Twitter
Facebook
Hatena
Microsoft Build 2018 にみるMicrosoftのビジョン

開発者向けカンファレンス「Microsoft Build」が、2018年も開催

場を体験することに価値がある

Microsoft社は開発者向けカンファレンス「Microsoft Build」を毎年開催しており、2018年は5月7日(月)~9日(水)に、米国シアトルで開催されました。Microsoft Buildとは、Microsoft社の最新のビジョンをはじめ、新しい技術や製品が最初に発表されるイベントです。新しい情報を収集するため、富士ソフトは2015年から毎年参加しています。
イベントでは、基調講演でMicrosoft社のトップや役員が登壇してビジョンを話すだけでなく、ブレイクアウトセッションでは製品の開発者が新しい機能をライブコーディングするなど、たくさんの貴重な体験ができます。基調講演はライブストリーミングされ、講演終了後には講演のオンデマンド視聴が可能になるため、「当日現地に行く必要がないように感じる」という意見も聞かれました。とはいえ、実際にイベントに参加した方がより理解度が高まることは言うまでもありません。
現地では「ハンズオン」のワークショップがあり、本社のトレーナーから直接説明を聞きながら最先端のテクノロジーに触れることができます。私も、2017年は海外の開発者とペアになってハンズオンに取り組みました。このような経験ができるのは、やはりその場で参加しているからこそだといえます。

Microsoft Buildでの刺激的な発表

最近のMicrosoft Buildでは、大きなサプライズといえる発表が少なくなってきています。これは、Microsoft社の製品がクラウドベースとなってきたために、機能追加が随時行われており、特定のタイミングでの新機能・新製品の発表が難しくなってきたからだと考えます。
Microsoft社は、「ここ数年は、開発者に向けて多様性をもったプラットフォームを提供していく」というメッセージに準じた製品リリースを粛々と行っています。Microsoft社が提供するのは、あくまでもプラットフォームです。そのため、富士ソフトのような開発パートナーが、Microsoft社から提供される様々なプラットフォームを熟知した上で、お客様の要件や状況にあわせて適切なプラットフォームを選択し、アプリケーションを開発・構築する必要があるのです。
Microsoft社と言えばWindowsのイメージが強いですから、Microsoft社のパブリッククラウドであるAzureで動かせるのはWindowsのみと思われている方もいらっしゃるかもしれません。実際は、Linux もサポートしていますし、モバイルではAndroid、iOSへの積極的な対応が進められています。ハードウェアの面でも、SurfaceのようなタブレットPCやSurface Hubといった新しいデバイスを発表しています。

ここ数年のMicrosoft Buildで最も驚いたのは、HoloLens (ホロレンズ) の発表です。このような全く新しい形のハードウェアが登場するのは、Microsoftが変化している象徴だと感じています。ハードウェアも含めてMicrosoft社で自社開発しているという意味では、メーカーとしての今後の立ち位置にも注目していきたいです。

今回のMicrosoft Build 2018 の特徴

Intelligence Cloud, Intelligence Edge

イベント初日の5月7日にはMicrosoft社CEOのサティア・ナデラ氏が登壇し、2017年に発表されたMicrosoft社の戦略である「Intelligence Cloud, Intelligence Edge」について、ビジョンを語りました。これは、クラウドで培ってきたAI技術をIoTなどで利用される比較的小さなデバイス(エッジ コンピュータ)でも利用可能にする、というものです。
その中で、今回は3つのキーワード「ユビキタスコンピューティング」「AI」「マルチセンス マルチデバイス」が登場しました。Microsoft社ではクラウドからエッジコンピューティングまでさまざまなコンピュータにプラットフォームを提供していますが、より我々の身近な部分にあるセンサーやデバイスまで広がってきたと感じました。例えば、オンプレミスとクラウドのハイブリッド環境でクラウドの一部を使えるようにする「Azure Stack」、エッジコンピューティングにまで拡張した「Azure IoT Edge」、家電だけでなくチップ単位まで広がる「Azure Sphere」などです。
いつでもどこでも必要に応じて一貫性のあるプラットフォームを選択できるようになることで、プラットフォームの制約によって本来実現したいことを断念し仕様を変更することなく、対象のシステムを実現できるようになってきたと考えています。

Opportunity & Responsibility

もう一つのテーマは、「Opportunity & Responsibility」(機会と責任)です。
電力などと同様に、コンピューティングパワーは目には見えないけれど、現代においてインフラの一つと言える状況になっています。分散コンピューティングが広がる中で、各業界では分析の対象と言えるような膨大なデータが作り出されています。センサーなどから蓄積された膨大なデータも含めて、リッチな体験を作っていくことが「機会」だと紹介していました。
一方の「責任」については、すべての人々に対してテクノロジーに対する信頼を得ていくことが挙げられます。テクノロジーが進化しても、現実の人間や将来の世代に対して悪影響を与えないように考慮することは必須です。その中でも、プライバシーとサイバーセキュリティ、倫理という3つの基本原則について解説していました。

次回はMicrosoft Buildにみる、HoloLensのビジネスにおける可能性について、考えていきたいと思います。

Microsoft BuildにみるHoloLens(ホロレンズ)の進化

 

この記事の執筆者

増田 裕正Hiromasa Masuda

ソリューション事業本部
MS事業部 MSサービス推進室
部長 / エグゼクティブフェロー

Microsoft Microsoft Azure AI(人工知能)