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Microsoft Build 2023 にみる技術動向 OpenAI モデルをすべてのレイヤーへ搭載。Copilot stack でアーキテクチャーを標準化して提供。

Microsoft Build は、米国 Microsoft 社が年次で開催している最大級の開発者向けイベントです。Microsoft Build 2019 を最後にデジタルでの開催が続いていましたが、今回の Microsoft Build 2023 は、シアトル会場とデジタルのハイブリッドでの開催となりました。
最近の Microsoft 社の急激な技術動向の変化を肌で感じるために、私も現地でイベントに参加しています。今回、シアトル会場から速報という形で、初日に開催されたキーノートの内容を紹介します。

Microsoft社CEOサティア・ナデラ氏のキーノートでは、主要なテクノロジーのアナウンスがありました。最近の動向では、Microsoft社は、OpenAI で開発されたモデルを新しい AI スタックとして、すべてのレイヤーへの搭載を進め、毎週のように新しいサービスや機能をリリースしています。GitHub Copilotに始まり、Microsoft Power Platform、Microsoft 365、Microsoft Viva、Microsoft Dynamics 365、セキュリティ、Microsoft Edge、Microsoft Bing でも Copilotをリリースしてきています。
Microsoft Build 2023のキーノートでは、50 以上のアップデートの中から5 つの技術がハイライトとして紹介されました。以降紹介された技術について説明します。

ChatGPTへの Microsoft Bing の提供

OpenAI の ChatGPT に Microsoft Bing が搭載され、Microsoft Bing のクロール、インデックスを利用して、最新の情報を扱うことができるようになりました。無償で利用しているユーザーも利用できるようになる予定と紹介されました。
ChatGPT でも、Bing AI Chat のようにタイムリーな情報を扱うことができるようになり、最近の出来事等に関連した質問が可能になります。また、回答の引用元も回答に含まれるため、詳細や事実確認ができるようになります。

Windows Copilot

Windows Copilot を利用することで、すべてのユーザーが Windows のパワーユーザーになれると紹介されました。Windows Copilot は、Windows に統合されており、AI アシスタントとして機能します。PC のパーソナライズや操作も可能です。デスクトップのサイドペインに配置することで、常に Windows Copilot を利用でき、ドキュメントも扱えるので、PDF ドキュメントをドラッグして、容易に文書の要約を行うことも可能です。プラグインを使用すれば、Microsoft Teams へメッセージも送れます。統合された AI アシスタントを利用することで、デスクトップ上の様々な作業を効率的に行えるようになります。
Windows の AI アシスタントというと、Cortana が思い出されます。デスクトップで利用できる AI アシスタントというコンセプトは過去にもありましたが、大規模言語モデルを活用することで、より便利に洗練され、生まれ変わった印象を受けます。

Copilot stack

Microsoft 社が開発してきた各 Copilot は、すべて共通のアーキテクチャースタックで開発されています。これをCopilot stackとして公開することで、開発者がカスタムのCopilotを既存のアプリケーション向けに開発できるように進められています。
AIインフラストラクチャから基礎的な各モデル、AIオーケストレーション、アプリケーション向けのCopilotとプラグイン拡張まで包括的に提供される予定です。プラグインによる拡張では、ChatGPT、Microsoft Bing Chat、Microsoft 365 Copilot、カスタムのCopilotでも共通の仕組みで提供されます。開発者は、1つのプラグインを開発することで、複数のCopilot上で動作させられるようになります。
今回発表されたCopilot stackによってCopilotを構成する各スタックを標準化し、準拠しているスタック間の相互運用を可能にしたと思われます。ChatGPT、Microsoft Bing Chat、Microsoft 365 Copilot、その他の Microsoft 製品やサービスに搭載されるCopilotは、Copilot stackに準拠して開発されているため、プラグイン開発のメリットが大きいのではないかと考えます。

Azure AI Studio の発表

Azure AI Studio は、AIアプリケーションやカスタムのCopilotを開発するためのすべてのライフサイクルに対応するツールチェインと紹介されました。カスタムモデルの開発や、OpenAI、 OSSのモデルをカスタムデータでグラウンディングすることができます。Azure Cognitive Searchのベクター インデックスもビルドインされています。RAG(Retrieval Augmented Generation)、プロンプト エンジニアリング、プロンプト フローやオーケストレーションにも対応します。最も重要と説明されたAI Safetyもビルトインでサポートされ、Bing AI Chat の提供にあたり実施した安全に関わる作業を、機能として利用できるようにしたと説明されました。
Azure AI Studioは、Copilot stack上での開発に利用できます。大規模言語モデルで企業データを扱う際には、複数のプロンプトを開発し、制御、管理する必要がありますが、Azure AI Studioでは、複数のプロンプトを視覚的に管理できるため、今後の企業導入に向けて重要なツールになることが見込まれます。

Microsoft Fabric の発表

Microsoft Fabric は、Microsoft データ製品の中で、SQL Server 以来の最も大きなラウンチだと紹介されました。コンピュートとストレージを統合し、すべての分析スタックのプロダクトを統合、ガバナンスも統合できます。SQL や機械学習等の異なる分析業務も同じコンピュートインフラを利用できます。データは、SaaS 型のデータレイクである OneLake に保存され、保存されたデータは、モデルの学習データとしての利用や可視化、クエリ実行が可能です。データの専門家が必要とする各ツールも統合されています。さらに、Microsoft Fabric 向けにも Copilot が統合され、Copilot for Microsoft Fabric では、SQL文や、レポートの作成をトリガーベースで自動化できます。
Microsoft Fabricは、次世代のAzure Synapse Analytics、Microsoft Power BI等のデータに関連する製品・サービスを統合し、 SaaSとして提供されます。これまでは、別々の製品やサービスを組み合わせて構成する必要があり、ユーザー エクスペリエンス(UX)も統一されていませんでした。これらが、統一されたUXで提供されるため、フルスタックの分析プラットフォームの構築が容易になると考えます。

Microsoft Build 2023参加のため、シアトルを訪れました!

4 年ぶりの Microsoft Build への現地参加です。デジタルでは感じることのできない、エンジニア達の熱気に触れ、大きな刺激を受けています。新しい技術を吸収し、お客様にいち早くお届けできるように尽力してまいります。

   

この記事の執筆者

増田 裕正Hiromasa Masuda

エグゼクティブフェロー

Microsoft Microsoft Azure AI(人工知能)