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カスタマイズ性に優れた日本語入力システム「FSKAREN」を支える技術面の工夫とは?

ホテルにあるチェックイン専用端末の操作や、カーナビの操作、銀行ATMの操作など、私たちの身近には、タッチパネルを使った専用端末や機器がたくさんあります。タッチパネルの画面は、誰でも簡単に操作でき、名前や住所を素早く入力できるように工夫されています。

今回は、そのような機器で活用されている富士ソフトの日本語入力システム「FSKAREN(エフエスカレン)」について、開発担当者に話を聞きました。

FSKARENとは

まずはFSKARENがどのような製品なのか教えてください

FSKARENは、携帯電話やタブレット端末、スマートフォンだけでなく、専用の目的を持ったさまざまな端末・機器にも対応できる日本語入力システムです。

1983年の発売以来約40年の歴史があり、2000年代には日本国内の第3世代の携帯電話(ガラケー)のほとんどの機種に搭載されていました。ガラケーユーザーのほとんどがFSKARENユーザーだったとも言えるでしょう。

現在、FSKARENには以下の製品ラインナップがあります。
・Windows10向け日本語入力システム「FSKAREN for Windows」
・Android OS向け日本語入力システム「FSKAREN for Android」
・組み込み機器搭載用「FSKAREN かな漢字変換ライブラリ」

アプリ版の「FSKAREN for Android」は、Google Playからインストールできます。

WindowsやAndroidなどのOS標準や製品版の日本語入力システムがありますが 、日本語入力システムを開発している会社はあまり多くはありません。ソフトウェア開発技術だけではなく、日本語という言語に対する高度な知識が求められるためです。

他の日本語入力システムとはどう違うのですか?

例えば、組み込み用のFSKARENは、変換候補を特定の業種に特化してカスタマイズできることが特徴です。

ホテルのチェックイン専用端末から宿泊者情報を入力する場合、かな漢字変換の候補として絵文字や医療専門用語は不要です。カーナビでの検索では、人の名前は必要なく、住所や施設名として用いられる単語が候補として表示されるべきです。

このように、専用端末では機器の使用目的に合わせた変換候補のカスタマイズが求められます。FSKARENはカスタマイズ性に優れているので、柔軟に対応できます。

利用者に向けた工夫

利用者に向けてどのような工夫をしていますか?

FSKARENは3つの機能で構成されています。

1つ目はインターフェース。いわゆる入力画面に該当し、データを入力するソフトウェアキーボードと、変換候補を表示する部分を指します。2つ目は変換エンジン。入力された「かな」から変換候補の文字列を探し出します。そして、3つ目は辞書。読み仮名が付いている単語が登録されています。

インターフェースは、機器の使用者がFSKARENを直接利用する部分ですので、FSKARENの機能や性能がシステム全体だけでなく、お客様の業務にも大きく影響します。富士ソフトのお客様はさまざまな業界・業種にわたっており、幅広い業務知識と豊富なノウハウがありますので、業界・業種に合わせて、利用者が使いやすいインターフェースにカスタマイズすることが可能です。例えば、さまざまな方が利用するホテルの専用端末では、ソフトウェアキーボードをパソコンやスマートフォンのような配列ではなく、五十音順の配列にしています。

一度に表示されているキーが多いと、どれを押せばいいのかわからないという場合もありますし、指を素早く動かすフリック入力のような複雑な操作は苦手な方もいらっしゃいます。表示するキーの数や配置、大きさなどを工夫し、また、1つのボタンに割り当てる機能を1つだけにすることで、一目でどこを押せばよいかわかりやすくしています。FSKARENは利用者の誤操作を減らし、誰でもわかりやすい、使いやすいインターフェースになるよう工夫しています。

インターフェースがカスタマイズできるのであれば、さらに用途が広がりそうですね。

ショッピングモールで広告などを表示しているデジタルサイネージの端末でも活用されています。管理者が近くにいない無人端末では、利用者は、制御コマンド、例えば端末を再起動する「Ctrl + Alt + Delete」といったキー操作ができないようにしています。

また、当社が提供する受付システムのmoreReception(モアレセプション)にもFSKARENを搭載しています。 このような無人の専用端末は、今後もどんどん増えていくでしょう。近い将来、「無人端末の日本語入力はFSKAREN」と言われるように頑張っています。

インターフェース以外の工夫

辞書や変換エンジンにはどのような工夫をしていますか?

