富士ソフトは、会社のオフィスをインターネット上に再現した仮想オフィス空間「FAMoffice」を提供しています。「FAMoffice」に学校向けの機能を追加したサービスが「FAMcampus」です。FAMcampus はFAMofficeとどのような違いがあるのか、どんな特徴があるのかを紹介します。
FAMofficeが教育向けに発展
FAMcampusの開発は、株式会社学研塾ホールディングス様との実証実験からスタートしました。FAMofficeを使ってみて、「こんな機能があれば教育の場面でも使えそう」「こんな機能があれば面白い」と、新しい製品の仕様を検討していましたが、「あったら面白い」というのは、サービス提供者側による一方的な想いで、実際に必要とされている機能なのかは分かりません。そこで、塾に通っている子どもたちや保護者の皆さん、先生に対してインタビューやアンケート調査を実施しました。つまり、プロダクトありきの「プロダクトアウト」ではなく、ユーザーの視点に立って開発していく「マーケットイン」の考え方で開発を進めることにしたのです。
FAMofficeの使いやすさをそのまま活かし、FAMcampusでも、アバターをぶつけるだけでビデオ通話ができるといった直感的に機能が使えるUIを実現しています。このため、使い方が分からないという質問はほとんどありません。
オフィス向けのFAMofficeと教育向けのFAMcampusでは、利用者が異なります。FAMofficeの利用者は全員が大人ですが、FAMcampusの場合は子どもが中心です。子どもの後ろには保護者がいて、さらに教える先生がいて、管理する人や塾のオーナーさんがいます。
こういった背景や約1,500人を対象に実施したアンケート、インタビューの結果を考慮して、教育用途向けに追加開発した機能の例に「チャイム機能」があります。「チャイムが欲しい」と回答する子どもがいたわけではありませんが、「気持ちの切り替えが難しい」と回答する子どもはたくさんいました。自宅では漫画が読めたり、親が台所で料理を作っていたりするため、オンラインでの勉強には様々な誘惑があります。そこで気持ちの切り替えをスムーズにするためには、どうしたら良いかを考えました。「そろそろ授業を始めますよ」等の放送を流す方法も検討したのですが、試してみるとチャイムが鳴ることでスムーズに気持ちの切り替えができることが分かりました。学校や塾で授業の区切りとしてチャイムが鳴るのと同様に、FAMcampusでもチャイムを鳴らしています。これは大人のテレワークでは不要な機能でしょう。
単純なコミュニケーションツールではなく自分を表現するツールに
FAMofficeやFAMcampusでは、それぞれの参加者がアバターとして表示されます。大人であれば、アバターのデザインには特にこだわらず、名前が表示されたり、顔写真が表示されたりすれば十分と捉えることが多いでしょう。オンラインのツールはあくまでもコミュニケーションに使用します。
ところが、子どもにとってオンラインのツールは単純にコミュニケーションを取るだけのものではありません。例えば、自分を表現したいという意識があるため、ゲームなどと同じようにアバターのデザインにバリエーションを持たせています。髪の色を変えたり、髪飾りをつけたりするだけでも、FAMcampusを使用するときに楽しさを感じてもらえるのです。
また、学校や塾で入口や教室の横に掲示板があるように、情報を表示する掲示板も用意しています。ここには、クラス替えの情報や成績のランキングなどを表示するために、PDFや画像を登録できるようにしています。子どもたちにとっては周囲の人の存在がとても刺激になっているようで、ライバルや仲間の存在によって、学習意欲や競争心が育まれることが分かりました。これを見た子どもたちは、「またあの子に負けた」「またあの子がトップだ、すごいなぁ」と感じ、自分が頑張るときの「やる気」につながるのです。
さらに、時間設定の違いもあります。例えば、23時になると強制的にログアウトするような設定ができます。FAMcampusは楽しく勉強できるツールですが、友だちと夜遅くまで会話をしてしまうことや、先生たちが休みの日なのに無断の利用がないか見回らなければならない可能性があるからです。そこで、入館時間に時間帯や曜日などの制限を設けて、それ以外の時間は入れないような制御が可能になっています。
