもそも、最初に描いた理想を現実の延長線上で実現するのは難しいと言えるでしょう。
(出典)「IT 人材白書 2017 」 情報処理推進機構:
https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/12446699/www.ipa.go.jp/files/000059086.pdf
(出典)ソフトウェア開発 データ白書 20I8-20I9:
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_jinzai/pdf/001_s01_00.pdf
テスト自動化の未来を切り開く「UiPath Autopilot for Testers」
テスト自動化は理想と現実のギャップが課題でしたが、2024年7月にUiPath社がリリースした新機能「UiPath Autopilot for Testers」によって、そのギャップを埋める革新が期待されています。この革新的機能は、テストライフサイクル全体を包括的にサポートし、従来の枠を超えた効率化と品質向上をもたらします。
すべての工程をつなぐ革新
従来のAI搭載ツールは主にテスト実行や一部のコード生成に焦点を当てていましたが、「UiPath Autopilot for Testers」は一歩先へ進みます。要件の品質評価からテストケース生成、コード生成、実行、そして洞察を活用した分析まで、あらゆる工程で力を発揮するのが特長です。これにより、アジャイル型やウォーターフォール型を問わず、開発手法に応じた柔軟な対応が可能となります。つまり、今までのテスト自動化では難しかった新規開発時のシフトレフトでの効用も期待できるということです。
上流工程からの品質向上:要件の品質評価
テスト管理ツールの「Test Manager」に登録された要件や要件定義書をAIが多角的に解析。未定義箇所や改善点を洗い出し、さらにセキュリティやコンプライアンスの基準に基づいた整合性チェックも自動化します。これにより、開発の上流工程から質の高い成果物を生み出す環境が整います。
効率化と網羅性を両立:テストケースの生成
生成AIが、登録された要件や設計書をもとに、テストケースを自動生成します。生成されたテスト手順と期待結果はそのまま手動テストにも利用可能な状態で提供され、テスト設計の効率化と漏れのリスク軽減を可能にします。
迅速なコード生成:テストコードの開発
テスト開発ツールの「UiPath Studio」との連携により、選択したテストケースに基づいてテストコードを瞬時に生成。これにより、短時間で多くのテストコードを作成でき、従来の開発時間を大幅に削減します。
洞察を活用:テストインサイトレポートの生成
テスト結果を分析し、自動でレポートを生成。失敗率の高いテストケースやその原因、改善案などを提示するため、テストの最適化に寄与します。
これ以外にも生成AIを搭載した機能がリリースされています。ロードマップについては、グローバルイベント「UiPath FORWARD + TechEd」参加レポートも是非ご覧ください。
グローバルイベント「UiPath FORWARD + TechEd」参加レポート:https://www.fsi.co.jp/blog/11457/
「UiPath Autopilot for Testers」で得られる成果
このツールがもたらす主なメリットは以下の通りです:
要件分析による上流工程の品質向上
テスト設計の省力化と抜け漏れの軽減
自動生成されたテストコードの迅速な実行による未知の不具合の発見
要件と実装の不一致の早期発見
高頻度でのリグレッションテストによる品質担保
これにより、品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)すべての向上が期待できます。テスト自動化の理想形が、ついに現実のものになりつつあるのです。
富士ソフトは、「UiPath Test Suite」を2020年リリース直後からいち早く導入し、全社的なテスト自動化の活用を進めてきました。2024年7月にリリースされた新機能「Autopilot for Testers」の検証も進行しており、これまでのテスト自動化の常識を超える先進的で革新的なツールへ進化を遂げていることに驚きを感じています。AIの進化がもたらしたこの変革により、まさにテスト自動化の新時代が到来していることを実感しています。 将来的には、このツールを活用したソリューションを通じて、お客様のQCD向上に貢献することを目指しています。
※ 記載されている会社名、製品名は各社の商標または登録商標です。