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これからの医療分野のセキュリティ対策と、富士ソフトが目指す医療機器開発ビジネス【第4回】

これまで3回に渡り、医療機器開発におけるセキュリティ対策についてご紹介しました。第1回では、医療機器の開発に必要なIEC 62304規格について、第2回では医療情報システム開発におけるセキュリティ対応としての3省2ガイドラインについて、第3回では医療機器のサイバーセキュリティに関する規制についてご紹介しました。今回は、これからの医療機器開発について、さらに富士ソフトが目指す医療機器開発ビジネスについてご紹介します。

SaMD:Software as a Medical Device

近年、ITは急激な進化を続け、先進的なハードウェアが次々に開発され、高度なソフトウェアが利用されています。医療分野においても、AIやIoT、クラウドやロボット、高速ネットワークなどの技術が利用され、医療の現場では既に診断や治療のための導入も進んでいます。
2014年には薬事法が「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法:薬機法)」に改正されました。単体ソフトウェアについても医薬品医療機器等法の規制対象となり、AIによる診断支援ソフトウェアや治療用アプリなど単体のソフトウェアが医療機器として認められるようになりました。
いよいよ医療機器も、富士ソフトが強みとするソフトウェアの時代を迎えています。

医療機器における“テクノロジー”と“規制要求事項”の変化

医療機器の開発に関する取り組みを進めていく中で、医療機器には“テクノロジーの変化”と“規制要求事項の変化”という大きな2つの変化があると感じています。

テクノロジーの変化としては、AIの発達に加え、様々な医療機器がネットワークにつながった、IoMTが挙げられます。さらにウェアラブル端末(身に着けたまま使用できる端末)の小型軽量化やスマートフォンなどのモバイル端末の利用増加、医療情報のクラウドへの展開、ロボットの導入、コロナ禍における遠隔医療の発展なども含まれます。

規制要求事項の変化としては、国際整合に向けたプロセス規格や薬事承認審査のアップデート、AI医療機器に対する規制、サイバーセキュリティに関する規制などが挙げられます。
医療機器のテクノロジーは今後も発展し続け、規制要求事項もまた変化していきます。

富士ソフトは、この2つの変化に追従し、いち早く対応することで、医療分野においてより高い付加価値を生み出していきたいと考えています。

医療分野において富士ソフトが進める支援

当社は、今後の新たな法規制への対応やサポート推進のために、まずは医療機器のサイバーセキュリティサービスを中心とした支援を行っています。
また、医療分野に強みを持つコンサルティング会社との連携や協業を強化し、医療機器メーカーに向けたセミナーの共催など、協業によって各々の強みを活かした支援を進めています。医療業界のトレンドや法規制の動向などの情報提供だけでなく、国内向け/海外向け医療機器の開発に関する様々な課題解決への支援が可能になります。

2023年6月に「3省2ガイドライン」が改訂されました。医療分野へのサイバー攻撃は年々増加傾向にあり、2023年4月から医療機関に対してサイバーセキュリティ確保が義務づけられています。省令改正に関する厚生労働省の通知において、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を遵守することも留意事項として示されています。このような規制要求事項の変化によって、医療情報システムに対するセキュリティ要求は、より厳しくなっていくものと考えられます。
当社は、「3省2ガイドライン」に準拠したソフトウェア開発やコンサルティングサービスを提供しています。3省2ガイドラインの改訂に合わせたサービス内容のアップデートを進めてまいります。

昨今、セキュリティ分野での活発な意見募集や、指針の策定に向けた動きが見られます。例えば、健康・医療分野の要配慮個人情報(人種、信条、病歴など、不当な差別や不利益が生じないよう特に配慮を要する個人情報)の取り扱い指針や、IoMTを含むIoT機器の開発におけるセキュリティ対策に関する指針、米国の大統領令でも注目を集めた部品表(SBOM)の導入に関する手引きなどがあります。医療機器ソフトウェアの規制要求事項としては、2017年11月に規制化されたIEC62304にもアップデートによるスコープ拡大の動きが見られるなど、今後も世の中の動向に合わせて規格や規制のアップデートの動きが続いていくものと考えられます。富士ソフトでは、いち早くこれらの動きに追従して、サービスのアップデートや新たなサービスの提供を進めていこうと考えています。

将来に向けたヘルスケア領域への挑戦

富士ソフトは組み込みシステム開発、業務システム開発、さらにそれらの技術と実績を活かしたプロダクト開発を3つの柱として事業を展開しております。医療分野においても、医療機器に関連するテクノロジーや規制要求事項の変化に追従し、医療機器の開発、医療関連システムの開発などを通してナレッジを積み重ねてきました。これまでは、医療機器メーカーに寄り添い支援することに取り組んでおりました。今後は、将来に向けた医療ビジネスへの取り組みとして、当社が医療機器の製造販売に真正面から取り組む、つまり富士ソフトが医療機器メーカーに挑戦することで、これまで以上に大きな、かつ直接的な社会貢献ができるのではないかと考えています。
医療機器の分野には、医療機器メーカーの参入が少ない領域があります。“未病”や“予防”といった分野もそうです。未病とは、病気ではないが健康でもない状態を指します。自覚症状はないが検査で異常がある、自覚症状はあるが検査では異常がない、といった状態です。病気にかからないようにすることが予防(予防医療)です。
ソフトウェアの発展により登場したSaMDは、様々な端末で稼働できる医療ソフトウェアです。昨今では、患者自身が利用するスマートフォンアプリなどを介して、医療行為を支援するDTx(デジタルセラピューティクス)という技術も現れ、医療業界にソフトウェアは無くてはならない存在になっています。つまり、ソフトウェア開発の富士ソフトが、医療業界に貢献できる可能性は高く、また、未病や予防といったこれからの分野に参画することで、医療分野にブレイクスルーを起こせるのではないかと思っています。もちろん、現在の当社のナレッジではまだまだ実現は難しく、様々なナレッジが必要です。大学などの組織や関連技術をもつ企業などとの連携も模索しています。

富士ソフトは創業以来、組み込みシステム開発も強みとしています。AIやロボットなど高度な技術領域にも先進的に取り組んでいます。これらの技術力や実績をもとにした豊富なノウハウを融合させ、富士ソフトならではの医療機器の開発を目指してまいります。

IoMT
https://www.fsi-embedded.jp/iomt/
医療機器サイバーセキュリティ支援サービス
https://www.fsi-embedded.jp/iomt/serversecurity/

前の記事はコチラ
『富士ソフトの医療機器開発におけるサイバーセキュリティ対策、JIS T 81001-5-1への取り組み【第3回】』

 

 

この記事の執筆者

伊藤 健Ken Ito

システムインテグレーション事業本部
インフォメーションビジネス事業部 第2技術部
第1技術グループ
課長 / フェロー

IoMT