昨今、深刻な人手不足や労働環境の改善などの課題を背景に、「生産性向上」が日本全体の課題として注目され、生産現場のDXやAIの活用が重要なトレンドとなっています。しかし、システム環境の整備やAIモデルの構築、生産ラインの機器の設置場所など、現場目線で考えたときに、DX化の実現には様々な壁があるのが現状です。
今回、当社は、工場内のネットワークカメラで撮影した動画をAIで解析し、作業員の行動検知・異常検知を行うアプリケーション「FABMonitor(ファブモニター)」を開発しました。本コラムでは「FABMonitor」で使用している技術について紹介します。
AIカメラを用いた工場作業者の行動検知
「FABMonitor」は、i-PRO株式会社のAIネットワークカメラ向けの機能拡張ソフトウェアです。i-PRO社はパナソニック株式会社のセキュリティシステム事業部を母体として独立した、監視カメラの分野に強みを持つ企業です。同社製のネットワークカメラは様々な産業の分野で利用されています。
「FABMonitor」は、工場などの現場において一定の作業を繰り返す作業者の行動検知や作業分析を目的としています。AIを活用して、カメラ映像からリアルタイムに作業の抜けや遅れなどの異常行動を検知する機能や、一連の作業における作業速度のバラつきなどを分析・可視化する機能を提供し、生産性の向上や作業者のケアに利用できる製品となっています。
※1 「富士経済「DXを実現するセキュリティ関連技術・市場の将来展望 2023」より
(レポート内でパナソニック/ i-PRO社として併記)」
「FABMonitor」での作業異常検知処理
「FABMonitor」では大まかには以下のような流れで処理を行います。
- 作業者の撮影映像からその姿勢情報を検出 (骨格検出)
- 特徴量化したデータからリアルタイムに作業の切れ目を自動で検知 (特徴抽出)
- 1周期の作業ごとに作業動作の切り出し (作業分割)
- 切り出した各作業動作中に、学習時の動作(=正常動作)と異なる動作を異常行動として検出 (異常検知)
i. 骨格検出
骨格検出処理では、骨格検出のAIモデル(画像中から以下の図のような人体のキーポイントの位置を検出するAIモデル)を使用して、各瞬間の画像フレームごとの作業者の姿勢を検出します。
ii. 特徴抽出
特徴抽出処理では、連続する複数フレームの姿勢情報データを圧縮して新たな特徴量を作成します。この特徴量の抽出には、当社が独自に構築したAIモデル(次元圧縮AIエンジン)を使用します。
AIモデルは、あらかじめ「FABMonitor」の機能を使用して、実環境で撮影した作業員の画像を基に事前学習を行い、正常作業時の特徴量としてAIネットワークカメラにアップロードしておきます。その際の事前学習では、正解となる作業の分割タイミングの入力に、AIが自動で分割点候補を出力しアシストしますので、ユーザーは学習の手間を軽減できます。姿勢情報データの時間的な変化を基に作業者の動作を認識し、AIモデルが、特徴量として、人間には見つけられない関連性や規則性を高い精度で発見し、重要なデータのみを抽出します。
このAIを使用してデータを前処理することで、作業分割・異常検知処理の精度向上や処理速度の高速化などを図っています。
iii. 作業分割・異常検知
事前学習させた正常作業時の特徴量と、撮影中にリアルタイムに算出した特徴量系列を比較することで、1周期分の作業区間ごとに作業動作の切り出しを行います。そして、切り出されたそれぞれの作業動作中に、学習時の動作(=正常動作)と異なる挙動があればその区間を異常行動として検出します。
異常が検知されるとユーザーに通知が送られます。アプリの画面上で異常を検知したシーンの動画を確認でき、切り出した作業時間のバラつきなどの分析情報を可視化できます。
まとめ
i-PRO社製のAIネットワークカメラ上で動作し、工場作業者の異常検知や作業分析を行う機能を提供するアプリケーション「FABMonitor」について紹介しました。
「FABMonitor」で検知した異常行動を改善することで、人手不足の現代において限られたリソースの中でも、生産性の向上を目指すことが可能となります。
「FABMonitor」は2024年12月より提供を開始しました。工場の現場における生産性向上や作業者のケアなどの課題解決を目指すお客様は、ぜひご相談ください。AIに強みを持つ富士ソフトが全力でご支援し、お客様のビジネスの成功に貢献いたします。
FABMonitorについて、より詳しくはこちらをご覧ください。
異常行動検知アプリケーション 「FABMonitor」