2019年12月2日~6日に米国ラスベガスで開催されたAmazon Web Services(AWS)の年次イベント「AWS re:Invent 2019」では、AWSクラウドへの移行を促す数多くの新しいサービスが発表されました。富士ソフトからイベントに参加したソリューション事業本部 インフラ事業部 クラウドソリューション部の田中基敬、出堀琢麻が、特に注目すべき新技術について紹介します。
―― re:Invent 2019のキーノート(基調講演)では、AWS CEOのアンディ・ジャシー氏から20以上の新技術・新サービスが発表されました。その中にはAWSクラウドへの移行を促すものも多数含まれていますが、どのような発表内容に注目しましたか。
田中 昨年のre:Invent 2018で発表された「AWS Outposts」が一般公開されたことに注目しました。AWS Outpostsは、AWSが提供する物理ハードウェアをオンプレミスに設置し、AWSクラウドを拡張するサービスです。低遅延かつシングルテナントのオンプレミスとクラウドをシームレスに接続したシステムが構築できるようになります。
もう一つ「AWS Local Zones」にも注目しました。これもOutpostsと同様、低遅延かつシングルテナントが求められるシステム環境向けに提供されるサービスです。現時点では米国の一部で提供されていますが、物理ハードウェアを設置する場所のない企業などにニーズがあるので、日本でのサービス開始が待ち望まれます。
AWSは2018年に「VMware Cloud on AWS」の提供を開始するなど、オンプレミスのモダナイゼーションを加速させるサービスを強化してきましたが、OutpostsやLocal Zonesの提供開始によって、オンプレミスも重視する姿勢が鮮明になったと感じました。
出堀 私が注目したのは、「Amazon CodeGuru」です。CodeGuruは、AWSが用意したモデルをベースにした機械学習とAI機能が、プログラムのソースコードを自動的にレビューするというサービスです。機械学習/AI関連では「Amazon SageMaker」の統合開発環境「SageMaker Studio」などさまざまな新サービスが発表されましたが、その中でもCodeGuruは開発現場のコード品質向上に大いに役立つものと期待しています。
また、コンテナ関連では「Amazon Fargate for Amazon EKS」に注目しました。これはAmazon EKS(Elastic Kubernetes Service)によるKubernetesクラスタの運用を、AWS Fargateによって自動化するというサービスです。このサービスを利用することにより、AWS上でコンテナをサーバレスで実行することが可能になります。
―― キーノートでは新技術・新サービスだけでなく、先進的な導入事例も数多く紹介されました。どのような事例に興味を持ちましたか。
出堀 特に興味を持ったのは、ドイツの自動車メーカーであるフォルクスワーゲンの事例です。同社はAWSを利用して「VW Industrial Cloud」を構築し、自動車生産ラインの変革に取り組みました。コストの削減、障害の予測などの効果により、今後5年間で製造・物流のパフォーマンスを30%改善すると見込んでいるそうです。このほかにも、米国の通信事業者であるベライゾンが取り組んでいる「AWS Wavelength」による5Gネットワークサービスの事例も、興味深いものでした。世界では、こうした数兆円規模の投資によるクラウドネイティブな変革が進んでいることを実感しました。
―― キーノート以外では、どのような新技術・新サービスに注目しましたか。
田中 AWS移行ビジネスを担当する立場から注目したのが「End-of-support Migration Program(EMP)for Windows Server」です。2020年1月14日にWindows Server 2008および2008 R2がサポート終了を迎えますが、このプログラムは旧OSで実行されているレガシーアプリケーションのコードを変更することなく、AWS上のWindows Server最新バージョンに移行するサービスです。実際には富士ソフトのようなAWSパートナーが、ツールを使用してレガシーアプリケーションをキャプチャし、旧OSから切り離してパッケージ化するという作業を行うことになります。
出堀 移行に関しては、ライセンス管理を行う「AWS License Manager」が機能強化され、BYOL(Bring Your Own License)に対応したことも注目です。これにより、すでに契約しているソフトウェアライセンスをAWSに持ち込んで、ライセンス使用の検出やインストールされているインスタンスの追跡、ライセンス違反の通知などを自動化することができるようになります。OutPostsのようなオンプレミスも含めたインスタンス上で稼働するソフトウェアのライセンスを管理するには、欠かせない機能と言えるでしょう。
―― re:Invent 2019で発表された新技術・新サービスを踏まえて、富士ソフトではどのようなサービスを展開する予定でしょうか。
田中 re:Invent 2019では、多くのサービスは発表されただけの段階であり、本格的な評価はこれからになります。ただし、Outpostsのような正規版が発表された新サービスについては、富士ソフトでもいち早く取り入れて検証を実施し、お客様のAWS移行を支援していきたいと考えています。
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