サイバー攻撃に対する法的支援「デジタルフォレンジック」とは?デジタル社会における調査・解析術を解説
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デジタルフォレンジックは、サイバー犯罪や法的紛争の現場で、PCやスマートフォン、サーバー、ネットワーク機器などから証拠を収集・分析し、法的な証拠としての有効性を示す技術です。犯罪の発生状況を解明するため、「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「なぜ行ったか」といった情報を明らかにします。デジタル社会の進展と共に、この技術は企業のコンプライアンス向上やセキュリティ対策に不可欠な存在となっています。本記事では、デジタルフォレンジックの役割、活用例などを解説していきます。
- デジタルフォレンジックの目的は、デジタルデータの収集と解析を通じて不正行為などに対して、法的対応を支援すること
- デジタルフォレンジックには、データベースやネットワークパケットの解析、データ復元、ログの調査など、法的、技術的に適切に取り扱うためにさまざまな技術が使用される
- 急速な技術発展に対し、人材育成やコスト管理も課題であり、国際的に異なる法規制への対応も求められる
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櫻井 秀憲ソリューション事業本部 インフラ事業部セキュリティソリューション室
主任/エキスパート(セキュリティコンサルタント:CSIRT)2005年に組込機器アプリの開発に携わり、その後移動体通信の無線品質調査研究プロジェクト、交換局開発のPMOチーム、基地局開発のPMOチームに参画、 国内向け新型基地局のPMを務める。現在は自社CSIRTである FSI-CSIRTの活動を通し、社内セキュリティの強化を行いながら、お客様向けにSOC、CSIRTの運用や脆弱性診断、セキュリティ教育の支援など担当。当社加盟セキュリティ団体(ISOG-JやNCA)への参加、発表なども行う。
デジタルフォレンジックの目的
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デジタルフォレンジックの目的は、デジタルデータの収集と解析、復元を通じてサイバー犯罪や不正行為、セキュリティインシデントに対して、解析技術を通じて立証し、法的対応を支援することです。これにより、企業は内部監査の強化や不正行為の抑止を図ることができ、デジタル証拠の確保はセキュリティ維持や紛争解決にも重要な役割を果たします。
デジタルフォレンジックの技術
デジタルフォレンジックには、証拠の正確な収集、保全や分析を行うためのさまざまな技術が使用されます。例えば、データベースやネットワークパケットの解析、データ復元、ログの調査などがあります。また、デジタル証拠の改ざん防止のために、証拠のハッシュ値やデジタル署名を使用します。収集、保全、分析した結果を証拠として扱う(報告する)ためには「Chain of Custody(チェーン・オブ・カストディ)」と呼ばれる管理プロセスが求められます。これは、デジタルフォレンジックに必要な一連の流れが、連続して適切に行われていることを表現したものです。
求められる技術と課題
デジタルフォレンジック分野では、情報社会の進展に伴うデータ量の増加に対応するため、高度な解析能力が求められます。たとえば以下の4つが挙げられます。
- データの暗号化技術の発展に伴った、暗号化されたデータを解読できる新たな技術
- クラウド環境でのデータ管理が一般化したことに伴う、クラウドデータの解析技術
- 証拠の完全性を確保するため、収集・保全の一貫性や、証拠の移動履歴を明確にする「Chain of Custody(チェーン・オブ・カストディ)」プロセス
- PCからスマートフォンまで多様化するデバイスに対応したフォレンジック技術
また、急速な技術発展に対し、人材育成やコスト管理も課題であり、国際的に異なる法規制への対応も求められます。
異なる分野へのデジタルフォレンジックの応用
デジタルフォレンジックは、サイバーセキュリティの分野で重要な役割を担い、不正アクセスや情報漏洩に関する詳細な解析を可能にします。これにより、企業はセキュリティの弱点を特定し、さらなる不正行為を防止できます。また、フォレンジック技術はPCやスマートフォンから収集した証拠を元に、ダークウェブ上の不正取引の追跡にも活用されています。収集された証拠は法的手続きでの証拠としても利用され、デジタルデータであふれた世の中において、社会生活を営むうえでの信頼性維持に貢献しています。
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デジタルフォレンジックの未来展望
技術革新と新たな可能性
DXの推進などにより、様々なデータがデジタル化され、企業の取り扱うデータはギガバイトから、テラバイト単位となることも珍しくありません。デジタルフォレンジックの技術は、ビッグデータ解析やAIの導入により、膨大なデータから証拠を抽出する精度と効率が向上しています。さらに、スマートフォン、クラウドやIoTなどの新たな技術環境への対応が進んでいます。
サイバーリスクから事業を守るためのフォレンジック技術
サイバー攻撃(ランサムウェア)の被害が増える現在、サイバー攻撃は常に受けるという認識を持つ必要があります。被害にあった企業は、監督省庁や取引先を含めた対外報告が必要です。そのためには、デバイス間の通信を解析し、不正アクセスやインシデントの被害範囲や情報漏洩規模の特定が行えるデジタルフォレンジックが重要です。企業だけでなく個人にとってもセキュリティ強化につながり、今後の社会的な信頼性を支える重要な技術となっています。デジタルフォレンジックは、ますます複雑化するデジタル社会において、その重要性を増し続けるでしょう。
富士ソフトではセキュリティ対策のコンサルティング、環境構築、運用・保守までトータルでサポートいたします。フォレンジック調査にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。
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