富士ソフトが医療機器の開発に取り組んでいることはご存じでしたか?
当社は、組み込み機器などのハードウェア開発やソフトウェアの開発、ネットワーク、クラウドなどITに関する幅広い知見を医療の分野にも広げ、IoMT(Internet of Medical Things)ビジネスを推進しています。 今回は、医療機器の開発に必要なIEC 62304規格と、富士ソフトのIoMTビジネスについてご紹介します。
富士ソフトが医療に取り組む背景
私は現在、主に医療機器の受託開発を担当しています。制御系の組み込みシステムの開発やWebシステムの開発等、幅広く経験を重ね、2012年頃からは医療機器の開発にも携ってきました。生体情報を検査する医療機器など複数の医療機器メーカー様との開発実績を積み重ね、2016年には医療ソリューションを立ち上げました。
当初、まったく受注につながらず改善策を検討する中で、医療機器ソフトウェアライフサイクルプロセスの国際規格であるIEC 62304が非常に重要であり、ニーズが高いということが分かりました。そこで2017年頃からは、医療業界のトレンドやIEC 62304について学び、知識をつけ、お客様に医療機器開発コンサルティングサービスの提供を開始しました。IEC 62304への対応力を強みとすることで、お客様からの信頼度が大きく向上したと感じています。
「IEC 62304」とは何か
IEC 62304は、医療機器ソフトウェアの安全性と信頼性を確保するために、その開発や保守などに関する要求項目を規定した国際規格で、2006年に発行されました。医療機器に使われるソフトウェアのライフサイクルプロセスについて、欠陥を作り込まないようエビデンスを文書として残すことを重視したもので、医療機器開発の規格層の中でプロセス規格層に該当します。
2017年11月25日以降に製造販売される医療機器ソフトウェアは、IEC 62304への適合が必要だと薬機法で定められています。つまり、日本で開発した医療機器の認可を求めるときは、この規格に準拠している必要があります。
富士ソフトのIoMTビジネスとは
2017年は「IoT元年」とも呼ばれ、世の中でもIoT(Internet of Things:モノのインターネット)という言葉がよく使われました。そして、IoTの中でも、医療やヘルスケアの領域に特化したものは「IoMT(Internet of Medical Things)」と呼ばれています。
IoMTは、さまざまな医療機器やデバイスをインターネットで接続し、医療データの収集や解析をリアルタイムで実現する技術や概念を指します。このように、インターネットで情報をやり取りし、クラウドなどのサービスを使うことが世の中で広がってきました。医療機器のIoT化促進は、国の方針としても掲げられています。
一般的な医療機器メーカーは製造業で物を作る企業であり、ネットワークやクラウドなどの連携は慣れていない場合があります。特に確実な技術が求められる医療機器業界は、先端技術を追い求める業界ではなく、2018年頃から「インターネット」「Web」「クラウド」のワードが聞かれるようになりました。そんな医療機器メーカーを支えるためには、法規制対応の知見はもちろん、セキュリティに関する技術やIoTの技術が必要となります。
当社は、組み込み機器、ネットワーク、クラウド技術が必要なIoTの技術力、あらゆるセキュリティ対策を考慮したシステム開発、そして、IEC 62304のコンサルティングによる法規制対応、それら全ての支援をトータルソリューションとして対応できます。ITのプロフェッショナルとして、医療機器業界のIoMTの発展をしっかりと支えていきたいと考えています。
IEC 62304に対応した開発事例
IEC 62304に対応した実際の事例として、細胞診断を行う医療機器を開発しているメーカー様との取り組みをご紹介します。細胞診断装置の開発、および顕微鏡で撮影した映像をクラウド経由で送信し、遠隔診断などに使用したいという案件でした。このお客様は、医療機器の開発実績が少なく、またIEC 62304への対応は実績がありませんでした。そこで、ハードウェアおよびソフトウェアを含む細胞診断装置の開発、遠隔診断のためのクラウドシステムの開発、IEC62304対応のためのコンサルティングまで、トータルでご依頼いただきました。
細胞診断装置の映像をクラウドで送信し、遠隔で制御することは技術的な難易度が高いものですが、このシステムではビデオ会議などで使用される「WebRTC」という技術を採用しました。映像をリアルタイムに配信する技術で、細胞診断装置上で対象物を動かしているときに映像がぼやけていても、対象物を止めると徐々にきれいに表示されます。
細胞診断装置の新規開発と遠隔制御のためのクラウドシステムをIEC 62304に対応して開発する必要があり、コンサルティングを含めて対応しました。
細胞診断装置の細胞を撮影する部分はお客様の得意とする分野ですので、その他のハードウェアやソフトウェアの開発、クラウドでの連携などの部分を当社の技術力と知見で支援しました。
医療機器の開発を支えるチーム
医療機器のソフトウェア開発を支援している私のチームは、コンサルティングから開発まで対応できる医療機器開発に特化した約100人規模の専門部隊です。
私が長年にわたり医療業界に携わり、IoMTビジネスを推進している目的は「社会貢献」です。当社にはソフトウェア開発の技術者は数多くおりますが、「自分だからできる社会貢献」を目指し、本当の価値を高めていきたいという想いで取り組んでまいりました。その想いは今も変わらず、「私のチームだからできる社会貢献」を目指して推進しています。
現在、当社がソフトウェア開発を支援した医療機器は病院に導入され、実際に患者様の診療にご利用いただいています。これからも人の命に寄与する責任感をしっかりと持ちながら、医療機器メーカー、そしてそれを利用する患者様のためITのプロフェッショナルだからできる支援に取り組んでいきたいと考えています。
まとめ
富士ソフトでは、IEC 62304という規格についての知見や、IoMTのノウハウを通じてお客様へのコンサルティングやシステム開発を支援しております。ぜひお気軽にお問い合わせください。
詳しくはこちら
次の記事はコチラ
『医療情報システム開発におけるセキュリティ対策、「3省2ガイドライン」への取り組み【第2回】』
関連の記事はこちら
『医療機器の開発に取り組む富士ソフトが注目する「IEC 62304」とIoMT【第1回】』
『医療情報システム開発におけるセキュリティ対策、
「3省2ガイドライン」への取り組み【第2回】』
『富士ソフトの医療機器開発におけるサイバーセキュリティ対策、
JIS T 81001-5-1への取り組み【第3回】』
『これからの医療分野のセキュリティ対策と、
富士ソフトが目指す医療機器開発ビジネス【第4回】』