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AWS Summit Online:クラウド移行における「移行計画立案」フェーズについて

今年のAWS Summitはオンラインでの開催となりましたが、5万人以上の来場者があり盛況のうちに幕を閉じました。私は業務のメインテーマをAWSマイグレーション(移行)としています。移行のステップは、アセスメント、移行計画、移行、運用のフェーズに分かれます。AWS Summitでは、アセスメントにおけるコスト試算(クラウドエコノミクス)、移行計画立案時の勘所、移行実践手法といったセッションがあり、実に密度の濃いよいセッションでした。

本コラムでは、私がマイグレーションの中でも最も重要だと思う移行計画立案について説明します。これから移行を検討される方、移行を計画中の方向けのコラムです。

移行がうまくいかない原因

実は、既存のシステムをAWSへ移行するのは、新規で構築するより難しいものです。理由は簡単で、既存システムがあると既存と同じ構成、同じ動きを求めてしまうからです。AWSに限らず、パブリッククラウドはそれ自体がオンプレミスのシステムとは異質であり、コストの計算も異なります。オンプレミスでは、ハードウェアを購入してしまえば、あとはサーバを止めようと動かしたままであろうと、変わるのは電気代程度の差しかないかもしれません。

しかし、クラウドでは停止していればコンピュート費用は掛からないため、コストに大きな開きが出ます。よくAWSにしてみたがコストが下がらなかったという話を聞きますが、多くの場合はこの辺りが関係しています。では、どうすればAWSをうまく使いこなせるのでしょうか?答えは、AWSを十分に知ることです。また、移行するシステムの特性を知ることです。そのうえで、移行計画を立てて移行すれば失敗することはありません。

移行計画立案時に実施すべきこと

移行計画フェーズでは、システム特性の確認、移行難易度・効果の検討、移行手法の検討、ガイドラインの作成といった多くのことを検討する必要があります。これらを滞りなく進めるには以下の2つが有効です。

1. Cloud Center of Excellence(CCoE)の設置

CCoEとはクラウド化を推進するチームのことです。このチームにはインフラエンジニア、アプリケーションエンジニア、セキュリティエンジニア、運用エンジニアなど横断的な役割の人が配置され部門の垣根を超えた総合的な検討が行われます。また最近では、システム運用における新しいアプローチとしてSRE(Site Reliability Engineering)が広まりを見せています。SREはITシステムの運用に関するあらゆる業務を一手に引き受けるチームで、特にクラウドを利用している企業では一般的になりつつあります。

クラウドをただのIaaSとしてしか使わないのであれば、CCoEではなく、これまでのような縦割り体制でも使えるかもしれません。しかしPaaS、FaaSと抽象化・マイクロサービス化が進んでいくと、可用性やセキュリティの維持にはインフラ、セキュリティ、アプリケーションのそれぞれのエンジニアが協力する必要が出てきます。経営層も巻き込んで、上層部からの一声を掛けてもらうことも成功の秘訣です。

2. Experience Based Acceleration (EBA)の実施

EBAとは体験型試行のことです。クラウドを使ったことがないメンバーでも、案ずるより産むがやすしを念頭に体験しながら進めていくと、よい結論が出ることも大いにあります。幸い、クラウドは使った分だけ請求されるしくみなので費用もさほど掛かりません。弊社では、PoC(Proof of Concept)の実施として必ず提案しています。

重要な移行計画立案を乗り切るために

AWSマイグレーションの成功は移行計画立案フェーズに掛かっている、と言っても過言ではありません。この難所を乗り越えるために、是非CCoEの設置とEBAを実施して頂きたいと思います。また、社内リソースだけでこれらの実施が困難な場合は、ぜひ、AWS コンピテンシープログラム「移行コンピテンシー」を取得している富士ソフトにお声がけください。

富士ソフト アマゾン ウェブ サービス (AWS)のご紹介

   

この記事の執筆者

北村 明彦Akihiko Kitamura

ソリューション事業本部 インフラ事業部
インフラ推進部 プリセールス
エンジニアグループ
主任 / フェロー

AWS クラウド デジタルトランスフォーメーション