VDIの安定稼働に必須なパフォーマンス管理【ControlUp】
2019年11月12日
鈴木 博(富士ソフト株式会社)
企業の情報システムにとって、安定稼働は最も重要なポイントです。富士ソフトでは、そのために必要なパフォーマンス監視・分析ツール「ControlUp」の提供を予定しています。「ControlUp」では何が可能となるのか、その特徴、導入のメリットについて、エンジニアが解説します。
パフォーマンス問題への適切な対応が、企業のICT活用における切実な課題に
ICTの活用がビジネスのあらゆる領域に深く浸透する中、企業にとって1つの重要な課題となるのが、システムのパフォーマンスの問題です。例えば、アプリケーションを利用していて、データ投入などの操作を行った後、即座にレスポンスが返らず待ち時間が生じてしまうようであれば、それは業務生産性の低下につながってしまいます。あるいは、最近、業務の現場ではRPA(Robotic Process Automation)なども広く普及してきていますが、そうしたツールを用いてプロセスの自動化を図っても、実行環境において十分なパフォーマンスが得られなければ、やはりツールの価値を最大限に享受しているとはいえないでしょう。
もっとも、今日の企業のシステムでは、オンプレミス環境もあればクラウド環境もあり、また仮想化基盤上で動いているものもあれば物理サーバで動いているものもあるといった具合で、さらにそれらが互いに連携し合っていたりして、ますます複雑さが増している状況です。そのような中で、それぞれのパフォーマンスを適正に把握して、問題点を見つけ出し、統合的な視点で問題の解消やその維持向上を図っていくことは、まさに至難の技です。
そうした状況を見据え、富士ソフトが注目し、国内のお客様への提供に向けた準備を進めているのが、イスラエルのツールベンダーであるControlUp Technologies社が提供するパフォーマンス監視・分析製品「ControlUp」です。このツールのユーザーは、欧州を中心に米国やアジアなどグローバルな市場に広がっており、高い評価を受けています。
この製品では、オンプレミスで運用している物理サーバ環境のシステムはもちろん、クラウド上のIaaS/PaaS環境、そしてOffice 365などのSaaS環境も含めたパフォーマンスの監視、分析、可視化を、統合化された管理インタフェースを通して実現しています。クラウド上のIaaS/PaaS環境を列挙すれば、VMwareやHyper-V、あるいはNutanixのHCI(Hyper-Converged Infrastructure)上の仮想化環境、CitrixやHorizon、Windows Virtual DesktopなどのVDI(仮想デスクトップ)環境、さらにはAWS(Amazon Web Services)やMicrosoft Azureなどにも対応しています。
パフォーマンスの維持向上にかかわるプロアクティブな対応が可能になっているほか、問題発生時の対処も含めたトータルなフェーズをサポートしている点がその大きな特徴です。
問題への対処を行うためのスクリプトをクラウド上で共有する仕組みを用意
もう少し踏み込んで紹介しましょう。ControlUpには2種類の管理インタフェースが用意されています。1つは「ControlUp Real-time Console」と呼ばれるものです。ControlUpにより3秒ごとに行われる各システムに関するパフォーマンスチェックの結果をグラフィカルに画面上に表示し、リアルタイムな監視が行えるようになっています。画面自体はスプレッドシートライクな構成で、非常にシンプルかつ洗練されたものです。
「ControlUp Real-time Console」の画面例
各システムのCPUやメモリの消費状況など、現在どのリソースにどの程度のストレスがかかっているかをひと目で特定することができ、ドリルダウン操作によってより詳細な調査を円滑に実施していくことが可能です。
また、ControlUp Real-time Consoleでは、発見された問題に対する対処をこの画面上から行うことができます。具体的には、PowerShellやVBScript、WindowsのCMDなどのスクリプトで対処にかかわるプロセスを記述して実行できるようになっています。さらに、ControlUpが定常的に行う監視・分析の中で、特定の問題の発生が認められたときに、それに対処するためのスクリプトをControlUpでリアルタイムに自動起動するといった仕組みも備えています。
これに関し特筆すべきは、世界各国にいる多数のユーザーが、それぞれの環境で発生した問題への対処に臨んで作成したスクリプトを、クラウド上で共有する仕組みが整えられていることです(ユーザーが許可した場合のみ)。つまり、過去に他社で発生したのと同じ問題に直面した際には、クラウドで共有されているスクリプトをダウンロードして、速やかにトラブルへの対処を図ることができるのです。こうしたことが、運用管理者の手間を大きく軽減することにつながることは言うまでもないでしょう。
稼働状況を踏まえて推奨構成を提示。最適なリソースプランニングを支援
一方、ControlUpが提供するもう1つの管理インタフェースが「ControlUp Insights」です。こちらの画面では、CPUやメモリの使用率など、パフォーマンスに影響のあるリソースの状況にかかわる時系列での推移といった各種統計情報などを、システムやアプリケーション、さらにはスレッドといった単位で表示できるようになっています。それに基づいて運用管理者は、個々のシステムについて、あるいはシステムを横断して、パフォーマンスにかかわる分析を行い、洞察を得るのに役立てることができます。
さらに、システムの利用者がログインに何秒かかっているかなど、ユーザーエクスペリエンスの観点に立った情報も得られ、利用者目線でのパフォーマンス改善を進めていくことも可能です。
また、ControlUp Insightsでは、システムのパフォーマンス状況を踏まえて推奨構成を提示してくれる機能も用意されています。例えば、連日CPUやメモリの使用率が高いマシンはヘビーユーザーと判断してリソースの増強を提案。平常時に対して急激なCPU使用率の上昇が見られたマシンへは、リソース増強ではなく原因となっているプロセスを特定してエラーを通知します。このように最適なリソースプランニングが可能となり、リソース不足によるパフォーマンス劣化が防げることに加え、逆に過剰なリソース増強を避けることができ、コスト最適化も期待できます。
「ControlUp Insights」の画面例
なお、開発元のControlUp Technologies社では、今後、英国のRunecast Solutions社との協業のもと、Runecast Solutions社が提供するVMware環境における可用性やセキュリティにかかわるリスクの把握と問題の発生を未然に防止するためのツール「Runecast」とのコラボレーションに向けた計画も進められています。ControlUpのコンソールにRunecastの機能を組み込んで、シームレスに利用できるような環境の実現が構想されています。
ますます複雑化する企業のシステム環境において、パフォーマンスにかかわる問題に頭を悩ませているお客様は多いはずです。富士ソフトが現在、その提供に向けての準備を進めているControlUpに、ぜひご期待いただければと思います。
富士ソフト株式会社
ソリューション事業本部
インフラ事業部 VMソリューション部 第1技術グループ 主任鈴木博
ネットワーク構築や仮想化基盤構築等の経験を生かし、社内でいち早くVMware Workspace ONEへの取り組みを開始し、多くの導入実績を有する。また後進の育成や公演活動により、Workspace ONEを広める活動も行っている。デジタルワークスペースやエンドポイント管理の知識をはじめ、豊富なインフラ構築の知見や教育者としての経験を活かし、エンドユーザに寄り添い、環境構築、運用支援を行うことを活動の指針としている。