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「Shoptalk(ショップトーク)2019」レポート!─米国の小売業のデジタル化は、ここまで進んでいる!

世界最大級の小売業界向けイベント「Shoptalk 2019」が、2019年3月米国ネバダ州ラスベガスで開催された。Shoptalkは小売業界のエコシステムを構成するあらゆる企業が集い、最新トレンドや最新テクノロジーを通じて業界の未来を議論するイベントだ。米国のリテール企業が取り組んでいるデジタルトランスフォーメーションを中心に、イベントの模様をレポートする。

小売業界の未来を創造するイベント

Shoptalkは、2016年から毎年春に米国ラスベガスで開催されている小売業界向けイベントだ。参加費用が4,500米ドルという、かなり高額なイベントにもかかわらず、毎年8,000人以上のリテール企業関係者、投資家、アナリストが参加する。

2019年の3月3日~6日に開催されたShoptalk 2019では、5つのトラックに分かれたセミナー・セッションを中心に構成され、最新トレンドや最新テクノロジー、ビジネスモデルなどを通じて小売業界の未来を創造するための議論が交わされた。スタートアップも出展する小売業界向けのソリューションの展示ホールも見どころいっぱいで、小売業のデジタルトランスフォーメーションのヒントがあふれていた。

リアル店舗とオンラインショップの相乗効果

3月3日の基調講演では、米国有数の大型百貨店チェーンである「ノードストローム(Nordstrom)」のErik Nordstrom氏が登壇し、顧客志向の変化に伴って進化し続ける同社のビジネスについて紹介した。こういう大物の生のスピーチを聞けるというのが、Shoptalkの醍醐味でもある。

2018年、ノードストロームでは、総売上155億ドルの約30%をオンラインショップが占めた。リアル店舗に訪問する顧客の50%がオンラインショップを入口とし、オンラインショップを利用する顧客の35%は実店舗の訪問がきっかけになっているという。もはやリアル店舗とオンラインショップは、ほぼ一体だということだ。

さらに驚いたことに、リアル店舗で購入した顧客の50%弱はモバイル機器を利用しながら行動していたのだ。リアル店舗とオンラインショップの相乗効果でビジネスを拡大させているのがノードストロームのスゴイところである。

「小売店はもはや商品を陳列するためだけに存在するのではなく、顧客の購買行動をエンゲージし、商品をより早く購買できる場所であるべき」というErik Nordstrom氏の言葉には、思わずうなずいてしまった。

デジタル技術で、異なる顧客ニーズに同時に対応

テーマごとに分かれて行われたセミナー・セッションでも、デジタルトランスフォーメーションに取り組むリテール企業の事例がいくつも紹介されていた。

その一つが、米国の外食チェーン「パネラ・ブレッド(Panera Bread)」。このパン屋では、ノードストロームと同様、オンラインとリアル店舗とを融合させ、オンラインによる購買を想定したリアル店舗を開発している。

「回転の早い顧客:モバイル機器経由で注文して、早く食事を終わらせたい顧客」向けのラインと、「遅い顧客:じっくり注文してゆっくり食事を楽しみたい顧客」向けのラインに分けたのだ。また、顧客が商品提供のスピードと同じくらい重要視する、成分コントロールや栄養素の透明性を高める情報も提供している。顧客一人ひとりのニーズに合ったサービスを提供することで、顧客ロイヤルティを向上させているというわけだ。

このパネラ・ブレッドの取り組みは、日本の外食産業にも応用できそうだ。日本の飲食店では満席時に「並んで順番を待つ」という習慣が根付いているが、それだけではリアル店舗の収益アップに限界がある。そこでパネラ・ブレッドのように、回転の「早い顧客」と「遅い顧客」を分け、双方の顧客に満足してもらうというのはどうだろうか。これは外食産業のデジタルトランスフォーメーションのヒントになるはずだ。

キーワードは、AIを活用した「パーソナライゼーション」

展示ホールでは、スタートアップから大手までデジタル企業のブースがひしめき合っていた。とりわけ目立ったのが、AI(人工知能)を活用した「パーソナライゼーション」。

ビッグデータの解析結果に基づいて無人ロボットが顧客の好みに合わせたコーディネートを提案するアパレル小売業向けソリューション。店舗内のあらゆる商品の情報をモバイル画面で確認できるソリューション。オンラインショップで気になった商品をリアル店舗で実際に手に取って確認できるように売り場まで道案内するソリューションなど、パーソナライゼーションを実現するためのソリューションが目を引いた。

さらに、AIが市場のニーズや競合他店との比較によりリアルタイムに販売価格を変えるダイナミックプライシングの仕組みなども検討され始めていた。

さすが、Shoptalk。「米国の小売業界はここまで進化しているのか!」を体感できた。日本の小売業も、得意とするリアル店舗での“おもてなし”にオンラインを融合させることで、日本ならではの斬新なサービスを実現できるのではなかろうか。

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この記事の執筆者

柴田 晃宏Akihiro Shibata

執行役員
ネットソリューション事業本部長

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