辞書でもさまざまな工夫をしています。最近はAI活用などによって単語を辞書に追加するシステムもあります。しかし、残念ながらAIは万能ではないので、不適切な言葉が登録されていないかを人がチェックして取り除く必要があります。

また、組み込み機器などは、日本語入力システムが利用できる記憶容量が限られていますので、使用頻度の高い言葉を選んで辞書を小さくする必要があります。しかし、完成した辞書を小さくするには、収録語の取捨選択に膨大な工数がかかります。予測変換などの変換エンジンも同様で、記憶容量の小さな機器でも軽快に動作することが求められます。スマートフォンやパソコンの日本語入力システムの基本的な機能を維持しつつ、いかにプログラムを小さくするかが重要となります。

FSKARENでは、記憶容量の大きさに合わせて選択できる、一般的に使用頻度の高い単語だけを収録した数種類の辞書を準備しています。その辞書に、使用目的に合わせて使用頻度の高い単語を追加します。変換エンジンも同様で、必要最小限の基本機能に、用途にあわせた機能を追加して提供します。

この工夫によって、収録語の取捨選択や機能削減による再テストにかかるコスト・期間を削減できます。 多種多様な機器や専用端末に柔軟に対応できるというのが、FSKARENの強みです。

どのようなシーンで使われているのですか?

「業界特有の特殊な単語を登録してほしい」という導入事例もあります。

例えば保険会社の場合は、契約時には契約者と会話しながら、必要な情報をタブレット端末で入力します。このとき、保険業界特有の単語でも速やかに変換できることが大切ですし、契約者の名前を入力するときには特殊な外字も候補として表示する必要があります。

有名人のことをインターネットで検索する場合、名前をひらがなで入力したら、最初に有名人の名前が表示されると使いやすいと感じて嬉しいですよね。でも、保険会社のタブレット端末では有名人の名前よりも、一般的によくある人名が表示されることの方が大切です。このため、有名人の名前を辞書から削除する、といったカスタマイズにも対応しました。

最後に、今後の入力システムについて聞かせてください。

これからの社会においても、人の意思や目的をコンピューターに伝える方法が必要であることは変わりません。

人からコンピューターに伝えるための入力デバイスとしては、キーボードやマウスが長く使われています。タッチパネルでのソフトウェアキーボードも広く使われるようになり、音声で操作できる機器も増えてきました。人からコンピューターへ伝えるのではなく、コンピューターが人の意思や目的をくみ取る方法も考えられています。表情や脈拍、呼吸といった生体情報の読み取りや、ライフログの分析という方法などもあります。

このようにコンピューターに入力する方法、伝える方法はどんどん進化していき、究極的には人は何も入力しなくて済むようになればいいと思っています。いわゆる以心伝心です。入力デバイスがどう変わっても、文章として出力するためには日本語入力システムが必要不可欠です。日本語入力システムの役割として、いかにわずかな入力情報から多くの情報を導き出せるかを追求していきたいと思います。

「ある文字を入力したら、こういう変換結果を出してほしい」という要望はお客様や利用者によって異なり、正解がありません。ここが日本語入力システムの難しいところです。しかし、富士ソフトには、さまざまな業界・業種の、さまざまな規模のお客様に対して幅広く対応し、蓄積してきた豊富なノウハウがあります。「こんな端末に導入してみたい」「こんな変換ができれば便利なのに」などは、ぜひ富士ソフトにご相談ください。

FSKARENについて、詳しくはこちら
さまざまな製品へ組み込み可能な日本語入力システム「FSKAREN」

 

 

この記事の執筆者

富永 洋平Youhei Tominaga

プロダクト事業本部
コンシューマービジネス部 商品開発グループ
リーダー / シニアマスター

モバイル 組み込み

この記事の執筆者

井内 雅樹Masaki Iuchi

プロダクト事業本部
コンシューマービジネス部商品開発グループ
リーダー / シニアマスター

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