課題解決の現場
2024年11月18日

「データ利活用の第一歩がわからない」を解消。AIとデータを活用した新たな顧客体験

さまざまなデータを利用し、経営の意思決定を行う動きが広がるなかで、データの収集・共有・分析をいかにシームレスに行えるかの重要性は増しています。一方で、「データが散在している」、「データ収集は進んでいてもうまく活用できない」などの課題を抱える企業は少なくないと思います。

今回は、お客様のデータ利活用を促進している小一原 宏樹、貴田 浩司、江蔵 奈々が、AIを活用したデータコラボレーションについて語ります。

登場する主な課題
  • 基幹システム、顧客管理システム、ファイルサーバーなど、異なるシステムや場所にデータが分散しているため、全体的な把握や活用が難しい
  • BIツールでのデータ可視化は進んでいるものの、その先の具体的な活用方法がわからない
  • 専門的なスキルが不足し、データ利活用を進めようにもどこから手をつければよいのかわからない
改善効果
  • 分散していたデータを一元管理し、全体の状況を把握できる基盤を整備。迅速な意思決定が可能に
  • AIを活用したデータ分析により、精緻な顧客インサイトを獲得。ビジネス戦略の精度が向上
  • データの処理・分析が効率化され、ビジネス価値の創出や競争力の強化を実現
登場社員のプロフィール
  • 小一原 宏樹
    ネットソリューション事業本部事業戦略推進室

    2002年4月、富士ソフト株式会社へ新卒入社。携帯電話アプリケーションの開発からキャリアをスタート。時代の変遷に伴い、スマートフォンアプリやWebアプリケーション開発にも従事。プロダクトサービスの開発や商品企画も手掛け、お客様視点でのビジネスプランニングが得意分野。2023年初頭からは、データ利活用に注目し、特に「Snowflake」に着目し、データAIのビジネス拡大を推進中。

  • 貴田 浩司
    ネットソリューション事業本部事業戦略推進室

    2000年4月、富士ソフト株式会社へ新卒入社。Webアプリ基盤フレームワークの開発、提案などに従事し、多数のプロジェクトに対して基盤アーキテクトとして参画。2023年初頭より、営業、技術の枠にとらわれず、市場調査、新技術調査から提案アセット開発、社外パートナーシップ構築、新規提案アプローチなど、お客様と営業、技術の橋渡しを通じた、お客様視点での新規事業推進に従事。

  • 江蔵 奈々
    ネットソリューション事業本部ネットビジネス営業部

    2024年4月、富士ソフト株式会社へ中途入社。ネットビジネス営業部へ所属し、お客様のデータ分析・利活用に関する課題解決へのご提案を行う。前職は人材派遣営業に従事。

可視化から予測へ。ビジネスの付加価値向上につながるAI技術の進化

データの利活用は、ここ10年で大きな進化を遂げています。2010年代初頭に「ビッグデータ」という言葉が登場し、その頃から多くの企業がデータの重要性を認識し始めました。

しかし、企業のデータ利活用は、主に社内データ(例えば、受注データや顧客データ)をBI(Business Intelligence)ツールで可視化し、発注や在庫管理といった業務の意思決定を支援する範囲に限られていました。つまり、データ利活用の範囲は企業内部に留まっており、外部とのデータ連携や、外部データの活用はあまり進んでいなかったのです。

この状況が、直近数年のAI技術の進化により一変しました。AIによって企業はデータをさらに高度に活用できるようになりつつあります。データの可視化から一歩進み、AIにより大量のデータを解析し、予測を立てることができるようになったのです。今後、データ利活用にAIを用いることで、ビジネスに付加価値を提供する幅が広がっていくと考えられます。

データコラボレーションで広がる、分析・活用の可能性

AIとデータ利活用が進展する中で、データの価値をさらに引き出すために注目されているのが「データコラボレーション」です。これは企業がデータを自社内だけでなく、パートナー企業や業界全体など外部とデータを共有し、相互に活用していくという新しいアプローチです。データコラボレーションにより、企業は自社だけでは得られない市場や消費者インサイトなどのデータも活用でき、ビジネスの戦略をより高精度に構築することが可能となります。

これまで企業間でのデータ共有は、コンプライアンスやセキュリティ上の懸念から実現が難しいとされてきました。しかし、近年の技術進化や規制の整備により、データコラボレーションを進めるための環境が整いつつあります。実際にヨーロッパでは、政府と企業が協力してデータの共有と利活用を推進するための「データスペース構想」というプロジェクトが進行しています。

こうした動きは、自動車業界ではすでにサプライチェーン全体に起きていて、先端ビジネスの土壌をつくることに貢献しています。より広がりを持ったデータをAIで分析・活用する、新たなAI・データ時代が到来しているのです。

活用すべきデータを見極め、ビジネスのボトルネックを解消

前述のように、AIを駆使したデータ利活用の可能性は広がっているものの、多くのお客様が「データ利活用の手順や分散データの整理方法が分からない」と悩んでいます。また、BIツールでの可視化は進んでいるものの、データ利活用の方向性や具体的なステップに困惑しているケースも多く見受けられます。

