早わかりIT用語
2025年3月18日

初心者でもわかる!データウェアハウスの基礎と活用法

現代の企業では、ERP(Enterprise Resource Planning)、CRM(Customer Relationship Management)、ソーシャルメディアなど、様々な媒体において膨大なデータが発生します。その結果として、以前と比べて収集可能なデータ量が飛躍的に増加しており、企業や組織におけるデータ活用の重要性はどんどん高まっています。

一方で、企業内のデータが部門やシステムごとに分断され、統合や共有が困難になる「データのサイロ化」も課題となっています。データのサイロ化を防ぎ、一元的なデータ活用を実現可能とするためのデータベースの一種として注目されているのが、データウェアハウス(DWH)です。本記事では、データウェアハウスの仕組みや活用例、活用時に注意すべきポイントなどをご紹介します。

「データウェアハウス」を簡単に説明!
  • データウェアハウスとは、複数のシステムやアプリケーションなどから収集したデータを一元的に管理し、分析可能な形で蓄積するための「データの倉庫」を指す。
  • 各種システムから取り込んだ膨大なデータを、目的別・時系列に整理された形式で保持し、データの整合性を保ちながら、必要な情報を迅速に抽出することが可能になる。
  • データウェアハウスとビジネスインテリジェンス(BI)ツールを組み合わせることで、ビジネス環境の変化を迅速に把握し、データに基づいた意思決定を促進することができる。
登場社員のプロフィール
  • 梁 俊希
    ネットソリューション事業本部 ネットインテグレーション事業部
    シニアマスター / プロフェッショナルPM

    2018年、富士ソフト株式会社へ入社。Webアプリケーション開発の大型プロジェクトを複数経験し、その後数年に渡ってAWS開発を担当。クラウドアーキテクトとして、様々な企業のデータ分析・利活用を促進するためのAI・データプラットフォームの導入支援に従事。「SnowPro Advanced: Architect」など多数のクラウド資格を保持。

データウェアハウス(DWH)とは?

データウェアハウスとは、「データの倉庫」を意味し、基幹システムやアプリケーションをはじめとした複数のシステムから収集したデータを一元的に管理することを可能とし、データを整理された分析可能な形式で蓄積するためのデータベースシステムのことです。

データを一か所に集約管理することで、システムを横断した活用が可能となります。データウェアハウスを導入することで、経験や勘に頼るのではなく、データに基づいた迅速かつ効果的な意思決定を行うことが可能となるため、DX(Digital Transformation)の推進には欠かせない存在であり、多くの企業が導入を進めています。

データウェアハウスの仕組みとメリット

データウェアハウスの特徴

データウェアハウスの特徴として、従来のデータベース製品とは異なり、大量データの読み取りアクセスに特化している点が挙げられます。分析専用の並列処理に特化したアーキテクチャを採用しているほか、データを取得する際に必要な列情報のみにアクセスすることで、大量データの高速な分析を可能としています。

データの保存と管理

日々膨大なデータが蓄積されることから、データウェアハウスに集められたデータは効果的に保存および管理される必要があります。多くのデータウェアハウスは専用のストレージ技術を採用しており、大容量のデータをリーズナブルなコストで保持することを可能にしています。また、各種システムからデータを取り込む際に、システムごとにデータ管理の体系が異なることがあり、データを収集する過程でデータクレンジングや加工を行うことで、重複の排除された整合性のあるデータを管理することが可能となります。このようにデータウェアハウスにデータを蓄積し、適切な管理を行うことで、必要な情報に対してスムーズにアクセスできるようになります。

メリット

データウェアハウスを導入することにより、複数のシステムや部門で管理しているデータに対する業務横断的なアクセスを可能とし、必要な情報を迅速に抽出可能となります。結果として、時系列データの分析や過去のトレンドの追跡を容易にし、企業の競争力を強化します。

