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帯域確保からコスト削減まで ~事例に見るVeloCloud導入効果~

2019年12月25日
佐藤 浩(富士ソフト株式会社)

サーバなどで広く利用されている仮想化の技術は、ネットワークでも利用が広がっています。その中でも広域通信網のWANの仮想化には、「SD-WAN」と呼ぶ手法が用いられます。富士ソフトでは、VMwareのSD-WANサービス「VeloCloud」により、従来のWANにあった多くの課題の解決をサポートします。VeloCloud導入の事例から、SD-WANの効果を確認していきましょう。

VeloCloudはグローバルで2000超の企業が導入

ネットワークにも仮想化の波が押し寄せています。拠点間を結ぶ際に利用する広域通信網(WAN:Wide Area Network)の仮想化には、SD-WAN(Software-Defined WAN)が用いられます。物理的なWANの回線の上に仮想的なWANをソフトウェア技術によって構築する手法です。

VMwareの「VeloCloud」に代表されるSD-WANサービスには、大きく以下の4つのメリットがあります。

    • (1) 低コストで性能の高いWANを構築
    • (2) 導入や拡張の容易さなどの運用管理メリット
    • (3) 信頼性とセキュリティ向上を実現
    • (4) アプリケーションのクラウド移行との高い親和性

グローバルでは2000を超える先進企業がすでにVeloCloudを導入して、様々なメリットを手中に収めています。小売・サービス業、テクノロジー企業や通信サービス事業者、建設、金融など、幅広い企業に導入が進んでいるのです。これから紹介する事例はVeloCloud導入のごく一部ですが、SD-WAN利用のヒントが得られることでしょう。

【小売業の事例】WANのボトルネックを解消

ある小売業者では、店舗と本部、クラウドを結ぶWANの帯域が業務のボトルネックになっていました。店舗からの通信トラフィックは急速に増加しています。POS(販売時点管理)やCRM(顧客管理システム)のデータだけでなく、デジタルサイネージやキオスク端末などの通信、ポイントやクーポンなどクラウドサービスとの連携など、従来では考えられなかったようなトラフィックが重なり、WANの10倍の帯域幅が求められるような状況でした。しかしWAN回線は高額で、多くの店舗の帯域幅を増強するコスト負担はできませんでした。

そうした中でVeloCloudを採用したこの小売業者は、インターネット回線、モバイル回線、既存のWANなどを組み合わせて店舗と本部を結ぶSD-WANを構築しました。これにより、高スループットで信頼性の高いWANを、低コストで導入できたのです。

運用面でも、数多くの店舗に対してVeloCloudの端末機器を設置して回線に接続するだけで、本社側の回線設定が自動的に実装されるゼロタッチの導入が実現できたほか、運用管理も仮想化基盤上で行えるため、現地に情報システム担当者が赴くことなく行えるようになりました。

SD-WAN導入メリットのうち、(1) のコストと性能、(2) の運用管理のメリットを大きく得られた事例です。(4) のクラウドサービスとの高い親和性のメリットも、小売業者が採用するポイントサービスなど多様なクラウドアプリケーションとのスムーズな連携で生かされています。

ある小売業者は、店舗と本部を結ぶSD-WANを導入

ある小売業者は、店舗と本部を結ぶSD-WANを導入

【テレビショッピング事業者】動画を短時間で転送

次に、テレビショッピング事業者の導入事例を見てみましょう。そのテレビショッピング事業者は、テレビ放送でショッピング番組を放映するだけでなく、インターネット上でも同じコンテンツを視聴できるようにして顧客のタッチポイントを増やす施策を採っています。そのために、放送終了後にMPEG動画をCDN(コンテンツ配信ネットワーク)事業者に向けてアップロードし、インターネットから再視聴できるようにしています。

課題は、テレビショッピング事業者とCDN事業者の間を結ぶWANでした。ルータの仕組みと回線の制約から、スループットは90Mbps程度に限られます。1時間分の放送のデータの転送には3時間以上必要で、転送に失敗したときは再度3時間かけて転送する必要がありました。

VeloCloudを導入することで、100Mbpsインターネット回線を4回線利用したSD-WANを構築。導入後のスループットは約380Mbpsに達し、1時間の番組の動画データを1時間以内に転送できるようになりました。同時にWAN回線からインターネット回線に変更したことで、帯域が増えながらコスト削減も実現しました。この事例では (1) のコストと性能の効果が突出したメリットとして得られています。