なお、学習塾には集団での授業だけでなく個別指導もあります。子どもによって、集団での授業と個別指導それぞれに合う子どもと合わない子どもがいることも分かってきました。例えば、サッカーや野球に取り組んでいるような子どもは、「みんなが練習しているから自分も練習する」というように、集団での授業に参加する傾向があります。一方で、「自分のペースで勉強したい」「周りはあまり気にしない」という子どもは、個別指導を選ぶ傾向にあります。FAMcampusは、どちらかというと前者との適合性が高いと捉えています。
FAMcampusは「仲間の存在を感じながら勉強する意欲をどうやって上げるか」を考えています。当初は、学習塾や通信制高校での利用をメインに開発したのですが、現在は学校の不登校や長期欠席者への対策にも使えそうだということが見えてきています。
ユーザー会で分かった利用者の反応
サービスを提供するだけに留まってしまわないように、私たちは教育現場に立つ先生方と「ユーザー会」を立ち上げて、月に1回や2週間に1回のペースで利用状況や課題などを直接お聞きするようにしています。
ユーザー会では、学習塾での授業後に小学生が中学生に話しかけていて、先生が驚いたというお話を伺ったことがあります。授業後に会話をすることはリアルでも日常的に見かけますし、小学校の学年が違う程度であればよくあることですが、小学生が中学生に話しかけるということは、コミュニケーションのハードルが下がっているのかもしれないと考えています。アバターであれば体格の違いは関係なく、気軽に話しかけられるのかもしれません。
一つの空間全体が一つのクラスのようになっているので、先生が知らないうちに、子どもが友だち同士になっていた例も少なくありません。塾は通うモチベーションがないとやめてしまう可能性があるので、塾に通うことを楽しい、勉強を頑張れると思ってもらう必要があります。
FAMcampusでは、授業後にオンライン上のミーティングルームに生徒たちが集まって勉強している状況があります。例えば、授業後に、「また30分後に会おうね」と調整して、自分たちで勉強しているのです。子どもたちが主体で、その中で勉強できる空間を塾側がFAMcampusで用意していると言えます。
もちろん、オンラインでの授業はWeb会議ツールでも対応できます。これらは授業の時間になると参加できますが、終了すると切断されてしまいます。すると、先生から生徒に授業中の反応についてフォローすることもできませんし、授業後に教室に残っている生徒に話しかけることもできません。
子どもたちが集まって勉強しているところに、先生が途中から入って話しかけることができるFAMcampusでは、コーチングのように、学習そのものが充実するようなアプローチが可能になっています。
これらが仮想空間で実現できるようになったことが、入塾生の成約率の違いにも表れているようです。リアルだけで実施している塾もありますし、Web会議ツールを導入している塾もあります。FAMcampusを導入している塾では、授業前後にも手厚いサポートを受けることができることから、保護者の皆さんから好評で、高い成約率につながっています。
リアルを追求するだけではない、リアルでできないことも実現する
上記で紹介したチャイムや掲示板などは、リアルに近いと感じられるかもしれません。しかし、FAMcampusが目指すのは、リアルを追求するだけでなく、リアルでできないことも実現することです。
例えば、多くの学習塾は駅前に集中していることが多いものです。都市部には多くの学習塾がありますが、郊外になるほど選択肢も少なくなってしまいます。通いたい塾があっても距離や時間の制約によってあきらめたというケースもあります。
しかし、家にいながら、市街地にある塾と同じ勉強ができるのはオンラインの良さだと感じています。長い時間をかけて電車などに乗る必要なく塾のサービスを受けられます。これは不登校対策でも同様です。家から出られないと学校に通えなくなってしまいますが、物理的な制約がないFAMcampusのような仮想環境だからこそ実現できることがあります。
このように、単にリアルと同じものを追求するのではなく、メタバースの特性を最大限に活用したサービスの展開を考えています。
FAMcampusではユーザー視点に立って検討し、バージョンアップをしていきます。興味がある方は、ぜひお問い合わせください。
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