米国Microsoft社のフラッグシップイベントである「Microsoft Ignite 2021」(以下 Ignite)が、日本時間2021年11月3日(水)~4日(木)に開催されました。
Igniteは米国主要都市のいずれかで開催されてきましたが、昨今の状況を鑑み、2020年同様にオンラインでの開催となりました。2021年3月に続いて年内2回目の開催でした。
本イベントや「Microsoft Build」といったイベントでは、Microsoft社の主力製品であるWindowsやMicrosoft Azureの大型進化が発表されるのが常となっています。今回も様々な発表がありました。本コラムでは、インフラエンジニアとして注目する発表を取り上げます。ご紹介する内容には、プレビュー公開や開発中のものも含まれています。
Igniteのキーニュースに関しては、以下のサイトをご覧ください。
Microsoft Ignite Book of News
Azure Stack HCI Update
Azure Stack HCIは、Microsoft社が提供するHyper Converged Infrastructure(HCI)のソリューションで、ハイブリッドクラウドを構成するキーコンポーネントの1つです。着実に進化を続けていますが、今回も大きな進化が発表されました。
Azure Stack HCI Updateについて、詳しくは以下のセッションをご覧ください。
「Learn everything about the new Azure Stack HCI feature update」
進化のポイントは次の3つです。
- Azureワークロードの実行
- Azureの管理機能の拡張
- インフラストラクチャーのAzure由来の強化
まず、Azureワークロードの実行から見ていきましょう。以前から、Azure Stack HCI上で以下のようなAzureの機能が使えるとアナウンスされていました。
- Windows Server 2022 Azure Editionの実行
- Windows Server 2008/R2、Windows Server 2012/R2、およびSQL Server 2008/R2、SQL Server 2012/R2に対する拡張セキュリティーアップデート(Extended Security Updates:ESU)の無償提供(Azure上では無償提供)
- Azure Kubernetes Service(AKS)の実行
- AppServiceやFunctions等のAzure PaaSの実行(Azure Arc Enabled AKS on Azure Stack HCI)
今回はさらに、Azure上で動くVDIであるAzure Virtual DesktopがAzure Stack HCI上でも実行可能になることが発表されました。
- Azure Virtual Desktop for Azure Stack HCI
Azure Virtual Desktop for Azure Stack HCIは低遅延/広帯域を必要とするビデオ編集やCADといった利用を想定しているそうです。本機能の追加は非常に興味深く、今後の動向を継続してウォッチしていきたいと思います。
次のポイント、Azureの管理機能の拡張は、Azure Arcとの統合の緊密化です。最新バージョンのAzure Stack HCI OS Ver.21H2をAzureに登録すると、デフォルトでAzure Arcに接続し、有効化されます。
Arc-Enabledになると、Azure MonitorやAzure PolicyといったAzureの機能が利用可能となるため、Azure PortalからAzure Stack HCIの管理を行うことが可能となります。さらに、Azure Stack HCIの管理が可能なWindows Admin CenterのAzure Portalへの統合機能も開発中とのことなので、よりAzure Portalへの統合が進んでいくものと思われます。
3つ目のポイント、インフラストラクチャーのAzure由来の強化は、Azure Stack HCI OS Ver.21H2で強化された内容となっています。特筆すべき機能は、GPUプールのサポートでしょう。これにより、クラスター環境においてGPUを利用するワークロードに高可用性が提供するということで、障害時のフェイルオーバー処理等が自動的に行われ、より柔軟な運用が可能になることを示しています。ただし、現時点ではライブマイグレーションはサポートされません。
Azure Arc Update
ハイブリッドクラウド/マルチクラウド管理の要であるAzure Arcも機能強化が図られています。Microsoft社のCEOであるSatya Nadella氏によるキーノートでもトピックスの1つとして紹介されました。
Azure Arc Updateについて、詳しくは以下のセッションをご覧ください。
「Microsoft Ignite Opening」
機能強化のポイントは、先述のAzure Stack HCIの管理機能の強化と、VMware vSphereへの対応強化です。
Azure Arcが有効化されたVMware vSphereでは、Azure Portalからセルフサービスでリソースにアクセス可能です。例えば、ARM(Azure Resource Manager)テンプレートに基づいて仮想マシンのデプロイが可能になります。さらに、Azure Portalから仮想マシンの停止や起動などのオペレーションが可能になるなど、これまでは考えられなかった対応がとられ、今回のサプライズになりました。
おわりに
Igniteのトピックスをインフラエンジニアの視点で取り上げてみました。その他にも、Microsoft Loop、Mix Reality(MR)プラットフォームであるMicrosoft MeshをMicrosoft Teamsに拡張する「Mesh for Teams」など、90以上もの様々な興味深い発表がありました。
Igniteのセッションは以下のサイトでオンデマンド公開されています。
次回以降のコラムでは、今回ご紹介したトピックスに関する技術的な情報をご説明します。
この記事の執筆者
ソリューション事業本部
営業統括部 第1営業部
プリセールスグループ
課長 / フェロー