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その後のWeb2.0 前編:2005年、インターネット業界に落下した隕石

ITの世界に身を置くと、「ソフトウェア」という言葉は技術的なモノとして捉えてしまいますが、私が以前勤めていたソニーでは、ソフトウェアとは音楽や映画(ビデオ)などを指すものでした。
当時日頃から「ソニーのビジネスはハードウェア(デバイス)とソフトウェア(音楽や映画コンテンツ)の両輪」だと、音楽家でもある大賀社長(当時)は話していましたが、学生時代にコンピュータサイエンスを学んできた私にはとても違和感があり「自分が勉強してきた、プログラミングするソフトウェアの価値はどこにあるのだろう?」と、疎外感を抱いたものです。
しかし2005年からインターネットサービス企業であるYahoo! JAPANに移ると、今度は音楽やビデオ、さらに天気などの情報を「コンテンツ」と呼び、「ソフトウェア=技術」として認識されていたことに、技術者としてしっくりきた感じがあったように思います。
モノとして見えない「ソフトウェア」は、人によって捉え方も異なりますが、ソフトウェアの歴史を振り返ってみるとその価値もまた七変化でした。
デジタルがこの世に出現して以降、コンシューマにおけるソフトウェアの価値は以下のようなテクノロジーの進歩と市場のニーズ変化に呼応して変わってきました。

・マイコンの登場
デジタル機器を制御する「組み込みソフトウェア」として(ハードウェアの黒子)
・パソコン(PC)の登場
表計算やワープロなどの「パッケージソフトウェア」として
・インターネットの登場
「ネットサービス」として

そして今、IoTやAIの世界では「データ」がソフトウェアの一部として「最も重要」と注目されています。

インターネット業界に隕石落下

2005年9月、白亜紀の恐竜絶滅を招いたほどの強烈な隕石が、インターネット業界におちました。それは英語でわずか10ペ-ジほどのインタ-ネットビジネスの未来を予言した白書で、そのタイトルは「What is Web2.0」。サブタイトルが「Design Patterns and Business Models for the Next Generation of Software」というモノでした。
この白書のサブタイトルを見た時、「なんだぁ?今度はソフトウェアにビジネスモデルが絡むのか?!」と思い、即座にその日本語訳を読みました。
しかし、原文からの直訳であったため日本語ではなんだかよくわからず、英語の原文を読んでみることにしました。そこにはボーっと生きているとその違いが判らないネットサービスを技術とビジネスモデルの観点から、既存サ-ビス(Web1.0)、新たなビジネスモデル、新技術のサービス(Web2.0)に大別し、今後爆発的に伸びるのはWeb2.0であろうということが書かれていました。

さらにそこには、 “Long Tail(ロングテール)”、“The Perpetual Beta(永遠のベータ版)”、“Syndication(集合知)”、“Software as a Service(SaaS)”など、ソフトウェア屋の私が今まで聞いたこともない言葉(キーワード)がバンバン登場していました。戸惑いとともに、過去のソフトウェア技術者としての常識が崩壊していく気持ちを味わい、まさに自分の頭上に隕石が落ちた気持ちでした。
そのなかのひとつに「Software Above the Level of a Single Device」という言葉を見つけました。この一説を要約すると「これからのインターネットサービスはPC向けだけでなく、様々なデバイスに向けたサービス提供を前提とした設計をすべき」というもの。まだiPhoneやAndroidなどのスマホもない時代に、「これからのネットサービスはマルチデバイス設計をすべきだ」と言い切るなんて…。と同時に、自分自身がソニーからYahoo! JAPANに移った理由でもある、「これから世の中にはネットに繋がる様々なデバイスが、山ほど登場するであろう」というイメージが重なり、強烈にシンパシ-を感じました。それゆえ、当時Web1.0の代表のようなYahoo! JAPANのなかで、数少ないWeb2.0推進者になり、その理解を深く追求していきました。

13年間のインターネットの振り返り

Web 2.0は「これがWeb2.0だ!」という技術仕様があるわけではありません。しかし、2018年の今振り返ってみても現在のインターネットを予言して当たっていたことがたくさんあります。これから新たにサービスを始める場合も、バイブルのように読み返しても役に立つ内容が多く含まれています。
一方で世の中は寄なもので、誰もが予想もつかないような方向に進んでいった事もあり、Web2.0を次世代インターネットとして盲目的に信じてサービスを作ると、大きな勘違いをする可能性もあります。後編では、Web2.0が発表された2005年から現在2018年までの13年間のインターネット業界事象を振り返りながら、Web2.0の白書のなかに出てくる“ロングテール”、“永遠のベータ版”、“集合知”などが何を意味していたのかを、自分なりに紐解いてみたいと思います。

 

 

この記事の執筆者

坂東 浩之Hiroyuki Bando

経営サポート部

知的財産