セミナーレポート「IaCで始めるDX基盤の整備~DevOpsを確実に進める方法とは~」

はじめに

DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現に向けて、DevOpsへの取り組みが注目されています。しかし、DevOps導入については、さまざまな課題を抱えている企業も多いようです。
2022年5月25日(水)に開催された、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社主催の「AWS Summit Online 2022」では、富士ソフトの安斎寛之(※)が登壇し、「IaCで始めるDX基盤の整備~DevOpsを確実に進める方法とは~」と題して、DX実現を目指すためのDevOps成功のポイントやクラウドのメリットなど、事例を交えて説明しました。
本コラムでは、そのセッションの内容を紹介します。

※ 安斎 寛之
ソリューション事業本部インフラ事業部 クラウドソリューション部 リーダー
AWS Partner Ambassadors及び 2022 APN AWS Top Engineersに認定されています。

DX推進に向けた新技術の開発手法

DXと聞いて何を思い浮かべますか。
AR/VRのような仮想現実、あるいはRPAやIoT、ロボティクス、AI、画像認識、ディープラーニングなど、人によってイメージはさまざまでしょう。経済産業省の「DX推進ガイドライン」(2ページ)では、DXの定義を「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」としています。

先進的にDX推進に取り組むには、2つの柱があると考えます。1つは、仮想現実やAIといった新技術。もう1つは、新技術に対する開発手法であるDevOpsやアジャイルなどです。今回は、新技術に対する開発手法について説明します。

まずご紹介する新技術の開発手法は「バイモーダルIT」です。サーバーレスやマイクロサービス、コンテナ標準化、IaC(Infrastructure as Code:インフラのコード化)といった新しい取り組みは、モダンシステムの開発には欠かせません。一方、ウォーターフォール型で開発されたメインフレームや基幹システムのようなレガシーシステムも活用されています。当社は、DX推進には、モダンシステムとレガシーシステムを融合したバイモーダルITの実現が重要だと考え、推奨しています。

DXはバイモーダルITで進めることを推奨

DX推進の中でも、サービスの開発や改修には多くの企業が課題を抱えています。これに有効な開発手法が、「DevOps」です。DevOpsは、開発(Development)と運用(Operation)を組み合わせた言葉で、開発担当者と運用担当者が協力してスムーズに開発、運用を進め、1つのサイクルとして繰り返していく開発手法です。DevOpsのメリットの1つは、信頼性の向上です。各工程で個人のノウハウに依存していた手作業の部分をツール導入により自動化することで、ヒューマンエラーを低減できるからです。またDevOpsには、生産性の向上やビジネススピードの加速といったメリットもあります。

DevOps成功のポイントはシナリオ作成

DevOpsを成功に導くポイントは、中長期目線でDX実現に向けたシナリオを作ることです。例えば、M&Aなどを実施してグループ間でDXを実現するケースを想定してみましょう。この場合は、グループ間のITガバナンスを効かせていないとDXを実現できません。ガイドラインを整備して、IaCなどの標準化を実施し、ITガバナンスを確立する必要があります。ガイドラインの整備や標準化ができていない場合、グループ会社や他部署がDXのプロジェクトに参画してもDX推進のための企業文化を浸透できません。

DevOps成功に向けた第一歩は中長期目線でのシナリオ作成

また、DevOps成功に導く重要な観点は、技術、管理手法、企業文化の3つです。

技術については、各種ツールを組み合わせて開発と運用のサイクルを繰り返すことが必要です。システム環境の構築に、AWS CloudFormation(サーバーレスアプリケーション構築用フレームワーク)やAWS Serverless Application Model(サーバーレスアプリケーション構築用のオープンソースフレームワーク)などを用いることで、容易にIaCを実施できます。

管理手法においては、システム変更に伴う影響を検証する変更管理はとても重要です。サービスに影響が発生した際のロールバックが容易になり、かつ、プロジェクトに新しく参画した人が、過去の開発担当者の変更意図を把握できます。また、プロダクションやステージングなどの環境の分離も可能となります。

DevOpsの効果を最大限に引き出すには、DX推進における企業文化の醸成が必要です。そのポイントは「スモールスタート、フェイルファースト(Small Start, Fail First)」。まずは小さなことから始めて、失敗から学び実績を作りましょう。

