「お客様に伴走する」。クラウド化支援でお客様の目的達成を目指す
今や多くの企業に迫られているクラウド化。拡張性や機能面、オンプレミスサーバーの契約更新などから、クラウドへの切り替えを迫られている企業も少なくないでしょう。しかし、クラウド切り替えにおける作業者への負担は大きく、一時的にシステムを止めることにもなるため、簡単には決断ができません。クラウド化の支援を行う富士ソフトもまた、クラウド化の理想と現実を知っているからこそ、丁寧にご説明を行っています。小学校教諭というキャリアを持ち、プリセールスとしても活躍する岩品 慶子に、クラウド化を考える際に重要なことを聞きました。
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岩品 慶子
2017年、小学校の教諭から転職し中途で富士ソフト入社。ソリューション事業本部 インフラ事業部 インフライノベーション部でVMware導入の大型プロジェクトなどを経験した後、「VMware Cloud on AWS」などクラウドをメインに担当し、現在はGoogle Cloudを担当。
小学校の教諭がIT業界へ
──富士ソフトに入社した経緯を聞かせてください。
私は教育学部を卒業し、新卒で小学校の教員になりました。学校を辞めて企業に勤めようと思ったのは、働き始めて3年目のことです。初めて企業勤めを経験した教員と出会って、自分との差に愕然としました。
自分なりに礼儀やマナーを学んできたつもりでしたが、その方は細かい言葉遣いなどがしっかりしていて「大人だな」と思ったのです。そのときに、自分も周りから「しっかりとした“大人”と見られる人になりたい」と感じたことがきっかけで、外の世界に興味を持ちました。教員は3年間経験しましたし、教員試験を受ければまた学校には戻ってこられる。そう自分に言い聞かせて社会に飛び出る決心をし、富士ソフトに入社しました。
VMwareからクラウド化のエキスパートに
──入社してから、どのような仕事をしてきましたか。
お客様のVMware(仮想化ソフトウェア)製品の運用保守からスタートしました。その後、VMwareのプリセールスを経験し、「VMware Cloud on AWS」が発表されてからは、その検証やセールスなどを担当しました。現在はGoogle Cloudをメインにクラウド製品のプリセールスを行っています。
ほとんどのお客様がオンプレミスからクラウドへ移行する際は、アプリケーション含めてクラウドに合わせた最適な設計を行い、直接Google Cloudに移行するのが理想だと考えているはずです。しかし、オンプレミスのVMwareからいきなりクラウドに移ると、組織体制の再構築や、運用者のスキルがすぐには追いついてこないことが課題となります。加えて、コスト負担が大きくなったり、期待するパフォーマンスがでなかったりなどもあり、容易ではありません。そのため、クラウドとオンプレミスの両方の特性をもつ「Google Cloud VMware Engine」などを経てクラウドへの移行を進めるお客様が多いです。
──どのような課題を持つお客様が多いのでしょうか。
これまでオンプレミスでVMwareを利用しており、移行後の体制や運用がネックとなり、一足飛びにクラウドに移行するのが困難なケースがほとんどです。完全にクラウドに移行するとなると、作業者に余裕がある状態でなければ行えません。
そこで比較的、運用へのインパクトが少ない「Google Cloud VMware Engine」など、VMwareのままクラウドに載せる段階を経てクラウド化したいと考えている企業が多いです。今はクラウド化の波が押し寄せており、経営サイドからの要請はあるものの、作業者が忙しくて手が回らず板挟みになっているシステム担当者も少なくありません。その理想と現実を聞きながら、最終ゴールを見据えつつ現状で無理のない最大限の提案をするのが私たちの仕事です。
──クラウド化する必要性を聞かせてください。
多くの事業者がクラウド上で便利なサービスの提供や、機能拡充をしているため、クラウドサービスは常に進化しています。クラウド化することで、それらの最新の技術やサービスを迅速に利用できるという、メリットが享受できます。もちろん、クラウドに最適化するようにアプリケーションの設計見直しが必要になることや初期費用などのデメリットはありますが、加速する社会の変化に追随する上で、クラウドサービスの利用は大なり小なり必須だと考えます。
クラウド化を上辺だけで終わらせないために。最適な提案をする大変さ
──クラウドへの移行を考える上で、重要なことを教えて下さい。
お客様の意識を変えることです。基盤だけクラウドに切り替えるのは、そこまで大変ではありません。7~8割はそれまでと同じように使えるので、お客様の負担も少ないです。しかし、オンプレミスの考え方をそのままクラウドに持ち込むと、クラウドの良さを十分に生かせない基盤になってしまいます。
