IoT(Internet of Things)は、製品向けと工場向けの2方面で利用が進み、PoC(概念実証)の段階を経て、製品への実装やデータ活用に踏み出しているお客様が多くいらっしゃいます。活用例の増加に伴って、運用フェーズの課題に直面したお客様からご相談を受ける機会も増えてきました。その課題の1つが、IoTのサービスを維持するために必要なコストです。
本コラムでは、IoTの運用におけるコスト削減とマネタイズに向けた「攻めのIoT」に関する考え方を紹介します。
IoTサービスの本格運用前に対策すべきコストの課題
IoTを組み込んで販売する製品の場合、運用保守費は製品の費用に含まれることが多く、売買が成立したタイミングでのみ費用を回収できる収益モデルの製品も少なくありません。お金を払ってでも使いたいと思えるIoTサービスがまだ登場しておらず、IoTはあくまで製品の付加価値に過ぎないと位置付けられているためでしょう。
IoT製品は、ライフサイクルが従来の製品と大きく異なります。そのため、新製品が登場したからといって旧製品のサポートを安易に終了できません。IoTに関する不具合への対応や機能追加、セキュリティ対応も継続しなければならず、サポートを打ち切るタイミングの判断は難しいところです。
さらに、IoTサービスの機能的なバージョンアップは価値の向上につながるため積極的に取り組めますが、運用保守に関しては「できて当たり前」と捉えられがちで、注力しても製品やサービスそのものの価値は上がりません。こうした背景から、現状は運用保守に関する予算が限られています。長期間にわたってサービスを継続しなければならないIoTにおいては、限られた予算内で運用保守をいかに継続するかがポイントです。
なぜ運用保守には多くのコストがかかるのでしょうか。それは、無料で提供しているサービスであっても、「お客様に迷惑をかけてはいけない」「24時間365日稼働しなければならない」「データロストなんてあり得ない」など、高いサービスレベルを設定しているからです。
このレベルを維持し続けようとすると、3交代の各2名体制にする、領域ごとの担当者を配置するなどの対応が必要です。そのため、コストを削減するには人手に頼らない運用保守、すなわち運用保守の自動化を目指さなければなりません。
そこで検討したいのが、AWSの積極的な活用です。クラウドのサーバーレスやマネージドサービスを活用して運用作業をAWSに任せれば、手作業での運用負荷を低減できます。
AWSのサーバーレスサービスを活用したシステムの二重化も検討しましょう。例えば、東京リージョンに何らかの障害があった場合に、大阪リージョンに切り替えて継続させるようなDR(ディザスタリカバリ:災害発生時の復旧処置)対策が重要です。
DR対策を講じることは、障害が発生した場合でもサービスが停止しない仕組みを構築することにつながります。二重化と聞くとコストの倍増が懸念されますが、例えばAWS Lambdaのようなサーバーレスサービスを利用してDRを実行すれば使用した分だけ課金されるため、システムを二重構成にしてもコストが2倍になる事態は避けられます。
また、適切なサービスレベルの設定も重要です。製品やサービスの特性によってはたった1度のエラーが事業継続に影響を与えることがあります。一方、エラーが発生しても、ユーザーに再試行や待機を指示するだけで支障がないものもあるはずです。機器のデータを逐次クラウドにアップロードする場合、再送処理を適切に施すことで、時間が経てば正しく同期できるケースもあるでしょう。サービスレベルを過度にならないように設定することで、顧客満足度を落とさず運用負荷を下げることが可能です。
コスト削減だけでなく、IoTで収益を得る
IoTサービスの利用者が増えると、その分のコストが増えてしまいます。無料で提供しているIoTサービスを継続するためには、自社が効率的に収益を得る仕組みの構築が欠かせません。例えば、広告収入や有料プランの設定、あるいは自社のIoTサービスの仕組みやデータの他社への提供で利益を得る方法も考えられます。また、製品やサービスをサブスクリプションモデルにすることで、延長保証など継続的な価値を提供する代わりに収益を得る手段もあります。
直接的な収益以外に価値を見出してもよいでしょう。工場のIoTでは、副次的な効果が期待できます。例えば、データを活用して人の経験や勘に頼っていた判断をAIに代替することで、熟練工が休暇を取得しやすくなり、さらに工程に関して専門知識が不要になり人材不足を解消できたという事例があります。品質向上を目的に取り組んだ結果、従業員の労働条件を改善できたのです。
工場のIoTを進める上では、より働きやすい環境を作り、従業員にとっての魅力的な職場にすることが非常に重要です。富士ソフトでは、現場に密着してインタビューを行い、ICTの力を使って解決につながるご提案をしてきました。各種センサーとAWSで機械のデータを集めるだけでなく、入退室の記録管理や、作業の担当者を把握し、それに対するミスのデータを集めたり事前に通知したりすることが可能です。勤怠管理の自動化も含めて人の手間を軽減しながらミスのない現場を作ることで、労働環境を改善できます。
サービスデザインから運用保守まで一気通貫でご支援
IoTの運用保守は、可能な限り自動化することで人手の作業を削減することがポイントです。自動化する際には、システム開発の時点で、ある程度運用を考慮した設計にしなければなりません。富士ソフトは、IoTサービスの監視、セキュリティ対策、サービスの最新化、システム開発など、非常に広い範囲を支援しています。
また当社には、「たかきデザインオフィス」というサービスデザインの専門部門があり、利用者にとって価値のあるサービスの創出を支援します。サービスデザインとは、デザイナー思考法を使ってビジネスを共創することです。
例えば、IoTによってユーザーに「嬉しい体験」を提供するために、ユーザーにとってどのようなことが嬉しいのかをデザインします。そうすることで顧客満足度が上がり、さらには製品自体の価値の向上も期待できます。また、ユーザーに選ばれる理由をデザインすることで、サービスとは何なのかを顧客視点で捉えられます。
サービスデザインからIoTシステム開発、保守まで一気通貫で対応でき、さらにIoTで貯めたデータのAI活用もご支援可能です。IoTに関する困りごとなら、ぜひ富士ソフトにご相談ください。
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