あるテレビショッピング事業者は100Mbpsインターネット回線を4回線利用したSD-WANを構築

あるテレビショッピング事業者は100Mbpsインターネット回線を4回線利用したSD-WANを構築

【オフショア開発】セキュリティと管理の面で効果

もう1つは国内の設計会社による検証事例です。ベトナムでCAD作図を行っており、日本とベトナムとの間でやりとりする通信基盤をSD-WANで構築することで、セキュリティと性能、管理の側面で効果があることを実証しました。

この事例では、3次元のデジタルデータを共有する必要があり、大容量のデータ通信を安定して行う必要がありました。また、IP電話、テレビ会議などのコミュニケーション環境も不可欠です。

そこで、日本とベトナムの間で、VeloCloudを使ったSD-WANによるプライベートネットワークを構築し、大容量のファイルの転送とテレビ会議システムの通信における効果を測定しました。

既存の1Mbps帯域保証のIP-VPN網では、月額約25万円のコストをかけて、スループットは800kbps程度。100MBのファイル転送には17分近くかかっていました。

VeloCloudではベトナム側に45Mbps×2、日本側に100Mbpsのインターネット回線を用い、コストは月額約1万円と大幅に下げられました。スループットも実測で5M~15Mbpsと格段に向上、100MBのファイル転送も約40秒とスムーズになりました。テレビ会議は映像の途切れや音声の遅延もなく現状と同等の評価が得られました。

VeloCloudの検証結果

現状 VeloCloud
回線種別 1M帯域保障
※IP-VPN
45Mベストエフォート(VN)
45Mベストエフォート(VN)
100Mベストエフォート(JP)
コスト 約25万円/月 (現状) 約1万円/月
スループット
ファイル転送
テスト結果

通信速度
(Download)
0.8Mbps
理論値
50MB 100MB
500S 1000s
実測 5~15Mbps
50MB
1回目 19s
2回目 25s
3回目 22s
100MB
1回目 41s
2回目 38s
3回目 41s
TV会議 (XVD) 現状と同等
途切れ・音声の遅れなし

VeloCloudを利用することで、ベトナム側では国際WAN回線を冗長化でき、万が一海底ケーブルの切断事故があっても別ルートに迂回できる信頼性も確保。海外拠点であっても、導入や設定管理が日本から遠隔で行える点もメリットとして得られています。コスト、運用管理、信頼性まで、幅広い効果が得られる事例と言えます。

コミュニケーション基盤は、どのような業種であっても不可欠です。LANやインターネットだけでなく、拠点を結ぶWANにも「ネットワーク仮想化」という従来と異なる視点を導入することで、現状の“高いコストを払いながら性能や信頼性に満足できない”という状況から脱却できる可能性があります。VeloCloudに代表されるSD-WANを、今後のWAN構築の柱として検討する時代がきているのです。

富士ソフト株式会社 ソリューション事業本部 インフラ事業部 クラウドソリューション部 第2技術グループ 課長 佐藤 浩 (vExpert)

富士ソフト株式会社
ソリューション事業本部
インフラ事業部 クラウドソリューション部 第2技術グループ 課長

佐藤 浩 (vExpert)

富士ソフト株式会社でネットワークインフラの提案から導入までを担当。同社のネットワークスペシャリストでオンプレ、仮想、クラウドなど様々なネットワークの提供に加え、標的型攻撃を中心にセキュリティ対策、脆弱性診断および大規模クラウドシステムのSOC 運用に従事。5年前にVMware NSX に触れ感銘を受け、NSX専門部隊を立ち上げる。最近、Azure VMware SolutionsやVeloCloudといったVMware社のクラウドソリューションに強く惹かれながら地道に提案活動、セミナー、記事寄稿を行っている。

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    仮想化の技術はネットワークの世界でも活用されるようになってきています。その中でもこれまで難しかった広域通信網のWAN(Wide Area Network)の仮想化が、「SD-WAN」と呼ぶ技術で実用化されてきました。富士ソフトでは、VMwareのSD-WANサービス「VeloCloud」を提供し、WANの課題解決を支援します。

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