6月24日に開催されたオンラインセミナー「ITmedia DX Summit Vol.4 DX実践の必須技術」で、富士ソフト ソリューション事業本部 インフラ事業部 クラウドソリューション部 フェローの北村明彦が講演。
「AWSネイティブの活用 DXへ向けた脱商用データベース!」と題して、クラウドへのデータベース移行のポイントを解説しました。その内容をダイジェストでご紹介します。
AWSのAPNプレミアコンサルティングパートナーとして企業のDXをサポート
デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためには、組織内に蓄積されてきたデータや新たに生成されるデータをいかにビジネスに活かすかが重要です。しかし、蓄積・生成されるデータは日々増大しており、ITインフラで効率よく管理することが前提となります。北村の講演「AWSネイティブの活用 DXへ向けた脱商用データベース!」では、アマゾン ウェブ サービス(AWS)のクラウドを活用してデータを効率的に管理する方法や、AWSへのデータベース移行のポイントを解説しました。
登壇した北村は、 富士ソフトとAWSとの関わりについて、 日本でAWSのサービスが開始された2011年から富士ソフトがAWSソリューションを展開してきたことや、2020年には日本で10社しかいない最上位パートナーであるプレミアパートナーになったことを紹介。IoTや政府向けソリューションに強みを持ち、日本だけでなく中国リージョンでのAWSサービスも取り扱っていることが特徴であり、そのうえで、DXやクラウドへの取り組みの動向について次のように整理しました。
デジタル化が進むなかで増すクラウドの重要性
「クラウド、特にマネージドサービスを使うことで、ハードウェアやOSの調達や管理から解放され、企業にとって本当に必要なビジネスロジックの開発に人材を活用することができます。実際、IDCの調査※によると、クラウドに対する期待で多くを占めたのはビジネス効果と生産性向上でした。デジタル化が進む中、クラウドへの期待はさらに高まっています。」(北村)
※IDC: Fostering Business and Organizational Transformation to Generate Business Value with Amazon Web Services(2018/2)
デジタル化が進むなかでクラウドの重要性が増すのは、増え続けるデータを効率的に管理できるからです。そして、データのなかでも重要なのは、人やモノの導線を把握するためのセンサー情報などの“リアルタイムデータ”であると北村は指摘します。
「リアルタイムデータを解析し、顧客の状況などに合わせてサービスの提供の仕方を変えるような取り組みが必須になってきます。そのためにはデータベースの肥大化に対応するだけでなく、データベース構造を変えることも求められます。その解決策の1つが商用データベースからAWSネイティブなデータベースへの移行です。」(北村)
3つの観点から考えるデータベースのクラウド移行
では実際にどのようにデータベース移行を進めていけばよいのでしょうか。北村は、データベースのAWS移行のポイントを3つの観点に整理し、移行のアプローチを解説していった。3つの観点とは「なぜ今クラウド移行+脱商用データベースが必要なのか」「クラウド移行成功のポイントとは」「クラウド移行完了後、さらに向かうべきところとは」です。
① なぜ今クラウド移行+脱商用データベースが必要なのか
1つ目の観点である「なぜ今クラウド移行+脱商用データベースが必要なのか」については、データ量の増大によって「負のスパイラル」が発生していることが背景にあります。データ量増加に伴ってデータベースを増強すると、ORACLE等に代表される商用データベースのライセンスコストや運用コストが増加し、性能の維持、調達サイクルの負荷も高まっていくという悪循環に陥ります。
「クラウド移行+脱商用データベースは、簡単なスケールアップで柔軟に対応でき、調達コストは安く、リードも短くなります。また、OSSやライセンスインクルードタイプで利用料を抑えることができ、マネージドデータベースでさらにコスト効果を高められます。先進的なテクノロジーを取り入れやすくなることもメリットです」(北村)
② クラウド移行成功のポイントとは
2つ目の「クラウド移行成功のポイント」については、一足飛びのDXではなく、ステップを踏んだ移行が重要だということです。具体的には、乱立しているデータベースなどの「As Is」を調査するステップ、現状把握とコストの見える化を行う「アセスメント」のステップ、柔軟なインフラとコスト削減を目指し「クラウドリフト」するステップ、データ集約・データ活用を進める「クラウドシフト」のステップです。
「短・中・長期を鑑みた現実的な移行計画を立て、リフト&シフトを実施していきます。データベースの移行の考え方としては、「ワンステップ(一括移行)」、「ツーステップ(段階移行)」、「ゼロダウンタイム」があります。データベースのサイズ、オンプレとクラウド間のネットワーク接続性、データベースのバージョンとエディション、移行期間(システム停止可否や期間)や使用ツールなどから判断していきます」(北村)
③ クラウド移行完了後、さらに向かうべきところ
3つ目の「クラウド移行完了後、さらに向かうべきところ」では、データベースを維持するだけでなく、いかに活用していくかが重要になります。そのための取り組みとして「システムの標準化」「マネージドシステムの採用」「ガイドラインの策定」を挙げました。
「システムの標準化」では、監視、セキュリティ、可用性などを標準化してテンプレート化することで、他部門への拡張やシステム障害時などのリカバリー時間の短縮化につなげていきます。また、「マネージドシステムを採用」することで、疎結合を中心としたシステムへリアーキテクトを行いながら、セキュリティなどをAWSに担保してもらうことでさらなる運用コストの削減を目指します。そして「ガイドラインの策定」では、将来のデータレイクを想定し、データベースを含めたガイドラインを作成することで、適材適所のデータベースとデータの格納、活用効率のアップを図ります。
富士ソフトでは、こうしたAWSクラウドへのデータベース移行に関し、現状の問題認識から、アセスメント、移行方針と計画の策定、コスト最適化やPDCA構築の支援など、トータルでサポートしています。北村は「3つの観点それぞれで注意すべきポイントがあります。今後のビジネス拡大に役立ててください」と話し、講演を締めくくりました。
この記事の執筆者
ソリューション事業本部 インフラ事業部
インフラ推進部 プリセールス
エンジニアグループ
主任 / フェロー