当社はSIerとしての技術力を基盤に、お客様のニーズに応じた具体的かつ実践的な解決策を提案しています。AIを用いたデータクラウドの導入は、未知のユースケースを探索する必要があり、システム要件を固めて進めていく「従来の要件定義」とは異なる手法が必要と考えています。そのため、お客様の重要成功要因(CSF)の達成を前提とした必要なデータを見つけるためのプロセスを、私たちはADD(Adaptive Data Discovery)プロセスとして造語を定義し、お客様のご支援をしています。お客様とパートナーシップを組み、経営方針や組織構造を理解することで、顧客の真の課題を明らかにし、どのデータを活用すべきかを共に見極めます。

特に、ビジネスのボトルネック解消のためには、エンドユーザーの不便や不満を把握し、企業視点で解決策を導き出すことが重要です。これにより、データ利活用の範囲を絞り込み、具体的な活用ステップを提案します。

Snowflakeを軸にしたデータコラボレーションの深化

当社ではAIデータクラウド「Snowflake」を中核とした各種データ・AI基盤の導入サポートを通じて、企業のデータ利活用をご支援しています。

「Snowflake」の特徴を2点挙げると、1つは従来のデータウェアハウス(DWH)とは一線を画し、SaaS型のシングルデータプラットフォームとして、企業や国を超えてシームレスなデータコラボレーションを実現できる点。

もう1つは、ソフトウェアスタックを積み上げることなく、AIを介してSQLレベルでデータ分析への指示が行える点です。これにより従来のDWHでは困難だったエンタープライズAIの導入や、データに則ったビジネスの意思決定を、スムーズに進めることが可能になりました。既に「Snowflake」はグローバルに展開するマーケットの中、9000社を超える企業で次世代のプラットフォームとして採用されています。

そうした中で、当社にはSnowPro Core認定資格(Snowflakeの実装や移行に関する特定のコアな専門知識・技術を身につけていることを証明する資格)の保有エンジニアが複数名在籍しています。高度な技術力を有するとともに、プロジェクトの大小に関わらず対応可能である点がお客様の安心感につながっているのです。

さらに、幅広い業界の企業に対応できる点が、当社の強み。データ利活用を推進するためには、基幹システムや販売管理システム、CRMなど、様々なシステムと連携を行うための知見を有している必要があります。この点がコンサルティング企業やWeb制作会社など、他社との差別化ポイントとなっています。

データは民主化の時代へ。AIデータクラウドが切り開く新たな未来

多くの企業がデータの利活用を通じて新たなビジネスチャンスを模索する中、当社は企業がデータ利活用に向けた新たな一歩を踏み出せるようご支援をしています。

たとえば、ある小売チェーンでは基幹システム、会員基盤、ファイルサーバーなどにデータが分散し、個別に管理されていました。また、システムが肥大化し、フランチャイズ店舗でビジネスデータが可視化できず、迅速な意思決定や効果的な店舗運営が難しい状況でした。こうした課題に対し、当社では「Snowflake」を導入支援し、分散していたデータを一元化。さらに、「Microsoft Power BI」を用いてデータの可視化を実現し、各フランチャイズ店舗から本部まで、全体のビジネス状況をスムーズに把握できる基盤を整えました。これにより、データ利活用に向けた新たな一歩を踏み出しました。

他にも様々な業界や企業に対してデータ利活用をご支援しており、「データ分析により、顧客理解が深まった」「顧客に対する次の打ち手を検討しやすくなった」「集計・分析にかかる負荷が半分になりました」といった声もいただいています。

今後は、データやAIの利活用が当たり前となることを前提として、当社では「予測駆動型ビジネス」や「AIエージェント」により、勘や経験など属人的なものに依存しないビジネスの構築を目指しています。

予測駆動型ビジネスの一例として、物流業界事例が挙げられます。物流業界では、既に、AIを用いて商品需要の増減や消費者行動を分析し、在庫の補充や配送を事前に最適化する取り組みが行われています。たとえば、ECサイトでの過去の購入履歴をもとに、AIが次に購入する商品を予測。この予測に基づき、商品を消費者が注文する前に倉庫から該当地域の配送センターへ移動させるというものです。

また、AIエージェントには、顧客対応を自動化するチャットボットや、業務プロセスを自動で処理するRPA(Robotic Process Automation)があり、多くの業界で人手を削減し、業務の効率性と迅速性を向上させています。こうした技術の普及は、サプライチェーンの最適化や廃棄ロスの削減、人手不足の解消といった社会課題に対する新たなアプローチを提供し、さらなるビジネス環境の進化を促しています。

「Snowflake」をはじめとするAIデータクラウドの導入によりデータの民主化が進み、これまでデータ利活用が難しかった企業でも、より効率的にデータを活用した意思決定が行えるようになります。次世代のデータ利活用でお悩みの際は、ぜひご相談ください。

※「Snowflake」はSnowflake Inc.の登録商標または商標です。​