クラウド化のメリットを最大限享受するにはアプリケーションの設計から見直すべきです。しかし、経営サイドからクラウド化を言い渡されて、予算や作業者リソースが足りない中で、「ひとまず基盤だけクラウド化したい」というニーズは一定数出てきます。
そういう場合であっても、クラウド化における最終的な理想形のすり合わせを行い、ひとまずで基盤だけクラウド化することにした際に起こることを理解していただくのは必須です。そうでないと、お客様にプロジェクトが終わった後で不満を抱かせてしまうことになります。理解して、全てを知った上で一度でのクラウド化を諦めるのと、何も知らずに諦めるのでは、起こる結果に対しての納得感が全然違います。仮に全てをクラウド化しないという判断になったとしても、全てをクラウド化することのメリットを理解していただくことが重要だと思っています。
──「ひとまず基盤だけクラウド化」という選択をするとどんなことが起こるのでしょうか。
先々のアプリケーションのクラウド化などを見据えずに、基盤だけのクラウド化を行ってしまうと、「クラウド化したのに何も解決していない」「むしろ使いにくくなった」というような問題が発生します。
最終系を見据えずに、目先のものだけクラウド化を進めるとトータルではコストも時間も余分にかかってしまうため、ひとまずは基盤など一部のクラウド化だとしても、最終的に目指す姿を見据えて進める必要があります。
──仕事をする上で、意識していることがあれば聞かせてください。
お客様に伴走することです。私たちが定義する伴走というのは、私たちが適切な答えを提示することではなく、お客様が答えを出せるよう寄り添いサポートしていくことです。それは私たちがお客様の代わりに走ることでも、お客様を走らせることでもありません。走っているお客様に寄り添うのが重要なのです。
日頃からお客様に寄り添うことを意識するために、先輩たちからも「富士ソフトの社員のつもりでサポートをしない。お客様の会社の社員になったつもりでいろ」とよく言われます。
──伴走する上で大事にしていることはありますか。
お客様をしっかり理解することです。どんなにシステムの知識を持っていても、お客様を正しく理解し、お客様の目的達成に貢献していなければ、ただの技術屋でしかありません。お客様の中長期経営計画などを読み込み、現在どのような状況でどんなビジョンに向かって走っているのか理解していきます。
また、BtoCのサービスなどを運営するお客様の場合は、エンドユーザーについての理解も欠かせません。クラウドに移行するためには、システムを止めざるを得ないことも多いです。その際に、システムを止めることでお客様のサービスにどんな影響が出るのかを理解した上で作業に臨む必要があります。お客様の被る損失を最小限にするために、細心の注意を払っています。
クラウド化で最も大事なのは「目的を明確にすること」
──クラウド化を進める中で大変なポイントを教えて下さい。
最終的な目的を見据えて、それを実現できるクラウドサービスを考えることです。一口にクラウド化と言っても、各サービスによって特色があるため目的によって適したクラウドサービスは変わってきます。それは良し悪しではなく、企業の叶えたいことによって適したクラウドサービスが異なるため、まずはクラウド化によって何を叶えたいのか明確にすることが重要です。自社の目的を達成するためにはどのクラウドサービスが合っているのかよく考えて判断していただくことが大切だと考えています。
──自社に合わないクラウドサービスを選ぶとどうなるのでしょうか。
運用負荷が高くなりすぎるなどの弊害が発生し、最悪の場合は別のクラウドサービスに改めて移行し直すことになります。実際に、現在関わっているお客様の中には、他のSIerに依頼し数年前にインフラをクラウド化したものの、いざ運用を開始してみたら使いにくい部分が多々出てきて、別のクラウドサービスへの移行を検討しているお客様もいます。
このお客様の環境は、高いセキュリティレベルを担保しようとすると、ほんの軽微な作業の権限すら各システムの担当者に渡せないという状態になっていました。結果的に、導入したクラウドサービスの基盤を保守しているチームが全て作業しなければならず、運用保守の負荷が高くなってしまったのです。現在は子会社で、別のクラウドサービスを試験運用しながら、適したクラウドサービスを選定しているところです。
──最後に岩品さんが大事にしている考えを聞かせてください。
大きな視点を持って考えることです。たとえばお客様に提案する際に、どうしても具体的な製品名などを早めに提案してしまいそうになる時があります。しかし、本当に大事なのは、どの製品を選択してもらうかではなく、お客様が何を実現したいのか考えること。お客様の目的を叶えるために何が必要なのか常に意識するようにしています。
※ 記載されている会社名、製品名は各社の商標または登録商標です。