DXを支える3つの基盤

DXを支える基盤としては、DevOps基盤、監視基盤、セキュリティ/ガバナンス基盤の3つが重要なポイントです。

DXの規模が小さい場合には、このような基盤の整備は意識されにくいのが実情です。しかし、基盤が整備されていないと、DXの規模が大きくなるにつれて統制が取れなくなってきます。IT技術者が考えなければいけないのは、企業の成長に合わせていかに基盤を整備するかという観点です。

例えば、AWSではこのような構成を取ることが可能です。

DXを支える基盤の例

DevOps基盤、監視基盤、セキュリティ/ガバナンス基盤の3つを整備することで、システムを拡張しても継続的に開発、改善と運用のサイクルを繰り返すことができます。そして、セキュリティとガバナンスが担保されたシステムの構築には、DX推進に欠かせないツールの1つであるクラウドの活用が有効です。

お客様事例:IaCで基盤の標準化を実現し、DXに貢献する体制が整う

A社は、クラウドにリフト(乗せ換え)するタイミングでIaCを実施し、基盤の標準化を実現できました。コロナ禍においても、SlackやTeamsなどのコミュニケーションツールを活用することで社内のコミュニケーションが活発になり、各社員が自主的にコードをリファクタリング(※)するといったよい文化が生まれました。

※ リファクタリング…見た目の動作は変えず、プログラムの内部構造を整理すること

AWS移行から2年が経過しましたが、インフラに起因する障害は0件です。信頼性の高さもこの事例のポイントです。AWSのベストプラクティスにのっとって、障害が発生した場合でもサービスが継続できるようにシステムを構築した結果でしょう。また、同社では、カオスエンジニアリングと呼ばれる、試験的に本番環境で障害を発生させ、システムの可用性や信頼性を向上させる取り組みも行っています。

さらに、保守工数が削減できたことで、運用担当者が開発担当として新システムの開発に注力できるなど、生産性も向上しました。オンプレミスとAWSに18個のアカウントがあり、それを5人で運用していましたが、IaC実施後は3人で運用できるようになりました。

その他、開発スピードを向上させたことで、システムの改善を月に20〜30回程度実施できるようになりました。新サービス立ち上げのリードタイムも、2週間から1週間に短縮しています。

この事例で伝えたいこと

この事例で伝えたいことが3つあります。

1つ目は、IaCの取り組みで開発作業が必要になった運用担当者へのサポートの大切さです。

今まで運用担当者として手順書をもとに運用の作業をしていた方にとっては、いきなりIaCでコードを書かなくてはならなくなったことに戸惑いを感じることもあるでしょう。そのような場合には、AWS Cloud9(※)などのIDE統合開発環境を用いて1つのコードを2人がかりで書くペアプログラミングの開発手法を行ってみてはいかがでしょうか。

※ AWS Cloud9…ブラウザのみでコードを記述、実行、デバッグできるクラウドベースの統合開発環境(IDE)

2つ目は、仕組み作りの難しさです。

例えばテスト工程では、データベースに試験データを投入する、外部との協力、調整が必要になるなど、手作業のプロセスがあります。ツールによる自動化だけでなく、人の手作業も考慮してワークフローに組むことが大切です。

3つ目は、完璧を求めないことです。

CI/CD「Continuous Integration(継続的インテグレーション)/Continuous Delivery(継続的デリバリー)」のサイクルは、最初からうまくいくケースは少ないです。スモールスタート、フェイルファーストで、小さいところから始めて成功体験を作ってみましょう。成功実績ができると、ほかのところでもCI/CDサイクルを繰り返していけるのではないでしょうか。

ガイドラインと標準化でITガバナンスを効かせることによって、企業規模が拡大しても、DX開発への理解や企業文化が浸透しやすくなります。まずは標準化の第一歩として、クラウド移行によるIaCで成功体験を作っていきましょう。IaCはオンプレミスでもできますが、柔軟性のあるクラウドで実施するのが現実的だと言えます。

富士ソフトでは、本日ご紹介したようなプラットホームの整備をご支援しています。お客様のクラウド活用、ひいてはDXを実現すべく、計画段階から構築、運用、保守、そして導入後の活用の最適化まで一貫してサポートしています。DXでお悩みの方、ITガバナンスでお悩みの方、クラウド移行をご検討の方は、ぜひ富士ソフトにお声がけください。

セッションの模様は、下記にてご覧いただけます(視聴には登録が必要です)

https://summits-japan.virtual.awsevents.com/channel/t/25242329


安斎 寛之安斎 寛之(Hiroyuki Anzai)

ソリューション事業本部
インフラ事業部 クラウドソリューション部
第1技術グループ
リーダー / シニアマスター

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