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【技術屋の想い】一緒にインターネットのエコロジーに取り組もう 後編: IoT・高品位動画時代に求められる技術とは

前編はこちら:
【技術屋の想い】一緒にインターネットのエコロジーに取り組もう 前編:インターネットと家電の融合を振り返る

IoTや高品位動画がもたらすインターネット「系」への影響

「モノのインターネット」としてのIoTという言葉が出る前は、インターネットは、言ってみれば「人のインターネット」でした。人のインターネットの時代は、人が何らかのデバイスを経由してインターネットに接続していた、という状況。インターネットへのアクセスは高々世界人口の75億人程度で、急にそう大きくは変化しないはずでした。
しかしIoTになると、デバイス(センサーなど)の数は世界人口とは桁違いの、兆やその上の桁の単位となります。もしそれがすべてインターネットに繋がったとすれば、インターネット「系」全体で対応できるアクセスが急激に増える危機感があります。また、「人のインターネット」においても、動画などによるネットコンテンツのリッチ化により、一人あたりが利用するネット通信量が指数的に増えているのもまた事実。これから、インターネット動画は4K、8Kなどの世界を迎えようとしているのです。

このようなときに、IoTのデバイスを稚拙な設計でどんどんインターネットにつないだり、高品位動画でインターネット上の帯域の多くを占めたりすると、どのような状況になるでしょう。インタ-ネットの「系」そのもののキャパシティを越え、結果的にネット利用者自身のパフォーマンスの低下も引き起こしかねませんよね。
私はこの状況について、19世紀におこった「産業革命」の状況に非常に似ていると感じています。その当時、石炭と機械化でわれ先にと生産を上げる時代でありましたが、同時に公害や温暖化などのネガティブな地球の「系」に関する問題も引き起こしていました。「空気が汚れている」「気候がかわった」など、ある程度人の目に見える問題であれば人々は気が付きやすいのですが、インタ-ネットの「系」が飽和状態で悲鳴を上げているのは非常に可視化しづらい問題です。皆が気付きづらい点が厄介なのかなと感じています。

“インターネットはみんなでシェアしている”という世界観

あらゆるデバイスがインターネットに接続される―そのときのテクノロジーはどうあるべきでしょうか。これからのネットワーク技術者は、必ず考えていくべきことだと思います。デバイスがどれだけ増えようと、インターネットの「系」は一つです。サイバー空間は目に見えませんが、限りある資源なのです。
ネットワーク技術者の皆さんには、インターネットの「系」への負荷を常に意識しておいてほしいと思います。インターネットにつなげばいろいろな便利なサービスをつくることができますが、本来インターネットは、みんなでシェアしているバケツリレーの世界。便利だからといって地球上の木をどんどん伐採していい訳じゃないのと同じで、“自分のサービスだけがよければいい”、というのは、もうダメでしょう。これはいわばIoTの環境問題。みんなで取り組むべき問題なのです。

既にインターネット上のトラフィックは、動画が4分の3の帯域を占有していると言われています。さらにこの先も、より高品位動画の配信やIoTサービスが普及し、人々の生活はより便利になっていくでしょう。その中でも「インターネットは世界に一つ」という考え方をもち、皆でシェアしているという世界観を忘れない、エコロジーな知恵を出せる技術者であってほしいと思います。

課題やニーズがテクノロジーを進化させる

私は「もうこれ以上の進化はしないのでは?」と考えられていた技術が、ある瞬間にブレイクスルーする現場を何度も見てきました。
例えば、かつてのネット動画は、Adobe FlashやMicrosoft Silverlightのような特定のベンダー技術に依存するニッチなものでした。それが、市場ニーズの高まりとともにHTML5というWeb標準技術で扱えるようになり、ネット動画普及の爆発的な後押しとなったのです。また、ソーシャルメディアの普及によって顕在化したサーバ-負荷の「C10K問題(クライアント1万台問題)」は、サーバ側の処理をJavaScriptで記述するNode.jsなどの技術を誕生させました。ニーズや課題は、テクノロジーを進化させる原動力です。
今後IoTの世界も、膨大なセンサーからのデータをいったん集約してからインターネットへ送り出すことでネットの負荷を下げるIoTハブやエッジコンピュ-ティングが普及するでしょう。また映像配信でもCDNのようなエッジサ-バ-技術がネット負荷を下げことが当たり前になると思います。
このようなネットのエコな新技術に常にアンテナを張れる技術者であってほしいと思います。

 

 

この記事の執筆者

坂東 浩之Hiroyuki Bando

経営サポート部

知的財産