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ERPで進めるDXのコツ:GRANDITやSAP、Oracle ERP Cloudの導入【前編】

富士ソフトではGRANDITやSAP、Oracle ERP CloudなどのERP製品をお客様に提案しています。これまでは、アドオンを開発してERP製品をお客様の業務に合わせてカスタマイズすることが当たり前でしたが、昨今は、お客様の業務をERP製品の標準に合わせるケースも増加しています。

DXをキーワードにERP製品の導入を進める中で、お客様とベンダーの間でどのような調整が必要なのか、そのコツを当社とイデア・コンサルティング株式会社のERPスペシャリストに伺いました。前編と後編に分けてお届けします。

前編では、ERP導入でなぜ業務の標準化が進むのか、その背景をご紹介します。

<対談メンバー>

・システムインテグレーション事業本部インフォメーションビジネス事業部 NTプロジェクトマネージャー
竹林 康司

・イデア・コンサルティング株式会社 SAP推進部 部長
板井 実

・イデア・コンサルティング株式会社 第二営業部 部長
渡邉 卓哉

ERPはクラウド移行が進むのか

まずは、みなさんがどのような立場なのかを教えてください。

竹林:基幹システムの導入案件を中心に取り組んでいます。ERPに関してはGRANDITというパッケージ製品を中心に、お客様にご提案しています。受注から売上、債権・債務、会計までを含めた基幹システム導入案件のプロジェクトマネージャーを務めることもあります。

板井:富士ソフトグループのイデア・コンサルティングにてSAPビジネスをリードしています。前職ではSAPジャパンにてS/4HANA Cloudを担当しており、イデア・コンサルティングに入社してからはSAPの部門を1人から立ち上げて、3年半ほどで社員が約20名、パートナーを入れて40名弱ぐらいの体制になりました。

渡邉:営業一筋で、前職を含めて約30年にわたって営業を担当しています。
3年前にイデア・コンサルティングに転職し、ERPの提案を始めました。Oracle ERP Cloudを担当しています。入社当時は、Oracle ERP Cloudの導入案件がまだ少ない状況でした。ここ3年で会計の分野において多くのお客様に導入していただけるようになりました。

ERPやSaaS導入について、お客様からのご要望に変化はありますか?

渡邉:長期的なコストも加味した、SaaSを前提にした要望が多いというか、ERP導入のRFPにSaaSを指定するお客様が増えている印象を受けています。DXを実現するためのERPのクラウド化を検討する際に、今までは、会計や一部購買などの業務に絞った範囲を対象としSaaSで検討されるケースが多かったのですが、最近は範囲が広がり、全領域を検討対象とするお客様が増えてきているように思います。

竹林:当社のお客様では、ERPの全領域をクラウド化の対象としたRFPが増えていると感じています。しかし、全領域を完全にSaaSで実現する案件はまだ多くない印象です。GRANDITもSaaSのサービス提供を開始しており、SaaSのERP製品も増えてきて、特に中小企業における需要が増加していると感じています。

板井:以前のSAPはオンプレミスが中心でしたが、2015年にS/4HANAがリリースされ、その後「S/4HANA Cloud」が登場すると、お客様は、パブリッククラウドとしてSaaSも選ぶことが可能となりました。S/4HANA Cloud には、従来のオンプレミス環境と同様に自社で環境構築が可能なプライベートクラウドも選択することが可能です。S/4HANAは、このS/4HANA Cloud のパブリック版とプライベート版のどちらを選ぶかという以外に、従来通りオンプレミスを選ぶという、3つの大きな選択肢があります。
90年代からSAPを使い続けているような、エンタープライズ級のお客様の中には、クラウドとオンプレミスのハイブリッドで基幹システムを構成する例もあります。本社ではオンプレミスを引き続き使い、子会社展開やグローバル展開ではS/4HANA Cloudを使う、という構成です。これは「2層ERP」という考え方であり、グループ経営をERPで推進するときに使われます。

クラウド移行でのコスト面はいかがですか?

板井:クラウドにはアドオンを前提としない導入手法として、「Fit to Standard」という考え方があります。業務に合わせてシステムを変更するのではなく、システムに合わせて業務を標準化しましょう、という考え方です。その背景には、アドオンを減らすことで保守コストを減らす目的があります。

渡邉:経済産業省から今のITを取り巻く環境についての報告書(DXレポート)が公表されています。この中で、「長期的な運用・保守費の高騰が『技術的負債』に」、「老朽化・複雑化・ブラックボックス化した既存システムが、DX 推進のための足かせになっている」と記されています。「汎用パッケージを導入した場合も、自社の業務に合わせた細かいカスタマイズを行う場合が多い。この結果、多くの独自開発が組み込まれることになるため、スクラッチと同様にブラックボックス化する可能性が高い。」とも記されています。つまり、業務に合わせて改修を重ねたシステムがブラックボックス化してしまい、「IT予算のうち8割が現行システムの維持管理に充てられている」というのです。

DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~(経済産業省)

板井:各ERPベンダーは「業務をグローバル標準に合わせることによって、間接業務の生産性を高めましょう」と言っていますが、現実的には難しいと感じています。ただ、アドオンを減らすことは、導入企業にとっても願ったりかなったりということで、属人的なユーザーニーズを抑え込むための施策としてフィットしたということです。

アドオンがコストの原因になるのはなぜなのでしょうか?