データウェアハウスの活用例

ビジネスインテリジェンス(BI)での利用

データウェアハウスは、ビジネスインテリジェンス(BI)ツールと組み合わせて活用されることが一般的です。BIツールを利用することで、データウェアハウスに格納されたデータをもとにして、レポートやダッシュボードを生成し、データをグラフィカルに可視化することができます。これにより、経営者やマネージャーはビジネス環境の変化を迅速に把握し、データに基づいた意思決定が可能となります。例えば、販売データを分析して売上のトレンドを視覚化することで、季節ごとの需要を予測したり、地域別のマーケット戦略を策定したりすることが可能です。

部門ごとのデータ分析

データウェアハウスは、企業内の各部門がそれぞれのニーズに応じたデータ分析を行う場面でも活用されています。営業部門では顧客データや契約情報を活用し、マーケティング活動の最適化に役立てることができます。人事部門では、従業員の業務データを解析して、採用や研修プログラムの改善に生かすことができます。このように、データウェアハウスは業務をより効率的に遂行するためのインフラを提供し、各部門が共通のデータ基盤を利用して成果を上げることを可能にします。

注意が必要な点

構築と運用のコスト

データウェアハウスの構築と運用には、一定のコストが発生します。まずハードウェアやソフトウェアの調達が必要になる場合が多く、製品に依存した導入コストが掛かります。また製品のセキュリティ設定など初期設定が必要であり、データウェアハウス内のテーブル設計など、構築のための初期投資が必要です。さらに、導入して終了ではなく、運用フェーズにおいても適切なメンテナンスを行っていく必要があります。クラウドの製品においては、メンテナンス負荷を低減する仕組みが備わっておりますが、メンテナンスには高度な専門知識を持つ人材の確保も大切です。結果として、人件費や教育費用も含めた運用コストは無視できない要素となります。

データセキュリティとデータガバナンス

データウェアハウスでは、個人情報をはじめとする多くの重要なデータを取り扱うことも考えられるため、セキュリティとガバナンスの確保が非常に重要です。特に、顧客データや企業の営業情報など、機密性の高いデータを扱う場合、漏洩や不正アクセスを防ぐための強固なセキュリティ対策が求められます。また、大量データを一箇所に集約するという特性上、セキュリティインシデントが発生した際の影響が大きくなりがちです。そのため、定期的なセキュリティ監査や、アクセス権限の適切な設定が重要です。

まとめと今後の展望

データウェアハウスの進化と技術トレンド

データウェアハウスは、変化し続ける多様なビジネスニーズに対応するために絶え間なく進化を続けています。この十年で技術トレンドは大きく変化しており、特に、クラウドサービスの普及によって、クラウド型のデータウェアハウスが主流となっています。クラウドのメリットを活かして、多くの企業がスケーラブルで柔軟なデータ管理を低コストで実現することが可能となります。

さらに、近年ではAIや機械学習との連携が新たなトレンドとなっています。企業は膨大なデータセットから迅速且つ効率的に洞察を得ることが可能となり、高精度な分析をリアルタイムに実現できるようになっています。

クラウドサービスとして提供されているデータウェアハウスでは、データを蓄積する「倉庫」としての役割を超えて、AI・機械学習による分析の自動化・高度化が可能となっています。生成AIによるアシスト機能も搭載されてきており、データに精通した技術者だけではなく、ビジネスユーザーが自然言語でデータに問い合わせ可能となるなど、データの利活用がより身近なものとなっています。機械学習についても、蓄積されたデータから将来の予測を行うためのプリセットの提供やモデル管理・コンテナ実行環境の提供など、データ利活用を促進するための機能提供が行われております。

このように、データをガバナンス統制の効いた状態で管理し、誰もが必要な時に、容易にデータを活用可能とする「データの民主化」が各種データウェアハウス製品で急速に進んでおります。データウェアハウスはますますその重要性を高め、今後もビジネスのあらゆるシーンで欠かせない存在となるでしょう。

富士ソフトではSIerとしての技術力を基盤に、お客様のニーズに応じた具体的かつ実践的な解決策をご提案いたします。「最新のトレンドが知りたい」、「数あるデータウェアハウス製品からどの製品を選択すべきかわからない」「データ分析基盤を導入してみたいが何から着手すべきかわからない」「導入してみたものの上手く活用しきれていない」といったお悩みがある方はお気軽にご相談ください。