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失敗しないVDIの導入方法

2019年12月06日
古谷 正和(富士ソフト株式会社)

国を挙げた働き方改革への機運の高まりと共に、リモートワーク(テレワーク)が注目されており、そのソリューションとしてVDI(仮想デスクトップ)の導入を検討する企業が増えています。しかしその一方で、VDIの導入よりも低価格のパソコンを購入したほうが得策なのでは? という企業も少なくありません。そこで、VDIにまつわるさまざまな疑問を解消し、よりよい選択と運用を実現するためのポイントを紹介します。

VDIの導入コストの考え方は視点を変える

社員の多様な働き⽅への対応、生産性の向上、障がい者や遠⽅居住者を含めた新規雇⽤の創出、ワークライフバランスの実現、事業継続性の確保(BCP対策)、環境負荷・オフィスコストの低減などを実現すべく、リモートワークを指向する企業が増えています。

このリモートワークをITの側面から支援するソリューションとして、VDI(仮想デスクトップ)が注目されています。

VDIのメリットを述べると、端末にデータを残さないことによる「セキュリティの⼤幅な向上」、端末とサーバ間のデータ送受信は画⾯情報のみで済むことによる「ネットワーク帯域の⼤幅な削減」、使用するOSやアプリケーションを統一した「作業環境の標準化」などが挙げられます。これらの特長を生かすことで、自宅やサテライトオフィス、あるいは移動先で仕事をするユーザーに対して、快適かつ安全なITの利用環境を提供することが可能となります。

VDIによるリモートワークのイメージ

VDIによるリモートワークのイメージ

ところで、現在では10万円も出せば、一般業務には十分なスペックを備えたパソコンを購入することができます。一方、VDIの導入コストを案分すると、端末一台あたり20万円近くとなり、「そこまで割高になるのなら、これまでどおりパソコンでいいじゃないか」という意見に押し切られることになってしまいます。

しかし、VDIの導入コストの考え方は、パソコンの購入時とはまったく異なります。多数のパソコンの運⽤を⼀元化する管理コスト、データ流出やパソコン紛失などのリスク対策費⽤、災害対策費用などをトータルに勘案することで、VDIはパソコンを上回るコストメリットを見出すことができるのです。

VDI導入は目的を明確にする

VDI導入の検討を進める中で、「予想以上にコストが膨らんでしまい、結局中止になってしまった」「何から始めたらいいのかわからない」といった壁に直面した企業の声も聞こえてきます。実際にVDIを導入したあとも、「構成から導入、運用まで十分なサポートを受けられなかった」「社内に展開してからの運用や管理が導入前よりも大変になった」「導入してみたが、遅い、重いなどユーザーからのクレームが多い」「過度なスペック、必要のない新機能などを盛り込んでしまい、コスト高になってしまった上に、ほとんど使いこなせていない」といった悩みを抱える企業が少なくありません。

そもそもVDIの導入では、明確な目的が必要不可欠です。BCP(業務継続計画)を強化したいのか、管理性を向上したいのか、それとも働き方改革を推進したいのかといった、方向性をはっきり定めておく必要があります。

また、ユーザーのニーズもひとまとめにすることはできません。特定のアプリケーションを利用できればよいというユーザーがいれば、多種多様なアプリケーションを必要とするユーザーもいます。また、メールやWebなど軽い作業が中心のユーザーがいれば、CADや動画編集などで高度なコンピューティングパワーが必要なユーザーもいます。ユーザーがパソコンに求める要件はさまざまなのです。

こうした点を踏まえつつ、経営者、情報システム部門、そして業務現場のエンドユーザーが満⾜するVDI環境を構築するためには、現状のIT利用環境のアセスメントをしっかり実施し、問題点を分析した上で要件を明確化し、ニーズに合わせたソリューションを選択する必要があります。繰り返しますが、まず⽬的を明確化することです。そこではじめてVDIがコストに⾒合った課題解決となりえるのかどうかの検討が可能となるのです。

その意味で、VDIの導入に際しては、豊富な導入実績をもつシステムインテグレータ(SIer)をパートナーに選定し、アセスメントからPoC(機能確認)、設計・導入計画、テスト導入、導入・展開、拡張計画にいたるプロジェクトを共に進めていくことをおすすめします。

高いスキルとノウハウをもつSIerは、既存のIT環境に対して「どのようなアプリケーションを使っているのか」「どのようなパターンで使っているのか」「どのくらいのデータ量か」「どのくらいの⼈数が使っているのか」といったアセスメントを実施します。そして、今後に向けて「必要となるアプリケーションは何か」「どのように管理したいのか」といった潜在的なニーズを分析し、具体的な導⼊内容を検討します。

その後、PoCの結果と合わせ、その企業のVDI環境に必要なリソースやスペックなどの要件を具体化していきます。また、この段階で、不可⽋な機能と不必要な機能を明確にし、導入コストの最適化を図ります。

さらにSIerは、全社⼀⻫の移⾏が困難である場合、⽐較的軽い作業を主とするユーザーから段階的な移⾏を提案するなど、円滑な移行・展開計画をサポートします。VDIの導⼊は、検討から展開まで綿密な計画に基づいた長期的なプロジェクトです。だからこそ、成功のためには信頼できるパートナーの存在が欠かせないのです。

VDI導入におけるシステムインテグレータの役割

VDI導入におけるシステムインテグレータの役割

富士ソフト株式会社 エリア事業部 インテグレーション&ソリューション部 システムインテグレーショングループ 主任 古谷 正和(vExpert)

富士ソフト株式会社
エリア事業部
インテグレーション&ソリューション部 システムインテグレーショングループ 主任

古谷 正和(vExpert)

前職含め2010年頃からVMware製品にエンジニアとして携わる。現在は西日本を活動拠点としVMware製品を中心に提案から構築まで幅広く担当している。これまでに複数の大規模仮想化基盤のプロジェクトへ参加。

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