板井:アドオンが多いと簡単にバージョンアップができなくなり、運用コストがそれだけかさみます。アドオンテーブルを修正したり、入力画面を変更したり、レポートを直したりする作業が必要になると、保守ベンダーに依頼するのですが、昨今のSAP技術者の要員不足によりベンダーのコストは高くなっています。つまり、アドオンを改修しようと思っても開発者が集まらず、また要員単価の上昇によって保守コストが高くつきます。

渡邉:アドオンに対する仕様の追加や変更などが発生しシステムが複雑になると、属人化したりブラックボックス化したりするケースが多いですね。そうなると運用も大変ですし、新しいシステムに切り替えるときも、ブラックボックス化したメカニズムが原因でコストが膨大になるなど、移行が困難になる場合があります。

板井:アドオンを減らしていく流れはありますが、実際の導入現場はアドオンだらけで、その開発でベンダーも稼いでいるという現状があります。ゆくゆくはそういうものがなくなってきて、アドオンすることなく製品を標準機能のまま、いかに使いこなすかにかかってくるのではないかと思っています。

渡邉:システムを標準化しブラックボックス化させないことが世の中の主流になってきて、SAPやOracle、GRANDITなどの製品を標準仕様のまま導入することが当たり前になる日は近いと感じています。

板井:ERPもクラウド化が一層進めば、アドオンすることなく製品の持っている機能をうまく組み合わせることで導入コストが下げられる事例が多数でてくるでしょう。そうずれば、製品のことをよく知っているベンダーに導入作業を依頼する流れになると感じています。

ERP製品について

SAPやOracle、GRANDITにはどのような特徴があるのでしょうか?

渡邉:SAPはERPのオールインワンパッケージです。会計や在庫など、一般的な企業の業務全てに対して機能が用意されており、お客様は提供される機能の中から必要に応じて選択して利用できます。会計と在庫が必要であれば会計と在庫の機能を利用できますし、全ての機能を使いたければ全部利用できます。あるべき姿を提示してくれるので、そのまま利用すると標準化が実現できるのがSAPです。

板井:SAP S/4HANAは、ベストプラクティスのシナリオが充実しています。会計のシナリオや購買のシナリオ、販売のシナリオなど個別の業務で区分されています。例えば、販売のシナリオでは、受注から売掛金の回収までEnd to Endで1つのシナリオになっています。これを「Order to Cash」と呼んでいます。

渡邉: OracleはSaaS型になっています。用途に応じて個別範囲に適応できる様々なモジュールを提供しているイメージです。会計や在庫のモジュールなどがあり、会計は財務会計と管理会計のモジュールに分かれています。SAPのようなオールインワンパッケージではなく、モジュールをブロックのように組み立てることで、基幹システムを疎結合に作り変えていきます。この形式によって、投資を考慮し、段階的にERPを実現していくことが可能となります。

竹林:GRANDITは、国内のコンソーシアムに参加する企業の叡智をもとに作られている進化系ERPです。主に日本のメーカーが作っているので、日本の商習慣に合っていると思います。SAPやOracleは機能が充実していて、組み合わせることでERPを実現できますが、海外の製品なので日本の商習慣に合わせるのが難しいことがあります。その点では、GRANDITが優位性を持つこともあると思います。

板井:富士ソフトグループには、GRANDITやSAP、Oracleなどに対応できる部署があります。お客様にとっては富士ソフトグループに依頼すれば、それぞれお客様に最適なものをワンストップで提案できるメリットがあると考えています。

データの管理方法について教えてください

板井:S/4HANAになってから、テーブル構造の統合も進んでいます。S/4HANA以前の製品では、会計のテーブルをとってみても補助元帳別に分かれていました。S/4HANAではユニバーサルジャーナルという1つのテーブルに統合され、アドホックなテーブル検索も容易になりました。このように業務シナリオもデータもどんどん統合され標準化が進んでいます。

竹林:ERPは統合型データベースが軸となっていて、データを一カ所に集めるのが根本の考え方です。データがモジュール単位なのか、シナリオ単位なのかという考え方は製品ごとに違いますが、概念としてはデータベースを1つにして、リアルタイムでデータを集計、活用する方向に向かっています。

板井:この背景には、リアルタイムなデータを駆使してビジネスの最適化を図る「データドリブン経営」があります。データが統合化された1つのテーブルを見るだけで、整合性の取れたリアルタイムなKPIを経営者やマネジメント層に提供することができるようになっています。

竹林:経済産業省が提唱している「2025年の崖」には、「DX を実行していくに当たっては、データの利活用が鍵となる。」と記されています。そのための土台としてERPの導入、活用が有効だと考えます。

板井:2025年の崖から落ちないためにも、一刻も早くレガシーシステムから脱却することが求められており、基幹システムの導入現場ではERPのクラウド化がキーワードになっています。

【後編】では、お客様のニーズの変化や、ERP導入の際に必要なベンダーとお客様のコミュニケーションについてご紹介します。

イデア・コンサルティング株式会社について

ITコンサルティング(イデア・コンサルティング株式会社)
コラム  : https://service.ideacns.co.jp/column/
サービス : https://service.ideacns.co.jp/service/
導入事例 : https://service.ideacns.co.jp/case/

この記事の執筆者

竹林 康司Koji Takebayashi

システムインテグレーション事業本部
インフォメーションビジネス事業部
第1技術部
副部長 / エキスパート

DX SAP

この記事の執筆者

板井 実Minoru Itai

イデア・コンサルティング株式会社
SAP推進部
部長

SAP デジタルトランスフォーメーション

この記事の執筆者

渡邉 卓哉Takuya Watanabe

イデア・コンサルティング株式会社
営業第二部
部長 / エグゼクティブ マネージャー

DX SAP