近年、働き方改革の推進により、業務におけるスマートフォン、タブレットの利用が増えています。例えば、社用携帯電話をはじめ、特殊な環境下での入力用デバイスとしてや、デジタルサイネージとしての利用などです。
Android、携帯電話、Web関連開発の技術者である私のコラムでは、AndroidやiPhoneなどのモバイル端末をテーマとして扱っていく予定です。今回のテーマは、Androidに搭載されたビジネス関連の機能。皆さんがAndroidのビジネス活用を考える際の一助になれば幸いです。
Android 9 Pieについて
Android 9 Pieは2018年5月に初期ベータ版が公開され、同年8月に正式版がリリースされました。毎回話題になる愛称ですが、今回は「Pie」に決定しました。今までのものと比べるとシンプルな愛称に思えますが、エンタープライズ向けに重要な機能が盛り込まれています。
Androidには、Android enterpriseと呼ばれるエンタープライズ関連の機能があります。Android 9 Pieでは、BYOD端末として利用するための機能が強化されました。
ここからは、Android enterpriseについて、そして強化された機能についてご紹介します。
Android enterpriseとは
Android OSには、Androidデバイスをビジネス利用するための管理機能として、Android enterprise(旧称:Android for Work)と呼ばれる仕組みが搭載されています。この機能を使うためには、Android enterpriseに対応したMDM・EMM製品の使用が必須。これにより端末のOSレベルでの機能制限やアプリ管理などが行えるようになります。
この管理方法は、用途に合わせて以下の2種類から選択できます。
Work-managed device
企業専用端末として管理する仕組みを提供する機能で、会社支給のスマートフォンなどが対象になります。主な機能としては、リモートロックワイプ、USBデバッグ禁止、アプリのサイレントインストール、初期化禁止などです。企業によって完全に管理されている端末として利用する場合に最適です。
Work profile
BYOD端末を管理する仕組みを提供する機能で、個人端末の中に業務で使用するデータやアプリを設定し、企業が管理できる領域を限定する機能です。企業の管理者は、業務に関する設定やアプリのインストールをBYOD端末に対して一括して行うことが可能ですが、業務以外の設定(個人利用部分)は一切干渉できません。今回Android 9 Pieではこちらに関連した機能が追加されました。
Work Profileに関する追加機能
今回Android 9 Pieでは、Work Profileで設定されたアプリが、個人用と仕事用のタブに区別されて表示されるようになりました。両方に含まれるアプリは個人用、仕事用それぞれに表示されますが、データなどは互いに干渉できないようになっています。また、いつでも仕事用のプロファイルをオフにできるようにもなりました。オフの時には業務に関連したアプリは利用できず、通知も表示されなくなるため、公私をしっかりと切り分けて端末を使用できます。
特定の用途に使える機能
Androidを業務として利用する場合、スマホとしてだけでなく、特定用途での利用も考えられます。
Android 9 Pieでは、特定用途用に端末が専用化される機能(キオスクモード)も搭載されており、EMMと連携することで、ホームに表示するアプリを限定したり、特定のアプリしか起動できないように設定したりできます。この機能が有効に働くケースとしては、例えば決済を受け付ける専用の端末や、デジタルサイネージのように広告のみを表示させる端末として使用する場合です。また、バーコードリーダーのペリフェラルなどを活用することで、ハンディターミナルとして使うことも考えられます。
実行できるアプリを絞って専用化すると、下の図のような画面になります。このモードではホームボタンや履歴ボタンが非表示となるだけでなく、設定画面が起動できなくなり、使用者個人が設定を解除できないようになっています。
また、専用化した端末を複数人でシェアして使うための機能もあります。この機能は、ユーザーごとにセッションが完全に分離され、セッション終了時にはユーザーデータが消去される、というものです。シフト勤務などで担当者が交代しても同じデバイスを安全に使える、というメリットがあります。
ただし現状ではMDM・EMMとの連携が必須ということもあり、導入するためにはある程度のコストが必要になります。このあたりの解決策については、次回ご紹介しますね。
屋内位置測定機能
Android 9 Pieでは、WiFi Round-Trip-Time(RTT)と呼ばれるWiFiプロトコルのプラットフォームがサポートされており、屋内測位機能を持ったアプリを作成できます。施設内にRTTに対応した3つ以上のアクセスポイント(AP)を置くことで、1〜2メートルの精度でデバイスの位置を測定できるのです。活用例としてはデパートなどの施設での屋内ナビゲーションなどがあり、屋内のイベント会場案内や、レコメンドする商品へのユーザー誘導が可能になるでしょう。ただ、各種施設の状況やAndroid 9 Pieの普及度合いなどを考えると、実際に活用できるようになるのはもう少し未来のようです。将来的には当たり前に使われる機能となるかもしれませんね。
Androidをもっと業務で活用する
今回ご紹介したように、Androidはエンタープライズ利用向けに様々な機能を搭載しています。しかし、実際に導入するまでには管理機能の導入やセキュリティの考慮など、課題の整理と解決が必要です。
次回はこれらの解決方法を、当社の様々な業務アプリ開発、導入実績などのノウハウを踏まえてご紹介します。
富士ソフトのAndroidソリューションについて、詳しくはこちら
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